子どもを保育施設に通わせる準備として、おむつの用意というものがあります。用意したおむつを保育施設に持参して使用するのですが、これには保護者にも保育者にも大きな負担がかかるシステムなのです。
しかも利用している保育施設によっては、使用済みのおむつを持ち帰る必要があるところもあります。
その理由にはいくつかのものがありますが、これもまた大きな負担となっています。
この登園時のおむつの準備や使用済おむつの持ち帰りという負担を無くし、なおかつそれが環境を守る取り組みに利用され始めています。
ここでは、BABY JOBが展開している「手ぶら登園」と、この取り組みにより自然環境を守ることにつながる理由について解説していきます。
手ぶら登園とは
乳幼児の一日の紙おむつの使用枚数は平均して5枚から6枚程度といわれていますが、これには個人差もあり、また年齢が低くなるにつれて使用枚数も増えていきます。
一日のうちの日中の大半を保育施設で過ごす園児には、年齢により適した枚数のおむつを持参しなくてはならず、そのおむつには子どもの名前を記入する必要があります。
登園の際にはその他にも着替えなどの荷物を持参する必要があるため、紙おむつだけでも持参する必要がなくなれば保護者の負担を軽減することができるでしょう。
そこで始まったのが、「手ぶら登園」です。
手ぶら登園とは毎月定額を支払うだけで、おむつやおしりふきが保育施設に届き、サブスクでこれらを利用できるというサービスです。
手ぶら登園はどのようなSDGsの目標達成に貢献する?
手ぶら登園は、二つのSDGsの目標達成に貢献します。
ここでは、この二つについて解説していきます。
目標12つくる責任 つかう責任
「つくる責任 つかう責任」という目標は、持続可能な生産消費体形態を確保することを目的としています。
少ない資源で、質の良い多くのものを得られるように生産や消費ができる形態が求められます。
手ぶら登園のおむつのサブスクがこの目標の達成に役立つ理由は、使用済みの紙おむつを回収し、リサイクルを行っているからです。
紙おむつを焼却処分する際には、し尿を吸っているために焼却処理場にかかる負担も大きく、排出される二酸化炭素の量も多くなります。
そこで各保育施設でから使用済みの紙おむつを回収し、新品の紙おむつに水平リサイクルするという取り組みが始まっています。
紙おむつは原料に高品質の資源が使われているため、使い捨てるということが大きな問題となっているためです。
そのため、さまざまな紙おむつメーカーが紙おむつの水平リサイクルへの取り組みを行っています。
目標15陸の豊かさを守ろう
紙おむつをリサイクルする際には、排せつ物を取り除き粉砕と洗浄を行い、ごみを取り除いて「高分子吸収体」「プラスチック」「パルプ」の三つの素材に分離させます。
この中でもパルプは素材の分離を終えた時点では、またリサイクルに適さない「低質パルプという状態です。
そこでユニ・チャームが世界で初めて開発したオゾン処理という技術で、清潔かつ安全できれいな資源として使用することができる上質なパルプに再生させます。
このような過程を経て生まれ変わった上質なパルプは、再び紙おむつの材料として使われることとなります。
この処理の過程では水や空気を汚染することがないため環境に負荷をかけることなく、またパルプを新たに森林などから切り出した木を利用せずにパルプを使用することができます。
手ぶら登園のメリット
手ぶら登園のメリットには、保護者や保育者にとって以下のようなメリットがあります。
登園準備が楽になる
手ぶら登園を利用すると、保育施設に直接おむつやおしりふきが届くため、登園準備のために自宅で紙おむつを揃えたり、紙おむつに名前を記入したりする必要がなくなるため自宅での紙おむつの準備の必要がなくなり、保護者の負担を減らすことができます。
朝の忙しい時間に余裕ができる
手ぶら登園を利用ことで紙おむつを保育施設に持参する必要がなくなるため、朝の登園準備が楽になります。
そのため、ゆとりができた時間を少しでも多く子どもに費やすことができます。
登園時の荷物が減る
前述したように、乳幼児が一日に使用する紙おむつの枚数は5枚から6枚といわれており、年齢が低くなるにつれて使用枚数は多くなります。
このような枚数のおむつを持参すると、ただでさえ多い登園時の荷物がさらに多くなってしまいますが、手ぶら登園を利用するとその分の荷物を減らすことができます。
保育士がおむつを個別管理する手間が減る
保育士は記名された紙おむつを管理し、間違いなく本人に使用する必要があります。
しかし、特に入園したてのゼロ歳児の場合、顔を覚えるのが難しく違う子どもの紙おむつを使用してしまう可能性もあります。
このような管理の手間を省略することにも、手ぶら登園のシステムは一役買っています。
使用済おむつの持ち帰りを止めることで得られるメリット
BABY JOBは「保育園からおむつの持ち帰りをなくす会」を運営しています。
紙おむつの持ち帰りのシステムを採用している市区町村が多い保育施設のトップ10は、すべて甲信以西の地域でした。
使用済おむつの持ち帰りを実施している理由としては、「便による体調確認」最も多く43%、「これまでの習慣または不明」が30%、「ごみの保管・回収の手間で問題がある」が14%、「予算がつかない」が9%、「保護者からの要望がない」が4%となっています。
このうちこれまでの習慣という理由に関しては、布おむつを利用していた際の習慣の名残ではないかと考えられます。(BABY JOB調べ)
しかし、この「使用済おむつの持ち帰り」が保護者を悩ませているという声もあります。
例えば子供を保育施設に車で送迎する際に車の中に臭いが残ってしまう、使用済みのおむつを持ったまま公共交通機関を利用したり、お迎えの後に買い物に行けないといったりする理由から保護者の大きな負担になってしまうことが多々あります。
また、保育施設側にもこの「使用済おむつの持ち帰り」制度は負担となっています。
使用済のおむつであってもそこに記入された名前を確認し、保護者が持参したビニール袋に入れるなどの作業を毎回行う必要があるためです。
このように保護者と保育者の双方に負担がかかる使用済みおむつの持ち帰り制度を無くし、再利用して新しいおむつにリサイクルすることができる手ぶら登園は、今後の新しい紙おむつの管理法として広まっていくものと期待されています。
まとめ
ここまで、「手ぶら登園」が保護者と保育者の双方の紙おむつを管理する負担を軽減するだけではなく、SDGsの「目標12作る責任使う責任」「目標15陸の豊かさも守ろう」の二つの目標に貢献できるシステムであるということを解説してきました。
保護者や保育者の負担軽減という点に関してはすでに大きな役割を果たしている手ぶら登園ですが、紙おむつのリサイクルフローはまだまだ問題点を抱えています。
現在のところ、紙おむつのリサイクルには一般的に販売されている紙おむつより、高いコストがかかります。
また手袋などと一緒に捨てられることが多い介護用の紙おむつも分別を徹底することで、リサイクルを行うことが可能です。
このような問題を一つ一つ解決して、一般の紙おむつと同等の価格でリサイクル紙おむつを選ぶことができる未来をつくるためにも、手ぶら登園というシステムは大きな力となるでしょう。