日本では、2020年7月1日から全国一律でレジ袋の有料化が始まりました。
レジ袋が有料化になった理由は、海に流れ込んだレジ袋を含むプラスチックごみが海の生態系を破壊したり、廃棄処分する際に二酸化炭素を排出するため地球温暖化を止めたりする必要があるということです。
そもそもレジ袋は、1972年に四国の中川製袋化工が手提げのついたレジ袋の特許を取り、これが好評となって全国の小売店に広がりました。
そのため1972年以前は、買い物をする際には今でいうとのころ「買い物かご」「買い物袋」をもって買い物に行くのが一般的でしたが、2020年以降はレジ袋のない時代に回帰したともいえるでしょう。
しかし、環境に負荷を与えないキャッサバ由来のレジ袋がインドネシアのバリ島に拠点を置くエコテクノロジー企業「AVANI(アバニ)」によって開発されました。
ここでは、AVANIが開発したキャッサバ由来のレジ袋を紹介していきます。
バリ島のごみ事情
バリ島と聞くと、美しい砂浜にコバルトブルーの海が広がる美しい自然を思いうかべる方も多いと思いますが、実際はそうではありません。
今やバリ島の海はゴミやがれきで溢れかえり、そのゴミに大半がプラスチックごみです。
インドネシアにはごみ処理にかかるコストの負担を嫌う風潮と、長年のポイ捨て文化により、捨てられるごみ全体の約8%弱が川や海に捨てられています。
捨てられたプラスチックごみは、長い時間をかけても自然に分解されることはありません。
そして捨てられたごみは海中を漂い、ウミガメやクジラなどがエサと間違って食べてしまうなどして死んでしまい、海の生態系を壊してしまう一因となっているのです。
また、マイクロプラスチックと呼ばれる微小なプラスチックが魚の体内に蓄積し、その魚を人間が食べることで、人間の体内にもマイクロプラスチックが蓄積していき、人体に悪影響を及ぼしてしまいます。
このような状況はインドネシアのみの問題ではなく、世界的な問題となっています。
キャッサバ由来のレジ袋とは
AVANIが開発したレジ袋は、タピオカの原料となるキャッサバ由来のものです。
キャッサバはイモの一種で、東南アジア・南アフリカ・中南米などで栽培されています。
同じイモであるジャガイモやサツマイモとは異なり、背の高い木に成長し、苗木を切って地中に植えるとそこからイモが生えるという特徴があります。
暑さと寒さに弱いため、日本の気候で栽培するのは難しいとされています。
このような特徴を持つキャッサバから取れるでんぷんに、植物性油と天然由来の樹脂を組み合わせて作られたのが、AVANIのレジ袋です。
見た目は一般的なレジ袋と変わりがないように見えますが、通常のレジ袋が分解されるまで1000年以上かかると言われている一方で、このAVANIのレジ袋はわずか半年で分解されてしまいます。
ただし熱に弱いという特性を持っていて、強度も一般的なレジ袋より劣ることから、飲食店やスパーマーケットでの利用は現実的ではありません。
しかし、アパレルや小売店ではすでに導入しているところもあります。
開発したのはインドネシア在住のサーファー
AVANIのレジ袋を作るために立ち上がったのは、インドネシア在住のサーファー、Kevin Kumara氏です。
キャッサバ由来のレジ袋は、海に流出しても数か月から半年程度で分解され、また80度以上のお湯に入れると数分で溶けてしまいます。
レジ袋の印刷に使用しているインクも、アルコールを主体とした安全なものなので、AVANIのレジ袋を溶かしたお湯を飲んでも、健康に全く影響はありません。
AVANIのレジ袋と同じ素材で作られたストローも、商品化されています。
Kemara氏は、いつかすべてのプレスチック製レジ袋が、自然の中で分解されるものに置き換わってほしいと心から願っています。
大切なのは、一部の国や地域で行われているような「法律による分解されないプラスチック製レジ袋の使用禁止である」とも考えています。
AVANIのレジ袋を世界に広げていきたいとは思っていても、実際に多くの国に普及していくには非常に時間がかかるでしょう。
今後すべてのプラスチック製レジ袋よりも分解速度が桁違いに速い、AVANIのキャッサバ由来のレジ袋のようなレジ袋に置き換わり、きれいで自然にあふれた地球を残していきたいと、Kemara氏は願っています。
キャッサバ由来レジ袋にデメリットはある?
ここまで読まれた方は、キャッサバ由来のレジ袋はいいことメリットだらけだと思われるかもしれませんが、デメリットもあります。
そのデメリットとは
- 通常のプラスチック製レジ袋よりも価格が高い
- 使い捨てが前提となる
- すぐに分解されるわけではない
という3点です。
研究が進むにつれて、この3点のデメリットを克服したレジ袋が全世界に広まることで、地球を取り巻く環境が、大きく改善していくものと思われます。
まとめ
ここまで、AVANIのキャッサバ由来のレジ袋について解説してきました。
一度立ち返って、プラスチック製のレジ袋が急速に広まった理由について考えてみましょう。
プラスチック製レジ袋が広まった大きな理由は、利便性です。
買い物に行くために、買い物かごや買い物袋を用意する必要がなくなるからです。
プラチック性レジ袋開発以前には、現代のような小さく畳めるエコバッグは存在していなかったので、レジ袋の登場とともに手軽にたくさんの商品を購入できるようになりました。
また、プラスチック製レジ袋に販売した店の名前を入れることで、大きな宣伝効果も得られたでしょう。
そして何より、レジ袋に入っている商品=清算済みの商品とみなされるため、万引きの被害を減少させる効果もありました。
しかし、プラスチック製レジ袋の有料化が始まってから、このような買い物をする人と販売する方のメリットはなくなってしまったのです。
このようなデメリットも、AVANIのキャッサバ由来のレジ袋のような生分解性プラスチックを使用したレジ袋が広まれば、無くなっていくと考えられます。
買う人・売る人・自然、このすべてにメリットがあるAVANIのレジ袋が、世界のレジ袋の主流となることを願って止みません。