革は、靴やベルト・財布などの小物類以外にも、ジャケットなど衣類にも利用されています。
これらは当然のことながら動物の皮を剥いで作られるため、「革製品を利用するのは残酷だ」と一部の動物愛護団体から批判の対象となっています。
しかし近年では、革製品はエシカルでサスティナブルなアイテムであると見直され始めています。
なぜ、そのように革製品への評価が変わってきているのか、その理由を解説していきます。
革製品は動物虐待の産物ではない
我々人間はヴィーガンやベジタリアンでない限り、さまざまな動物の肉を食用として利用しています。
革製品に利用される革は、食肉用に利用された動物の皮を利用して作られています。
この皮は、本来であれば利用されずに捨てられていくものなのです。
多くの人間は、食肉からたんぱく質やその他の栄養を摂取し、健康を保っています。
食肉用に動物を殺すことすら不要な殺生であるとの考えを持つ方もいらっしゃいますが、それはごく少数の方の話で、動物を殺してその肉を食用として頂くということは、決して不要な殺生ではないと考える方が大多数を占めるでしょう。
そもそも、皮を取るためだけに動物を殺す行為は禁止されています。
本来ならば廃棄されてしまう皮を、革製品として利用することで頂いた命を最大限に活かすという行為は、エシカルの産物といえるのではないでしょうか。
革製品がサスティナブルであると言われる理由
革製品がエシカルかつサスティナブルなアイテムであると言われる理由には、前章で挙げた「革製品というファッションに利用するためだけに動物を殺しているわけではない」という理由以外にも、以下の3つがあります。
ここでは、その3つの理由について解説していきます。
カーボンニュートラルにつながる
通常の場合、食肉用の家畜は肉や時にはスープを取るために骨を利用しますが、皮を含めた他の部分は処分されてしまいます。
一頭の牛や豚を食肉として処理する場合には、体重の約8~9%の皮が廃棄されてしまうのです。
このように不要とされる部分は焼却により処理されますが、その際には二酸化炭素を排出してしまいます。
廃棄処分される「皮」を「革」して生活に必要な小物や衣服とすることで、二酸化炭素の排出量を減少させることができるのです。
皮革業界でサスティナブルへの取り組みが広がっている
皮革業界では、自然環境や働く人の労働環境への配慮を進めている団体や企業が増えてきています。
例を挙げると、公益財団法人日本環境協会は日本エコレザー基準(JES)を採用し、革手袋、革衣料、ベルトなどをエコマーク商品として認定しています。
また、皮革製造を行っている山口産業株式会社は、植物タンニンで皮をなめす独自の技術「ラセッテー製法」を開発しました。
従来は塩基性硫酸クロムという、人体や環境に有害な物質を排出する方法で皮をなめしていましたが、この方法で皮をなめすことにより、有害物質の排出リスクを最小限に抑えられるようになりました。
合皮より長持ちする
本革は動物の革から作られた天然素材であるため、繊維が密に詰まっています。
そのため、さまざまな外的刺激に対する耐久性が非常に高く、しっかりと手入れを行うことで長期間にわたり使い続けられます。
一方、本革の代替品として利用される合成皮革、いわゆる合皮は本革と比較すると強度や耐久性は劣ります。
また、合皮は長期間の使用により固くなり、表面にひびや剥がれなどが生じてしまいますが、本革はしっかりと手入れを行うと、使い続けるほどに柔軟性が増し革の表面も時間の経過とともに味わい深い色合いへと変化していきます。
物を長く大切に使うということは、サスティナビリティーの基本です。
そのため本革製品を使うと、物の生産や廃棄の際に発生する地球環境への負荷を軽減できるのです。
毛皮製品との違いは?
革製品を使用するという行為は、エシカルでサスティナブルであることは前述しました。
では、毛皮に関しても同様のことが言えるのでしょうか。
ここでは、毛皮がサスティナブルではないと言われる理由について解説していきます。
毛皮は、指し毛と綿毛の二重構造で暖かい空気の層を形成しているため、非常に防寒性に優れています。
また耐久性も高いため、人間の防寒着にも向いています。
しかし、多くの動物愛護団体が毛皮製品の使用に反対しています。
現在では、特にエシカルではないという理由から、グッチ、アレキサンダー・マックイーン、バレンシアガなどのブランドが、2022年秋までに動物の毛皮の使用を禁止しています。
なめす際に有害物質が利用される
毛皮をなめす際には、腐敗を防ぐために有害な化学物質や重金属が含まれた薬品が使用されます。
その化学薬品とは、界面活性剤、脂肪、溶媒、酸、殺菌剤、染料、漂白剤などです。これらが自然界に流出すると、環境に大きなダメージを与えてしまいます。
このような理由から、毛皮は「サスティナブルではない」製品であると位置づけられます。
毛皮と革を取る動物の飼育環境
毛皮を取るための動物のほぼすべてが、毛皮農場で飼育されています。
毛皮農場では、ミンクやキツネ、ウサギ、タヌキ、チンチラなどの動物たちが、狭く汚い檻の中に閉じ込められ、毛皮を取るためだけに残酷な方法で殺されています。
この時点で、毛皮製品は「エシカルではない」製品であるといえるでしょう。
採取工程
毛皮を採取する際には動物を殺す必要がありますが、その方法はガスにより窒息させる、感電させる、こん棒で繰り返し殴るといったものです。
このような方法で動物を殺すと、毛皮に傷をつけずに済むからです。
そうして殺された動物たちは、毛皮を剥がれた後はそのまま廃棄されてしまいます。
革製品の使用をやめても動物愛護にはつながらない
ここまで読んでいただいた方には、皮革製品と毛皮製品の製造過程が大きく異なるということがお判りいただけたと思います。
一方は命を余すところなく使い切る、もう一方は人間が装うためだけに命を奪われる。
この2つには、大きな違いがあります。
そのため、毛皮の使用を控えることは動物愛護のための一助になる可能性は非常に高いと思われますが、革製品の使用をやめても動物愛護につながらないばかりか、頂いた命のうちの一部を無駄にしてしまう結果となってしまうのです。
頂いた命を最後まで使い切るエコレザーでサスティナブルにおしゃれを楽しもう
革製品を使用することは、今やサスティナブルとエシカルを意識した、「SDGs的」ともいえるおしゃれのジャンルのひとつであるといえるでしょう。
環境を守り、無駄な廃棄物を出さず、長期にわたって使い続けられる革製品を愛用することは、SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」を、ファッショナブルに達成するための方法のひとつなのです。