低空経済で地方にも便利な生活を

中国では、現在ドローンを含むeVTOLを利用した「低空経済」が、注目を集めています。

現在中国が発展に力を入れている低空経済が今後発達することで、遠く離れた場所への物資の輸送が可能になるだけではなく、人の交通手段にもなりうると考えられています。

このeVTOLによる低空経済の発展を実際に見ることができるのが、中国江蘇省南京市にある浦口ハイテク区です。

この浦口ハイテク区では、eVTOLによる「低空経済」のモデルエリアの構築が進められていて、さまざまなeVTOLを利用し2025年までに関連産業の付加価値額が15億元を超えることを目指しています。

ここでは、中国をはじめ世界中の注目を集めている「低空経済」について解説していきます。

低空経済とは

低空経済とは、原則的に高度1,000m以下(条件によっては3,000メートル程度)の低空を活用して、有人・無人のeVTOLを活用した各種のサービスを意味します。

低空経済の代表的な事例は、eVTOLを利用したフードデリバリーや、空飛ぶ車という新たなモビリティーがあります。

電動の3つ以上のローターを利用した回転翌機であるマルチコプターは、20世紀から開発が進められてきました。

そして一般の人々が安価なホビー用ドローンを購入できるようになってから、もう10年以上が過ぎています。

eVTOLは玩具として、産業の道具として、あるいはウクライナ戦争で広く報じられているように軍事的用途を目的として、その存在すでに珍しいものではありません。

このeVTOLの操縦は、すでに職業として定着していて、撮影の需要から始まり、インフラの点検、各種の調査、消火活動、農薬の散布などさまざまな用途に使用されています。

このように低空で行われる各種の経済活動を、低空経済と呼びます。

低空経済の現在

中国ではここ数年、低空飛行型経済である「低空経済」が新たな力を育成・発展させるために重要視されています。

広東省深圳市の深圳人材公園では、実際にドローンがデリバリーボックスの上まで飛行し、高精度測位システムにより運んできた商品を正確にボックス上部に置き、利用者が商品を自分で受け取るというサービスが実際に始まっているのです。

また中国西部のエリアでは、ドローンが収穫した松茸を積み、上空へと飛び立ちわずか15分から30分程度の時間で麓へ松茸を届けるという方法で活用されています。

低空飛行は現在、観光や遊覧、都市のセキュリティ、医療救護、緊急支援、農林・林業の植物保護、電力網の巡回検査などの幅広い分野に及んでいて、これを活用することにより人の労力を軽減させることが可能です。

現在の低空経済の市場規模は2022年の試算ですでに1千億ドル以上に達し、これからも急増傾向を保つと考えられているため、無視できない存在となるでしょう。

ドローンの首都と呼ばれる深圳市の取組み

低空経済関連産業をリードしているのは、中国の深圳市です。

深圳市は2023年12月に、低空経済の質の高い発展を目指す政策を発表していて、積極的な補助金の導入により低空経済の後押しを行っています。

その成果として、2023年に77路線の無人機航路が新たに開通したほか、無人機発着拠点も73か所新設され、無人貨物機の飛行数は60万回となり、飛行規模は中国の中で一位を誇るまでに発達したのです。

さらに深圳市交通局の発表によると、2023年末までに深圳市のドローン企業は1,730社以上、年間生産額は960億元に達したといいます。

2024年2月にはドローンメーカーの上海峰飛行空科技が、世界初となるeVTOLの海上飛行を伴う航路の飛行を実現したとの発表も行われました。

低空経済が抱える課題

低空経済は、今後どのような課題を解決する必要があるのでしょうか。

中国の民航局は今後、eVTOLの耐空性審査、低空飛行のサービスの保証、インフラ設備の標準、市場参入、安全管理などの面での研究と計画配置が課題となるため、これらをさらに強化する必要があると考えています。

管理の健全化においては国の低空改革に協力し、空域の分類管理を加速させ、「自動運転航空機の飛行管理暫定条例を実行に移し、eVTOLの総合管理プラットフォームを強化し、関連部門と協力して低空飛行活動のサービス保障体系を構築が急務です。

支援の強化では、低空経済発展に対する新たなインフラのニーズに対応するため、ゼネラルアビエージョン空港(軍事航空と定期航空路線を除いた航空の総称)と臨時発着場の建設の推進も急がれる課題のひとつです。

また、航空機の適格審査能力をさらに向上させ、航空機の適格基準や審査モードとその技術を最適化し、eVTOLの適格審査体系と能力を構築するとしています。

安全保障の強化では、低空飛行の安全監視体制を継続的に改善し、将来の低空運行状況に対応するために、運輸航空、ゼネラルアビエーション、無人のeVTOLなどが融合した運用シーンにおける飛行活動の安全運航ルールや基準、関連する監督政策を整備し、安全監督の効率のさらなる効率化を目指すとしています。

このような課題に対する取り組みを通じて、低空経済によるインフラを整備し、広大な国土を持つ中国のどこに住んでいても、低空経済の恩恵を受けられるようにすることが、今後の課題であるといえるでしょう。

低空経済の今後

低空経済は、今後飛行制御システムや動力システムなどの中核技術が持つ課題を打開し、人工知能(AI)などのデジタル技術との融合が一層進むことになるでしょう。

それによって、低空飛行をするeVTOLは、よりグリーン化、スマート化が進むと予想されます。

このことから、さらに多くのシーンで利用されると考えられます。

中国における低空経済は、政策による支援と技術の応用をよりどころとして、さらに発展していくでしょう。

低空経済の発展には安全なeVTOL開発する技術と、サポートする法整備が必要不可欠です。

それ以外にも離発着場や操縦士の訓練、免許認可の制度などのインフラ整備も必要となります。

さらに、航空情報や気象情報をリアルタイムに共有する仕組みも重要な役目を果たします。

現在の日本では、空飛ぶ車と呼ばれる電動垂直離発着機を含めた、低空域を利用する関連分野の融合により、低空経済の発展が期待できるといった状態になっています。

日本政府も2030年代には本格的な導入を目指していますが、現状では中国に遅れをとっている状態です。

日本で「空飛ぶ車に乗って観光する」ということが実現するまでには、まだまだ時間がかかるでしょう。

SDGsに貢献する低空経済

現在低空経済の発展が目覚ましい中国では、人力で行うと数時間かかる荷物の運搬をわずか数十分で行えるという例があります。

そのため、中国の中の地方部であっても、都市部の物資を短時間かつ大量に手に入れることができるようになり、都市部の人もまた地方部の物資を簡単に入手できるようになります。

それ以外にもインフラの点検が容易になるため、停電などを事前に防いだり実際に停電などが起こったりした場合にも、人力のみで行う場合よりもはるかに速いスピードで、インフラの回復作業を進めることが期待できるでしょう。

これは、SDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」の達成に貢献できます。

地方に住んでいる人たちはインフラの整備という問題では、都市部に遅れをとるのは、ほとんどの国で起こっている問題です。

この問題ような問題を解決するために、今後さらに低空経済が発展していくものと思われます。

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