近頃、SDGsという言葉を耳にする機会が増えています。
この言葉を聞いたことがあるだけではなく、実際にその言葉の意味を知り、さらに生活や事業を営むうえで実行に移している個人や企業も少なくありません。
このSDGsは日本語に言い換えると「持続可能な開発目標」となりますが、この目標に関連して「SDGs未来都市」という制度が制定されています。
このSDGs未来都市とはどのようなもので、実際にはどのような自治体が選定されているのでしょうか。
ここでは、SDGs未来都市について解説していきます。
SDGs未来都市とは?
SDGs未来都市とは、SDGsの理念に沿った方法を積極的に導入した街づくりを推進している都市を、国が選定したものを言います。
この制度は2018年から始動したもので、持続可能な街づくりを目指す地方自治体の働きを促進させることを目標としています。
また、このような街づくりの成功例を各地方自治体で共有することで、他の自治体の街づくりに役立てることも可能になります。
この制度を活用することで、SDGsの目標達成だけではなく、それぞれの自治体が抱える課題の解消にもつながるため、全国的なSDGsへの取り組みの底上げも期待することができます。
SDGs未来都市に認定されるメリットと取り組む課題
SDGs未来都市に認定されるメリットについては、以下の章で詳しく解説していきますが、大まかにいうと自治体が事業計画案を作成する際に各省庁のアドバイスを受けることができる、ステークスホルダーとの提携によって新たなビジネスチャンスを創出することができるというものがあります。
現在、多くの自治体で人口減少が大きな課題となっています。
しかしSDGs未来都市に認定されると、上記の二つのメリットにより自治体ごとに異なる課題の解決や、新たな雇用の創出による地域の活性化などが期待できると考えられています。
SDGs未来都市に認定されるメリット
SDGs未来都市に認定されるメリットには、2つのものがあります。
一つは政府のフォローアップを受けて、スムーズに計画を進めることができるということ、もう一つはステークホルダーとの連携が期待できることです。
政府のフォローアップ体制の強化の具体的な内容としては、SDGsに沿った3年間の事業計画を策定し取り組みを進めていくのですが、その際に各省庁の支援施策活用に関するアドバイスを受けることができるというものです。
アドバイスの内容は知識に富んだ有識者からの的確な助言やリソースの活用で、このようなフォローアップを受けることによりそれぞれの取り組みをよりスムーズに実施することができるようになります。
もう一つのステークスホルダーと連携することのメリットには、新たなビジネスチャンスの創出というものがあります。
SDGs未来都市に選ばれるとその自治体がメディアなどに露出する機会が増え、成功事例が国内外に発信される機会が増加します。
このようにして自治体に注目が集まることで、新たなビジネスチャンスの創出の機会が見込めるのです。
これが、ステークスホルダーとの連携につながります。
このようにして関心が高まり注目を浴びるようになることで、企業は団体、教育機関などさまざまなステークスホルダーとの連携が可能になります。
SDGs未来都市で解消される課題とは
SDGs未来都市においては官民連携、産官学、そして住民全体による街づくりが求められます。
その結果、行政上の課題となっている「縦割り」が最適化されるようになるでしょう。
また縦割り行政の最適化に加えて、社会・経済・環境が両立する取り組みと多様なステークスホルダーとの連携が行われ、これらが相互に影響し合い好循環を生み出すことで、最終的には自治体が補助金を頼ることなく自立した行政を行うことができるようになることが、SDGs未来都市により解消される課題であるとされています。
認定されたSDGs未来都市一覧
認定されたSDGs未来都市は、以下の表のとおりです。
2018年選定(全29都市)
北海道 | 北海道 |
札幌市 | |
ニセコ町 | |
下川町 | |
宮城県 | 東松島市 |
秋田県 | 仙北市 |
山形県 | 飯豊町 |
茨城県 | つくば市 |
神奈川県 | 神奈川県 |
横浜市 | |
鎌倉市 | |
富山県 | 富山市 |
石川県 | 珠洲市 |
白山市 | |
長野県 | 長野県 |
静岡県 | 静岡市 |
浜松市 | |
愛知県 | 豊田市 |
三重県 | 志摩市 |
大阪府 | 堺市 |
奈良県 | 十津川村 |
岡山県 | 岡山市 |
真庭市 | |
広島県 | 広島県 |
山口県 | 宇部市 |
徳島県 | 上勝町 |
福岡県 | 北九州市 |
長崎県 | 壱岐市 |
熊本県 | 小国町 |
2019年選定(全31都市)
岩手県 | 陸前高田市 |
福島県 | 郡山市 |
栃木県 | 宇都宮市 |
群馬県 | みなかみ町 |
埼玉県 | さいたま市 |
東京都 | 日野市 |
神奈川県 | 川崎市 |
小田原市 | |
新潟県 | 見附市 |
富山県 | 富山県 |
南砺市 | |
石川県 | 小松市 |
福井県 | 鯖江市 |
愛知県 | 愛知県 |
名古屋市 | |
豊橋市 | |
滋賀県 | 滋賀県 |
京都府 | 舞鶴市 |
奈良県 | 生駒市 |
三郷町 | |
広陵町 | |
和歌山県 | 和歌山市 |
鳥取県 | 智頭町 |
日南町 | |
岡山県 | 西粟倉村 |
福岡県 | 大牟田市 |
福津市 | |
熊本県 | 熊本市 |
鹿児島県 | 大崎町 |
徳之島町 | |
沖縄県 | 恩納村 |
2020年選定(全33都市)
岩手県 | 岩手町 |
宮城県 | 仙台市 |
石巻市 | |
山形県 | 鶴岡市 |
埼玉県 | 春日部市 |
東京都 | 豊島区 |
神奈川県 | 相模原市 |
石川県 | 金沢市 |
加賀市 | |
能美市 | |
長野県 | 大町市 |
岐阜県 | 岐阜県 |
静岡県 | 富士市 |
掛川市 | |
愛知県 | 岡崎市 |
三重県 | 三重県 |
いなべ市 | |
滋賀県 | 湖南市 |
京都府 | 亀岡市 |
大阪府 | 大阪市 |
豊田市 | |
富田林市 | |
兵庫県 | 明石市 |
岡山県 | 倉敷市 |
広島県 | 東広島市 |
香川県 | 三豊市 |
愛媛県 | 松山市 |
高知県 | 土佐町 |
福岡県 | 宗像市 |
長崎県 | 対馬市 |
熊本県 | 水俣市 |
鹿児島県 | 鹿児島市 |
沖縄県 | 石垣市 |
2021年選定(全31都市)
北海道 | 上士幌町 |
岩手県 | 一関市 |
山形県 | 米沢市 |
福島県 | 福島市 |
茨城県 | 境町 |
群馬県 | 群馬県 |
埼玉県 | 埼玉県 |
千葉県 | 市原市 |
東京都 | 墨田区 |
江戸川区 | |
神奈川県 | 松田町 |
新潟県 | 妙高市 |
福井県 | 福井県 |
長野県 | 長野市 |
伊那市 | |
岐阜県 | 岐阜市 |
高山市 | |
美濃加茂市 | |
静岡県 | 富士宮市 |
愛知県 | 小牧市 |
知立市 | |
京都府 | 京都市 |
京丹後市 | |
大阪府 | 能勢町 |
兵庫県 | 姫路市 |
西脇市 | |
鳥取県 | 鳥取市 |
愛媛県 | 西条市 |
熊本県 | 菊池市 |
山都町 | |
沖縄県 | 沖縄県 |
2022年選定(全30都市)
宮城県 | 大崎市 |
秋田県 | 大仙市 |
山形県 | 長井市 |
埼玉県 | 戸田市 |
入間市 | |
千葉県 | 松戸市 |
東京都 | 板橋区 |
足立区 | |
新潟県 | 新潟県 |
新潟市 | |
佐渡市 | |
石川県 | 輪島市 |
長野県 | 上田市 |
根羽村 | |
岐阜県 | 恵那市 |
静岡県 | 御殿場市 |
愛知県 | 安城市 |
大阪府 | 阪南市 |
兵庫県 | 加西市 |
多可町 | |
和歌山県 | 田辺市 |
鳥取県 | 鳥取県 |
徳島県 | 徳島市 |
美波町 | |
愛媛県 | 新居浜市 |
福岡県 | 直方市 |
熊本県 | 八代市 |
上天草市 | |
南阿蘇村 | |
鹿児島県 | 薩摩川内市 |
2023年選定(全28都市)
青森県 | 弘前市 |
群馬県 | 桐生市 |
埼玉県 | 鴻巣市 |
深谷市 | |
千葉県 | 木更津市 |
東京都 | 大田区 |
東村山市 | |
富山県 | 氷見市 |
石川県 | 七尾市 |
野々市市 | |
福井県 | 大野市 |
山梨県 | 山梨県 |
長野県 | 松本市 |
京都府 | 宮津市 |
兵庫県 | 兵庫県 |
加古川市 | |
三木市 | |
三田市 | |
鳥取県 | 八頭町 |
島根県 | 松江市 |
岡山県 | 備前市 |
広島県 | 福山市 |
愛媛県 | 四国中央市 |
福岡県 | 糸島市 |
佐賀県 | 鹿島市 |
宮崎県 | 延岡市 |
鹿児島県 | 出水市 |
奄美市 |
※黄色背景色は「自治体SDGsモデル事業」選定自治体
※都道府県名はSDGs未来都市のうち都道府県
SDGs未来都市に認定された都市とその提案例
2022年度現在、SDGs未来都市に選定された都市の数は、154都市となっています。
ここでは、その中から3つの都市を紹介していきます。
愛知県豊田市 みんながつながる ミライにつながる スマートシティ
豊田市は、令和五年一月二日発行の日経グローカル誌において、全国市区第三回SDGs先進度調査において全国第二位になった都市です。
豊田市が目指す都市の将来像は、市民が社会とのつながりの中で安心して自分らしく暮らし、魅力あふれる多様で豊かな個性を持つ地域づくりを行い、未来を先取る活力を持つ都市にするというものです。
このような未来を実現するために、各施策にSDGsの視点を取り入れながら、「つながり」を持ってスパイラルアップが持続し続けるまちを目指しています。
新潟県妙高市 生命地域妙高プロジェクト~Beyond 2030 SDGs ゼロカーボンへの挑戦~
妙高市は、国立公園などの豊かな自然環境と、豊富な雪や米、酒、山菜といった食べ物など、誇ることができる観光資源を有しています。
これらの観光資源を唯一無二の歓呼素材としてさらにブラッシュアップを行い、魅力的な滞在型コンテンツなどを造成するとともに、ワーケーションによる首都圏からの新たな顧客の開拓を進め、観光売り上げの増加を目指しています。
また、ワーケーション等を通じて首都圏企業のハイスキルな人材や副業を希望する人材と、経営発展を目指す地元企業ともマッチングを進めることにより、地域産業における人材不足の解消や経営課題の解決を目指す取り組みを行っています。
宮城県大崎市 「宝の都(くに)・大崎」の実現に向けた持続可能な田園都市の創生
大崎市の人口は、国内の地方都市と同じく減少傾向にあります。
特に令和二年から令和二十七年にかけての生産年齢人口は、5.3%減少すると予測されているため、この流れを抑制するために教育と医療の充実や、雇用の場の確保、移住・定住支援など暮らしの環境整備を行っています。
しかし、これを実現するためにはそこに住む市民が認識を共有できる県境づくりが重要になります。
大崎らしい田園都市の実現のために、食と農を支える地域づくり、世界農業遺産の資源と価値の継承、仙台圏及び首都圏等からの人の流れを作る、安定した雇用の創出が不可欠です。
大崎市には人、物、社会基盤、自然環境、歴史、文化など先人の優れた知恵と絶え間ない努力に構築された「宝」があります。
この多様な宝を活かすことで、住み続けたい・いつかは戻りたい・行ってみたい、住んでみたいと思える持続可能な街づくりを目指しています。
まとめ
ここまで、SDGs未来都市とはどのようなものかということに始まり、SDGs未来都市に認定されるメリットやその課題、そしてSDGs未来都市の具体例について解説していきました。
SDGs未来都市未来都市には、経済・社会・環境の三つのテーマに取り組むうえでこれまでとは異なるSDGsを意識した新しい価値を創造し、その自治体が抱える課題を解決することが求められます。
単に自治体が抱える問題を解消するだけではなく、持続可能な社会を実現する地域づくりを目指した「環境未来都市」構想にSDGsの手法を取り入れてさらに発展させたものが現在のSDGs未来都市です。
具体例に挙げた自治体では、カーボンニュートラル、働きがいも経済成長も、エネルギーをみんなに クリーンにといったSDGsの目標達成とともに地域の活性化のための取り組みが行われています。