SDGs(エスディージーズ)とは、Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)を略したもので、17の目標とそれに対する合計169のターゲットが定められていて、これらの達成目標を2030年としています。
なぜSDGsの達成期限は、2030年と定められたのでしょうか。
ここでは、その理由について解説していきます。
結論
SDGsは、その前身となるMDGsに変わる新たな目標として採択されたものです。
MDGsの達成期限は2015年までの15年間だったために、それに倣ってSDGsの達成期限は2030年とされました。
MDGsからSDGsに新たな目標が設定された際に変わったのは、達成期限だけではありません。
MDGsでは、先進国に対してのみルールが定められていたことや地域ごとに偏りがあったため、医療や教育分野の目標達成ができないままその期限を迎えてしまいました。
そのため、SDGsで定められた具体的間目標は発展途上国だけではなく先進国にとっても取り組みやすいものとなっています。
MDGsで定められていた目標は8個で、飢餓や貧困の減少、初等教育の普及など主に発展途上国の課題解決を目標としていました。
しかし、SDGsは先進国にとっても重要な目標が掲げられています。
その目標は、ジェンダー平等の実現や働きがいの充実や経済成長などです。
SDGsでは、このような達成目標が17個定められています。
SDGsの期限設定の経緯
SDGsの原点
SDGsの原点となる動きは、1960年代にはじまりました。
国連総会で、先進国と発展途上国の経済格差を指摘する「南北問題」にスポットが充てられたことです。
アメリカのケネディ大統領の提案を受け、国連は発展途上国の経済成長率を年率5%まで引き上げる「国連開発の10年」という目標を設定し、先進国が主導する経済活動を展開することになりました。
この活動によって発展途上国の経済成長率は上昇しましたが、人口増加により国民一人当たりの成長率は2.5%にとどまるという結果に終わりました。
また先進国の経済成長率3.8%も下回る結果となり、結果として南北問題の解決には至りませんでした。
第二次から第五次国連開発の10年
そのため「国連開発の10年」はそれ以降も継続されることとなり、「第二次国連開発の10年」から「第五次国連開発の10年」が実施されてきましたが、1990年代にはいるとその動きに陰りが見えるようになります。
1972年には世界各国の学者や経営者、教育者などの有識者によって結成されたローマクラブが、「成長の限界」という研究結果を発表しました。
「人口増加や環境汚染を問題として認識し、改善に向けた対処をしなければ、やがて食糧不足、天然資源の枯渇に陥り、100年以内に地球の成長は限界に達する」という内容です。
これと同時に将来起こりうるシナリオも提示され、危機を訴えました。
この報告をきっかけに、世界は人口問題や環境問題に目を向ける重要性を認識することになりました。
さらに1980年にIUCN(国際自然保護連合)が発表した「世界自然資源保全戦略の中で、初めて「持続可能性」という考え方が世界に示されました。
この持続可能性という言葉は、1987年に「環境と開発に関する世界委員会」が公表した「Our Common Future」という報告書でも、核をなす概念として取り上げられています。
1989年には世界を二分した冷戦が終結し、世界は平和へ向けて歩み始めました。
各国を自由に行き来できるようになりましたが、それまで閉鎖的な社会を築いていた東欧に深刻な環境問題が発生していることが発覚します。
さらにその社会主義国家が多かった東欧に、経済活動を優先する資本主義経済が入り込むと、物資がなかった国にものがあふれ、新たなごみ問題を産むなどして環境問題は悪化の一途をたどることになります。
この件に関してアメリカのショージ・ブッシュ大統領は、「東欧の環境汚染は国際社会全体で救済すべきである」と提言しました。
このようにして環境問題に世界の目が集まることになりますが、具体的な対策を立てるまでには至りませんでした。
1990年代に入ると、環境問題への取り組み方についての模索が始まりました。
地球サミット・京都議定書
1992年にブラジルのリオデジャネイロで開催された「地球サミット」が、そのひとつです。
地球サミットでは、地球環境の保全と持続可能な開発を実現する具体策を得ることを目指し、議論が繰り広げられました。
そこで合意を得たのが、「環境と開発に関するリオ宣言」「森林に関する原則声明」「アジェンダ21」です。
アジェンダ21では、世界各国が取り組むべき課題を一覧にして行動原則が定められています。
1997年には京都においてCOP3(地球温暖化防止京都会議)が開催され、問題となっていた地球温暖化への対策について話し合われました。
この会議で採択された文書が、「京都議定書」です。
MDGsからSDGsへ
2000年に入ると、「持続可能性」への取り組みはさらに拡大し、国連ミレニアム・サミットが開催されます。
このサミットでは「平和と安全」「環境保全」「人権」などの課題が提示され、解決に向けての目標や加盟各国の役割を明文化した「国連ミレニアム宣言」を採択しました。
ここに盛り込まれていたのが、SDGsの前身となるMDGsです。
このような経緯を経て、2015年国連サミットが開催され、SDGsが全会一致で議決されました。
MDGsの目標達成期限が2015年からの15年と定められたため、SDGsの達成期限もそれに倣って15年とされました。
SDGs明文化されたのが、「誰ひとり取り残さない」17のゴールと169のターゲットです。
達成できなかった場合どうなる?
以前は先進国が発展途上国を支援するという見方がありましたが、現在は先進国も発展途上国もパートナーシップを大切にし、誰ひとり取り残さない未来を描くことが重要になります。
SDGsの目標達成に対しても、このような姿勢は非常に大切です。
このようにしてSDGsの実現に取り組んだとしても、この地球で起っているさまざまな課題を達成できなかった場合には、以下のような問題が残る厳しい未来が待っているとされています。
- 地球温暖化の進行
- エネルギー問題の深刻化
- 自然災害の増加
- 水問題の深刻化
- 生物多様性の喪失
- 気候変動の激化
2. 社会問題
- 貧困
- 感染症の流行
- 教育機会の不平等
- 人口爆発
- さまざまな差別やハラスメント
- 紛争の長期化または激化
- 少子高齢化
3. 経済問題
- 経済危機の頻発
- 若年失業率の高さ
- 雇用なき都市の進行
- 社会福祉資源の不足
- 経済格差の拡大
現状と今後の見通し
SDGsの現状に関しては、2022年のSDGs達成状況を示した「持続可能な開発報告書-持続可能な開発報告書 (sdgindex.org)」を見ることで知ることができます。
この報告書によると、最も目標を達成している国はフィンランドで、上位のほとんどの国をヨーロッパの各国が占めています。
17のゴールのうち「貧困をなくそう」「産業と技術革新の基盤を作ろう」の二つに関しては、大きく前進していますが、「飢餓をゼロに」「陸の豊かさも守ろう」などのゴールについては取り組みが停滞していたり後退したりしているものもあります。
2020年までは動きの停滞や後退がほぼ見られなかったというレポートから見ると、2022年現在では取り組みが上手く前進しているとは言えない状況です。
このような現状を踏まえて今後SDGsの目標達成率を向上させるためには、新型コロナウイルスだけではなく、感染症対策を強化することが必要不可欠であると言えます。
さらに社会的テーマに関して、個人がどのように取り組んでいくのかという課題もあります。
今後SDGsの目標達成に向けての取り組みを進めていくためには、ひとりひとりがSDGsへの理解を深めることが必須となるでしょう。
2030年以降も取り組みは必要
SDGsの目標期限である2030年は、MDGsの目標期限である15年に倣ったものです。
2022年の段階では、まだSDGsの後継となるものは決まっていませんが、2030年以降も持続可能な社会を作るための取り組みを続ける必要はあります。
2030年はまた新たな節目となって、社会状況を踏まえた新たなアジェンダが検討されるでしょう。