プラスチックフリーの救世主!植物由来の新素材「プラックス」とは?

「プラスチックは環境に悪い」という話を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。けれども、非常に便利なプラスチックの使用は減っていないのが現状です。

実は、石油由来のプラスチックにかわるエコな素材が開発されて話題になっています。この記事では新素材のプラックスの魅力を深掘りしていきます。持続可能な社会の実現に欠かせないと期待される理由がわかるはずです。

プラックスとは?

「PlaX™️(プラックス™️)」は、最新テクノロジーを駆使して生まれたバイオプラスチック。サトウキビやトウモロコシなどの植物由来の原料とした「ポリ乳酸(PLA)に、植物由来の添加剤を加えています。

以下の点で環境負荷の削減に貢献しています。

  • 燃焼時に発生する二酸化炭素の排出量を大きく減らす
  • ポリエステルとの比較で製造時の二酸化炭素の排出を約35%削減
  • 綿との比較では製造時の水消費量を90%削減
  • コンポスト環境下の一定条件であれば、微生物によって水とCO2へと分解可能

100%植物由来のバイオプラスチックであることから、石油由来プラスチックの代替品として注目を集めています。耐久性や耐熱性も兼ね備えたエコな新素材といえるでしょう。

プラックスを生み出したのはスタートアップ「Bioworks」

日本のスタートアップである「Bioworks」がプラックスを開発しました。

素材の研究・開発を専門とするだけではなく、そこから得られた技術や知見を生かして、プランニング、プロデュースも手がけています。

ただのものづくりではなく、地球と人類がともに健やかに生きられる未来を生み出す商品を世に送り出している企業といえるでしょう。

プラックスが注目される背景にある環境問題

どうして、バイオプラスチックである「プラックス」が注目されるのでしょうか。その理由は持続可能な社会の実現のために、解決しなければならない環境問題があるからです。

海に残るプラスチックの問題

家庭から出されるゴミの中でも多くの割合を占めるのがプラスチックではないでしょうか。色んな形に変形でき、耐久性も優れたプラスチックは万能素材です。

一方でプラスチックは環境負荷が大きいことが懸念されています。とくに海の環境が汚染されているのです。

世界でみると、毎年800万トンのプラスチックが海へ捨てられていると推定されているのです。これまでに世界の海には「1億5,000万トン」のプラスチックが存在しているという一説もあるのです。

このペースで廃棄され続ければ、2050年には120億トン以上のプラスチックが埋立や海へ投棄され、魚よりもプラスチックが多くなると心配されています。プラスチックを分解するのにかかる年数は数百年以上であるため、捨てられたプラスチックのほとんどが自然界に残ったままなのです。

マイクロプラスチックの問題

とはいえ、プラスチックを海に捨てた経験はないと感じる方もいるかもしれません。実は、プラスチックが原料のスポンジを使ったり、ポリエステルの洋服を洗濯したりすると、マイクロプラスチックが流出してしまうのです。またごみとして一度流れ出たプラスチックは、海岸の波や紫外線など外部からの影響で小さな粒子になることもあります。

マイクロプラスチックとは、5mm以下になったプラスチックを意味します。

マイクロプラスチックの増加は海の汚染につながるだけではなく、ウミガメや海鳥が間違えて食べてしまう問題に大きく関係しているのです。

海の豊かさを守るためには、プラスチックの使用を減らすか、プラスチック以外の素材を使用するかが求められているといえるでしょう。

出典:環境省|プラスチックを取り巻く国内外の状況(PDF)

プラックスを使った事例

プラックスを原料としたアイテムは続々と開発、発売されています。それだけ多くの企業がプラックスの価値を高く評価し、Bioworksの理念に賛同しているといえるでしょう。プラックスを使った事例をくわしくまとめました。

①Bioworks

Bioworksはプラックスを原料とした自社商品を手がけています。

  • ハンドタオルやバスタオル
  • Tシャツ
  • ルームウェア

このような生活用品をオンラインショップにて発売しています。

Bioworks公式サイト

②ヤマップ

ヤマップはプラックスを使用した登山ウエア「プラックスウールロングスリーブT」を開発、発売しました。製品化までに10年以上の年月をかけていた渾身のアイテムです。

注目すべきポイントは防臭効果です。実際にヤマップのスタッフが120日間連続で洗濯せずに日常生活で着用。大量の発汗を伴う運動をして、なおかつ洗濯せずに繰り返し着用しても、不快感なく着用できたそうです。

山を愛する登山者が環境に配慮したウエアを着る導線を作ることに貢献しているといえるでしょう。

ヤマップ公式サイト

③シップス

サステナブルな取り組みを推進するシップスは、2023年の春夏コレクションにプラックスを使用した商品を加えました。店舗とオンラインショップで2023年 4月22日から発売を開始しました。

メンズアイテム

  • 3つボタンのヘンリーネックTシャツ:綿90% プラックス10%
  • ボーダーTシャツ(ホワイト×ネイビー):綿87% プラックス13%

レディースアイテム

  • リブカーディガン:綿90% プラックス10%
  • 長袖Tシャツ:綿90% プラックス10%
  • ボリュームスリーブのカットソー:綿70% プラックス30%

プラックスを使用した服はどれも洗練されたデザインです。「未来を少し変える服。」を掲げているため、今度はプラックス100%の洋服も生まれるかもしれません。

シップス公式サイト

④ゴールドウイン

ゴールドウインは、「THENORTHFACE(ザ・ノース・フェイス)」「HELLY HANSEN(ヘリーハンセン)」などのスポーツブランドを手がける企業です。

これまでにもバイオベンチャーへ出資。ます。革新的な技術を保有するスタートアップ企業とパートナーシップを結ぶことで、社会課題の解決に努めているのです。また2030年には環境に配慮した素材を使用した製品比率を90%以上に引き上げることも目指しています。

2023年にプラックスを使用した商品を発表予定なので、2023年下半期の動向に注目すべきではないでしょうか。

ゴールドウイン公式サイト

⑤MARLMARL(マールマール)

ベビーやキッズ向けのファッションブランド「MARLMARL」は2022年秋冬の新製品の素材にプラックスを採用しました。

  • スタイ:PlaXとオーガニックコットンを使用
  • おくるみ:表地はオーガニックコットン、裏地は植物由来のPlaXとオーガニックコットンを使用

どちらも抗菌作用があるエコフレンドリーなアイテムです。未来を担う子どもが使うアイテムだからこそ、環境に配慮した商品を選択するということは非常に価値あることではないでしょうか。

MARLMARL公式サイト

⑥サッポロ

サッポロはサッポロ生ビール黒ラベルのカップ素材としてプラックスを採用。2022年8月に開催された「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2022 in EZO」 で初めて限定導入しました。

プラックスを95%以上使用しながら、プラスチックと同等の透明度を実現させました。さらに回収した使用済みカップは廃棄するのでなく、リサイクル。生ゴミなどと一緒に生分解処理を行い、畑で有効利用される土壌改良材として堆肥化するという循環に成功しました。

「大地と、ともに、原点から、笑顔づくりを。」を掲げてサステナビリティに力を入れているサッポロは、プラックスの高い品質と環境性能を高く評価しています。アパレルアイテム以外にも活用できることを証明する事例といえるでしょう。

リリース情報

おわりに

今回は、石油由来プラスチックにかわるプラックスについて紹介しました。植物由来であるにもかかわらず、耐久性や防臭効果などに優れた新素材。これは環境にとっても使用者にとってもメリットが大きいといえるでしょう。

  • 燃焼時に発生する二酸化炭素の排出量を大きく減らす
  • ポリエステルとの比較で製造時の二酸化炭素の排出を約35%削減
  • 綿との比較では製造時の水消費量を90%削減
  • コンポスト環境下の一定条件であれば、微生物によって水とCO2へと分解可能

海がプラスチックまみれになってしまう未来を阻止する救世主としてプラックスは今後も注目されるのではないでしょうか。

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