「ラベルレス」「エコボトル」「リサイクルボトル」など、環境に配慮したペットボトルが増えています。
実は、日本はペットボトルの回収率とリサイクル率が非常に高い国なのです。では、実際にどのような取り組みが行われているのでしょうか。
この記事ではペットボトルのリサイクルについて解説するとともに、飲料メーカーが取り組む企業事例を紹介します。
ペットボトルのリサイクル率は86%
PETボトルリサイクル推進協議会の「PETボトルリサイクル年次報告書2022」によると、
2021年の国内におけるペットボトルのリサイクル率は86%でした。
販売量は581千トン。そのうちのリサイクル量は以下の通りです。
- 国内再資源化量377千トン
- 海外再資源化量122千トン
- 合計で500千トン
2019年から3年連続で85%以上をキープしています。これらの数値をみると、日本のリサイクル率は他の国と比べると高水準といえるでしょう。
引用:https://www.petbottle-rec.gr.jp/nenji/new.pdf?221122(p.5)
ペットボトルをリサイクルしたものはさまざまなものに活用されています。
リサイクルのパターンは大きく分けて二つ。ペットボトルからペットボトルを作る「水平リサイクル」と、細かく砕いた再生フレークを原料にしてペットボトルとは異なる製品をつくる「カスケードリサイクル」があります。
カスケードリサイクルで作られる製品の例は以下の通りです。
- 食品用トレイ
- 卵パック
- 下敷き
- 食品用や日用品パウチ
- ラミネート包材
- 台所用洗剤のボトル
- 定規
- リサイクルボックス
- アウター
- 白衣
- バッグ
- ネクタイ
- 肌着
このようにペットボトルをリサイクルすることで資源としても役立てられているのです。
ペットボトルをリサイクルする3大メリット
では、ペットボトルを資源として活用するするよさをくわしくみていきましょう。
①資源の節約
先ほどお伝えしたように、ペットボトルはプラスチック製品を作る原料として使用できます。プラスチックの原料となる石油を有効活用したり、使用量を減らしたりすることにつながるのです。
②海洋環境の保護
廃棄物を減らすことは、海の豊かさを守ることにもつながります。
世界でみると、海へ流れ出るプラスチックは年間800万トンといわれています。漂流したプラスチックは環境を汚染するだけではありません。海洋生物を傷つけたり、誤って食べてしまったりして命を落とす恐れもあるのです。
ペットボトルをリサイクルして廃棄量を減らすことは、海洋環境を守ることに貢献するといえるでしょう。
③気候変動への対策
ペットボトルのリサイクルは二酸化炭素の排出量を減らす効果も期待できます。リサイクルによって環境負荷が45%減できるともいわれているのです。
PETボトルリサイクル推進協議会の「PETボトルリサイクル年次報告書2022」には以下のように記載されています。
「日本で利用されている指定PETボトルの、資源採掘からボトル生産・利用・排出回収・リサイクル・再利用(利用不可物の廃棄処理を含む)までのCO2総排出量は1,768千トンとなりました。これは、リサイクル・再利用が無い場合の3,198千トンと比較し、約45%少ない結果でした」
このようにリサイクルや再利用は、気候変動対策の一つとなっているのです。
ラベルレスの需要が高まっている
飲料メーカーの企業努力の結果、環境負荷を減らしたエコなペットボトルが市場拡大しています。最近は、ラベルレスの需要が高まっているようです。
その理由の一つが、分別しやすいことです。リサイクルするにはラベルとキャップを外さなければいけません。ラベルレスの場合は、手間なくリサイクルできるのです。
次は、買うだけで環境保護に貢献できることです。近年、日本でも環境意識が高まっています。「少しでもエコなものを買いたい」というニーズに応えているのです。
また透明なボトルは見た目もスッキリしているため「見た目がおしゃれ」という声も上がっています。透明なのでカバンに入れてもごちゃごちゃしないことや写真に映り込んでも映えを阻害しないことも理由として考えられるのではないでしょうか。
続いては、企業が取り組むペットボトルのリサイクルや軽量化についてお伝えします。
ペットボトルリサイクルなどの企業取り組み事例
企業事例①:コカ・コーラ
コカ・コーラは、廃棄物ゼロの無駄のない世界の実現を目指しています。
最新の技術を活用して、100%リサイクル素材のペットボトルの実現に成功しました。これは一本あたりの温室効果ガスを約60%削減。コカ・コーラ全体で考えると、年間約35,000トンの二酸化炭素排出量を削減、プラスチックを約30,000トン削減できる見込みだそうです。
またラベルレス製品もAmazonや楽天市場で販売しています。通常品と中身は同じなのに、リサイクルが楽になるのは消費者にとってのメリットも大きいといえるでしょう。
参照:https://www.cocacola.jp/sustainability/
企業事例②:アサヒ飲料
アサヒ飲料は持続可能な容器包装を導入しています。
2030年までに100%にすることを目標に設定。2021年の達成率は11%であることを報告しています。このような目標と達成度を明確に知らせることも、つくる責任を果たすことになるといえるでしょう。
また2018年からケース販売専用の「アサヒおいしい水」のラベルレスの販売を開始。2019年は「アサヒ十六茶」など3商品も追加しました。2023年現在では7種類を展開しているそうです。
さらに2021年にはリサイクルマークをボトルに刻印するという改良を重ねた結果、単品のラベルレスボトルの販売も開始しています。
参照:https://www.asahiinryo.co.jp/csv/eco/pet/#
企業事例③:キリン
キリンはペットボトル原料の軽量化に努めています。
2003年までは63gだった2リットルのボトルが2019年には28.3gまでになりました。改良を重ねながら半分以上の軽量化に成功したことはサステナビリティとして高く評価すべきではないでしょうか。
また「三菱ケミカル株式会社」とパートナーシップを結び、ケミカルリサイクルによるPETボトルの再資源化の共同プロジェクトを開始しました。
ケミカルリサイクルは、分子レベルまで分解する方法です。何度でも新品の素材と同じレベルまで再生できます。
最新のテクノロジーを駆使した取り組みは、循環型社会の実現に大きく貢献しているといえるでしょう。
参照:https://www.kirinholdings.com/jp/impact/env/3_3a/
企業事例④:サントリー
サントリーは環境負荷を削減した容器包装を設計するために、オリジナルのガイドラインを1997年に設定しました。
- ペットボトルの軽量化
- ペットボトルからペットボトルをつくる
- 石油を使用しない資源を目指し、植物由来の原料を積極的に活用する
以上の3つの柱が軸となっています。
企業努力の結果、以下のことに成功しました。
- 世界初のバイオ100%キャップ
- 国産最軽量のキャップ
- 国産最軽量のボトル
- 国内最薄ラベル
リサイクルだけではなく、植物由来の原料にもこだわっている点が大きな特徴といえるでしょう。2023年現在も最新技術を駆使して、エコで使いやすくつぶしやすいパッケージの追求を続けています。
参照:https://www.suntory.co.jp/eco/teigen/package/
企業事例⑤:伊藤園
伊藤園の野菜飲料大型ペットボトルには、環境に配慮したエコボトルを使用しています。
一つはリサイクルしたペットボトル原料を使用して作ったもの。二つ目は植物由来の原料を25%以上使用したものです。
天然資源である石油を有効活用したり、使用量を減らしたりすることで、持続可能な環境の実現を目指しています。
参照:https://www.itoen.jp/yasai/ecopet/
おわりに
日本はコンビニや自動販売機が多くあるため、ペットボトルを簡単に購入できる環境であるといえます。便利である一方で、環境負荷を大きくしているとも考えられます。
消費者は生活に欠かせないペットボトルだからこそ、少しでも環境にやさしいものを選ぶことが大切です。
- 環境に配慮したペットボトルを選ぶ
- ペットボトルをリサイクルする
- リサイクルするときはラベルとキャップを分別する
など、できることを一つずつやることが、未来を変える力になるのではないでしょうか。