吸水ポリマーは、紙おむつやナプキン、ペットシート、保冷用ゲル剤などに利用されていますが、自然分解が可能な高吸水ポリマーは特に農業の分野で利用されています。
その利用法は、土壌保水材、育苗用シート、土壌改質などです。
このようにさまざまな用途で利用される高吸水性ポリマーですが、その原料として石油由来のアクリル酸などが使用されています。
このような原料から作られた高吸水ポリマーは自然界で分解されないため、焼却処理が必要となり、地球環境に負荷をかけてしまいます。
しかし、近年になってフルーツの皮などの本来廃棄されるものを利用したEFポリマーが開発されました。
このEFポリマーは、自然に分解されるため環境にかける負荷が小さいため、現在注目を集めています。
ここでは、100%オーガニックのEFポリマーについて解説していきます。
EFポリマーが開発された背景
現在、世界中で干ばつの影響を受けている人口は地球全体の45%に上り、その状況は年々悪化しています。
また、人類が利用可能な淡水のうち、農業に利用されている量は70%を占めていると言われ、多くの農家が水不足という問題に直面しています。
日本は水資源が豊富な国と言われていますが、近年の気候変動の影響により、干ばつや不安定な降雨の影響を受ける地域も増えてきているため、水資源の効率的な利用方法の開発が急務とされています。
EFポリマーは、世界中の干ばつによる水不足や、肥料価格の高騰といった農家への課題を解消するために力を発揮する製品です。
現在でも農業用の吸水ポリマーは使用されていますが、それらのほとんどは石油由来の製品であるため、製造や廃棄の過程で多くのエネルギーを必要とし、地球温暖化ガスを排出するという問題を抱えています。
これまで廃棄されていたフルーツの皮などをアップサイクルしたEFポリマーは、製造及び廃棄の際に多くのエネルギーを消費することはありません。
EFポリマーは、循環型のエコシステムを通して農業のあり方を一新し、水問題を中心とした世界の環境問題の解決を目指しています。
EFポリマーが持つ4つの特徴
EFポリマーは、従来使用されてきた高吸水ポリマーと異なる4つの特徴を持っています。
その4つの特徴とは、以下のようなものです。
100%生分解性
EFポリマーの原料には、柑橘類やバナナなどのフルーツの皮などが使用されています。
そのため、自然界ですべてが分解される「完全生分解性」ポリマーであるという特徴を持っています。
EFポリマーはポリマーとしての効果を約半年間持続した後、その後一年かけてゆっくりと土に還ります。
そのため一般的な石油由来のポリマーと異なり、焼却処分の必要がありません。
有機物ならではの土への働き
EFポリマーは、土壌中で分解されていく過程で微生物を活性化し、健康で健全な土づくりのサポートを行います。
また、EFポリマーが水分の吸収と放出を繰り返す過程で土壌に気相を作り出すため、土壌の団粒構造化を促進するという効果も期待できます。
農業に適した吸水と放出機能
EFポリマーが吸収した自重の約50倍にも上る水分は、ゆっくりと作物の根に水分を放出します。
また、土壌から水や栄養素が流れ出るのを防ぎ、作物の成長をサポートします。
資源を効率的に利用し収量をアップできる
ESポリマーを利用した土壌では、少ない頻度の潅水や施肥で農作物を育てられるので、栽培コストの大幅な削減が期待できます。
また、土壌の保水力と保肥力も向上するため、作物の成長が促進され収穫量のアップにつながります。
EFポリマーの利用拡大のための課題とは
現在、EFポリマーさまざまな地域で利用されていますが、気候や農地の土壌の特徴などは地域によって異なります。
そのため、EFポリマーを導入後良い成果を上げた地域と同じような使い方を他の地域で行っても、同様の成果が挙げあげられるとは限りません。
そのため、異なる地域に導入する場合には、その地域に合った利用方法をイチから模索する必要があります。
また、認知度の向上と商品への信頼獲得も、EFポリマー普及のための大きな課題となります。
EFポリマーを利用してもらうためには、新しい技術に対して保守的な考え方を持っている地域であっても、EFポリマーのことを良く知ってもらうために、その地域に詳しく信頼を寄せられている「キーパーソン」と手を組む必要があります。
EFポリマーは、農業の効率化と自然環境の保護を同時に達成できる優れた製品ですが、そのためには、EFポリマーを利用するメリットを多くの人に知ってもらう必要があります。
EFポリマーの農業以外の利用例
EFポリマーは、農業以外にも以下のような用途で使用されています。
保冷剤
従来の保冷材は、石油由来のポリマーを使用していたため、製造時と廃棄時に多くのエネルギーを必要としていました。
しかし、EFポリマーを利用することで、保冷剤として利用した後に観葉植物の土などにまいて土の保水性を向上させられるため、資源循環型の新しい形の保冷剤として注目されています。
増粘剤
増粘剤は、化粧品や日用品の幅広い分野で使用される素材で、いままでは石油由来の吸水性ポリマーを使用した製品が長く使用されてきました。
石油由来の吸水ポリマーが増粘剤の原料として利用されてきた理由は、低価格で製造時に扱いやすいためです。
しかし、肌が敏感な人には刺激を与えてしまったり、非分解性の原料であったりすることから、マイクロプラスチックとして流出し、海洋汚染の原因のひとつとなっていました。
EFポリマーを利用し開発された増粘剤は、完全有機・完全生分解性を有しているため、従来の増粘剤と同様に利用できるほか、人の肌や環境にやさしい新素材として注目を集めています。
EFポリマーが世界にもたらす変革
EFポリマーは、土壌や水質を汚染することなく農作物の育成効率と生産量を高めるという、非常に画期的な効果をもたらす製品であることがおわかりいただけたと思います。
石油由来の吸水ポリマーとEFポリマーを比較した場合、EFポリマーは製造と処分にかかるエネルギーコストも非常に低いため、地球温暖化ガスの排出量を非常に低く抑えられるというメリットもあります。
このように、食料の生産効率を上げ、環境負荷を低く抑えるEFポリマーが今後普及していくことで、将来危惧されている食糧不足という問題を解決できる可能性が高まるでしょう。
EFポリマーは、まさに人にも地球にも大きなメリットをもたらす画期的な製品であると言えます。
ただし、普及にはさまざまな課題が残っているため、今後はその課題をどのように解決していくかに注目が必要です。