歯磨き粉も脱プラ時代!欧米で人気のタブレット歯磨きの真価

できるだけゴミの量を減らし、廃棄物ゼロを目指す活動「ゼロウェイスト」。欧米諸国の美容業界やパーソナルケア業界では、環境負荷の高いプラスチック容器を使わないプロダクトが続々登場している。

ここでは「SDGs目標12:つくる責任 つかう責任」について、毎日の生活に欠かせない衛生用品のひとつである歯磨き粉にフォーカスしながら、海外のサスティナブルなオーラルケア事情を紹介する。

チューブ歯磨き粉のごみは年間10億本以上

アメリカの大手オーラルケアブランドTom’s of Maineによると、米国だけでも年間10億本以上のプラスチック容器歯磨き粉が捨てられている。じつに、地球を6周以上できる膨大な量が埋立地へ運ばれるか、海にそのまま廃棄されているひっ迫した状況だ。

安価で軽量、汎用性の高いプラスチックは、現代社会を支える主要なマテリアルである。その生産量は、今後20年間で2倍になるとも予想される。しかし、使用済みのプラスチックが回収される割合は全体のわずか14%であり、大量のプラスチックが地球を埋め尽くしている。

プラスチックごみによって、年間800から1,200億ドルの損失が生じる上、2050年までに地球上の海には魚よりも多いプラスチックが存在する危機的状況が差し迫る。

プラスチックチューブ式の歯磨き粉が抱える3つの問題

現代人の生活に欠かせないプラスチック製歯磨き粉は、複合的な問題を抱えている。大きく3つに分類できるだろう。

①多重構造のためリサイクル不可能

「プラスチック製品は分別して、プラごみとして回収すれば良い」といった認識があるかもしれない。

しかし、一般的なチューブ式の歯磨き粉は、プラスチックとアルミニウムといった原材料を組み合わせて生産されている。リサイクルはほぼ不可能であり、9割近くが埋立地や海洋へ廃棄されるケースが多い。そのまま放置されると数百年にも渡って分解されず、地球に蓄積されて環境汚染が深刻化する。

②人体に有害な成分を含む場合がある

従来の歯磨き粉はパッケージだけでなく、配合される成分の安全性も論点となっている。歯磨き粉を選ぶとき、成分表を確認する方も多いだろう。しかし、海外では人体に有害であると使用禁止になった、安全性に賛否のある成分を配合している製品が少なからず存在する。

例えば、歯磨き粉の泡立ちを良くする発泡剤として、ラウリル硫酸ナトリウムやラウレス硫酸ナトリウムといった合成界面活性剤が配合される。

これらの成分は洗浄効果や皮膚刺激性が高く、アレルギーや白内障、毛髪の発育障害の原因となる可能性がある。若い世代の味覚障害が増えた要因として、ラウリル硫酸ナトリウムが舌の味蕾細胞(味を感じとる細胞)を一時的に溶かすことが原因だと考える専門家も少なくない。

プロピレングリコールも同様に、アレルギーなど皮膚障害を起こす可能性がある旧表示指定成分のひとつだ。安全性は極めて高く無害と言われる一方で、他の成分の経皮吸収を促す作用が懸念されている。

この成分は心臓発作時の舌下剤として治療目的に用いられるが、わずか13秒で心臓に到達する高い吸収性を持つ。有害成分を含む歯磨き粉の成分を素早く体内に吸収させ、血管を伝って全身に蓄積させる作用が懸念されている。

心臓や肝臓、女性の場合は子宮といった臓器にも蓄積されるため、気になる方は使用を控えた方が賢明かもしれない。他にも人体に害を及ぼす可能性がある成分はたくさんある。気になる方は、旧表示指定成分のチェックをおすすめしたい。

③海洋プラスティックによる生態系破壊

海洋プラスチック問題と言えば、スーパーのビニール袋やペットボトルなど比較的大きな対象物を思い浮かべる方も多いだろう。一方で、意外に知られていないのが「マイクロプラスチックビーズ」と呼ばれる、ポリエチレンやポリプロピレン等でできた微細な球体粒子の存在だ。

「マイクロビーズ=スクラブ」という印象が強いが、その多くは数ミクロン(μm)-数百ミクロン(100μm)と目に見えない位の超極小粒子である。歯磨き粉に含まれる「マイクロプラスチックビーズ」も、海洋生態系に深刻なダメージを与えるリスクが指摘される。

歯磨き粉以外にも、シャンプーやコンディショナー、日焼け止め、アイシャドウやマスカラ、ベビー用スキンケアと幅広い製品にマイクロビーズが含まれる。水と一緒に流されると排水処理施設での処理は困難であり、河川や海洋にそのまま流れこんでしまう。

マイクロプラスチックは環境中の汚染物質や化学物質を吸着濃縮しやすく、これらを食べたプランクトンや小魚の体内に有害物質が蓄積されていく。食物連鎖の過程で、エコシステムや人体にも深刻な影響をもたらす可能性がある。スクラブ入りの製品を選ぶ時は、果物の種子や塩といった天然由来の成分でできた商品が推奨される。

環境に配慮した「歯磨きタブレット」へシフト

サーキュラーエコノミーの促進に向けて、化石由来のバージンプラスチック比率の低い容器や、サトウキビを主原料とするグリーンポリエチレン素材のチューブ歯磨き粉が開発されている。しかし、抜本的に形状の異なる商品も消費者ニーズを捉えて離さない。

最近は「ウォーターレス」が美容業界やパーソナルケア商品のトレンドとなりつつある。こうした流れを受けて誕生したのが、ラムネ菓子のような見た目の「粒状の歯磨き粉」だ。

使用方法は、タブレットを口に含んで数回噛んだ後、水で濡らした歯ブラシで通常通りブラッシングするだけ。既存のペースト状歯磨き粉と同等以上にしっかり泡立つため、満遍なくきめ細かな泡が行き渡り、磨き残しやドライマウス感も少ない。

数ある歯磨きタブレットの中でも「HUPPY」は、若い世代を中心に人気を博すオーラルケアブランドのひとつ。生分解性パッケージを使用した100%プラスチックフリー、人にも地球にも優しい毒性を一切含まないクリーンな原材料でつくられている。参考までに原材料の一部を記しておく。

  • キシリトール(フィンランド)
  • ナノハイドロキシアパタイト(ポルトガル)
  • ココナッツオイル(フィリピン)
  • ペパーミントオイル(アメリカ)
  • イセチオン酸ココイルナトリウム(アメリカ)
  • 炭酸カルシウム(トルコ)
  • 重炭酸ナトリウム(アメリカ)
  • アロエベラ(グアテマラ)
  • 炭(イギリス)
  • ナチュラルミントフレーバー(アメリカ)
  • ティーツリーオイル(オーストラリア)
  • タラガム(ペルー)

ご覧頂くとわかるように、全原材料の輸入国まで明記されている。こうしたサスティナブルに配慮した原材料調達やサプライチェーンの透明性もエシカルブランドの特徴となる。
上記で紹介したラウリル硫酸ナトリウムの代わりにココナッツ由来の発泡成分や、アメリカでは毒物として認定されるフッ素の代替品にナノヒドロキシアパタイトが使われているので安全性も極めて高い。
加えて、タブレット自体に動物由来成分やグルテンは一切含まれないので、ヴィーガンの方やアレルギー持ちの方でも安心して使用可能だ。携帯性にも優れており、長時間飛行機で移動する方、緊急時やアウトドア志向の方にも利便性が高い。(キシリトールは犬にとって重い中毒症状となるので取り扱いにはご注意を)
脱プラの波は確実に押し寄せている。欧米のトレンドのように、今後は多くの衛生用品で、植物由来の土に還る素材やリサイクル可能なガラス瓶、プラスチックフリーといったエシカルな歯磨き粉が主流となるだろう。

日本での認知度は低いタブレット歯磨きであるが、もし興味のある方は日本でもLUSHで購入できるので試してみてはいかがだろう。同社では顧客から使用済み容器を返却してもらい、新たな製品パッケージに生まれ変わらせる「循環型容器返却プログラム」を採用している。

トゥースウォッシュ容器もプログラム対象商品であり、返却時には次回30円の値引きを受けられる特典付きだ。「環境保全やサステナブルに興味はあるものの、何から着手すればいいのかわからない」という方向けの、手軽なSDGsアクションとしてもおすすめしたい。

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