SDGsの目標達成のために役立つ仕事がしたいけれど、どのような仕事を選べば良いか分からなかったり、自分のスキルをSDGsの目標達成のために役立てたいと思ったりしている方も少なくないのではないでしょうか。
日常生活の中で食品ロスを減らす、エコバッグを活用するといった工夫をしてSDGsの目標達成に貢献しながら、さらに一歩踏み込んで「SDGsを仕事にする」ことを希望している方向けに、ここではSDGsと大きく関わる仕事の紹介などを行っていきます。
まずなぜSDGsに関わる仕事に携わりたいか考えよう
おそらくSDGsに関わる仕事がしたいと思っている方は、「SDGsに関わる仕事」ではなく「サスティナブルな社会の実現に深く関わる仕事」をしたいと思っているのではないでしょうか。
仕事を決める前に、まず「SDGs」を流行語のように使って求人を行っている企業には注意しましょう。
また、「SDGsに関わる仕事」と関わりのない仕事は、ほとんどありません。
SDGsには2030年までの達成すべき17の目標と、169のターゲットがあります。
このように範囲が広いので、ほとんどの仕事が何らかの目標やターゲットに貢献しています。
それでもより深く、「サスティナブルな社会の実現に深く関わる仕事」をしたいと思っている場合にのみ、「SDGsに関わる仕事」への就職や転職を考えることをおすすめします。
その際に就職・転職先を選ぶ際には、自分が今まで学んできたことや持っているスキルを活かすことができる職種や企業を選ぶようにしましょう。
SDGs目標別職業例
ここでは、SDGsの目標達成に深く関わることができる職業について解説していきます。
一次産業及び食品事業
目標1貧困をなくそう・目標2飢餓をゼロに・目標14海の豊かさを守ろう・目標15陸の豊かさも守ろう
貧困をなくす及び飢餓をゼロにするためには、まず食料を貧困状態や飢餓状態にある人に届ける必要があります。
そのため、酪農・農家・漁業などの一次産業、食品系の職業に就くことでSDGsの目標達成に関わることができます。
一次産業に関していえば、食料の生産から出荷に関わるだけでなく、環境問題に向き合う必要もあります。
農業や漁業を行う上で、豊かな自然環境を守る努力をしなければいけません。
資源や環境整備の問題を解決するために、海の豊かさや陸の豊かさを守りながら仕事を行う必要があります。
そのため一次産業の仕事は、SDGsの目標14と目標15に深く関わる職業となるのです。
食品系の仕事は食品の製造から加工までから卸売まで幅広い職業があり、世界の食糧問題にアプローチしたり、食品ロスの削減や食料の再配分など近年注目されているテーマからSDGsにアプローチしたりすることができます。
一次産業や食品事業は、環境問題や世界的な食糧問題に関わる仕事です。
仕事を取り巻く環境をはじめ、できることから少しずつ取り組むことで世界的な課題の解決に関わることができるでしょう。
再生可能エネルギー関連の仕事
目標7エネルギーをみんなにそしてクリーンに・目標9産業と技術革新の基盤を作ろう
再生可能エネルギーに関わる仕事は、最も直接的にSDGsの目標達成に関わることができる職業です。
具体的に言えば電力系の企業で、例えば太陽光発電、水力発電、風力発電、地熱発電、バイオマス燃料・発電などの事業を行っているところに入社することで、SDGsに深く関わることができるでしょう。
電力系の企業以外にも、再生可能エネルギーに強い商社や発電設備の建設などを行う大手ゼネコンなども、この目標に対する関連性は高くなります。
また再生可能エネルギーに限らず、エネルギー系の仕事は社会のインフラを担います。
この産業自体の市場規模は一兆円を超えるという事もあり、関わる職業は無数にあります。
その職業には、電気・機械系のエンジニア、建築・設計のマネジメントや現場監督、事業計画、営業、太陽光パネルのコンサルタント・設置などの職業があるので、自分の適性に合った職業を選ぶことも可能です。
ソーシャルワーカー
目標3すべての人に健康と福祉を・目標10人や国の不平等をなくそう・目標16平和と公正をすべての人に
ソーシャルワーカーとは、一般的に社会福祉士の資格を持ち、人々が生活していく上で出会う問題や課題を解決するために援助を行う専門職です。
社会の中で弱い立場にいる人たちが困りごとを抱えている場合に、それを解決し幸せに暮らせるように相談に乗り、必要な社会福祉サービスを組み合わせて、周囲や地域の人々との連携と調整を図ります。
この職業は比較的新しくできた職業ですが、公務員として自治体に勤めたり、病気で困っている人をサポートするために病院に「医療ソーシャルワーカー」として勤めたり、学校で児童や生徒の相談にのる「スクールソーシャルワーカー」として勤めたりするなど、活躍の場は広範囲にわたっています。
子どもの貧困や虐待が社会問題となっている近年では、家族という単位に目を向けた「家庭ソーシャルワーク」が今後重要になってくると言われています。
今問題となっている不登校やヤングケアラーの子どもたちに対しては、心の悩みを聞くだけでは問題を解決することはできません。
ヘルパーの手配や場合によっては生活保護の申請など社会資源を活用しながら、具体的な問題解決を目指す必要があります。
そのためには家族間の関係やコミュニケーションに着目し、その関係性をとらえなおして調整することで、子どもを含めたその家族にとってより望ましい状態を実現していく必要があります。
ソーシャルワーカーとは、このように社会の中に取り残された人々に力を貸すことで、SDGsの目標3・目標10・目標16の達成に貢献することができる仕事です。
金融機関
SDGsのすべての目標
近年では、金融機関に対して取引先企業からSDGsに関連する相談が増えてきています。
金融機関が資金提供を行う際には、社会に正の影響を与える企業が生き残っていくと考えるため、負の影響を与える企業への資金提供を行うことは、金融機関にとってリスクが大きい行為だという考え方が根ざしています。
近年では、資金を提供する企業が社会に与える影響が正の影響であるか負の影響であるかの判断材料としてSDGs、特に環境問題に貢献しているかどうかというものも含まれることも多くなってきています。
これが、現在金融機関で投資の大きなテーマになっている「ESG投資」です。
また、ESG投資だけではなく金融機関の投資先に対してSDGsに絡んだコンサルティングのニーズも高まりを見せています。
金融機関はSDGsの目標達成のための貢献度によって投資の可否や金額を決めることもあるため、SDGsのあらゆる目標達成の役に立つことができます。
農業・水産業
目標1貧困をなくそう
飢餓をなくすためにまず必要なのが、多くの食料を生産することです。
その理由は、健康的な社会生活を送るためには、まず人間が食品により十分なカロリーを摂取することが大切だからです。
そのため農業や水産業、畜産業は、SDGsの目標2「飢餓をゼロに」にもっともダイレクトに関われる職業であると言えます。
しかし、近年では気候変動の影響により、今までその土地で収穫されていた農産物や水産物が獲れなくなるという事態が頻発しています。
そこで大切になるのが、「持続可能な農業の実現」です。
持続可能な農業の実現とは、小規模な農家の生産性を向上させたり、土地や技術、市場へアクセスを与えたりすることで、収穫した作物を収入に変えるというもので、これは水産業や畜産業に対しても同じことが言えます。
また、天候に左右されない農業・水産業・畜産業を行うためには、今までとは異なる方法を摸索していく必要もあるでしょう。
日本においても気候変動により、今まで安価で購入できていた食料品が値上がりし、生活を圧迫しているという事実があります。
今後日本で「持続可能な」農業や水産業・畜産業を行うためには、今までのやり方に加えて、新たなテクノロジーを駆使した方法を身に付ける必要が出てくるでしょう。
農業や水産業・畜産業は肉体労働であると思われている方も少なくないと思いますが、今後はいかに肉体への負荷を抑え、テクノロジーによって開発された最先端の機器を使用するための知識を身に付けることが重要になってきます。
農業指導員
農業に関わる仕事として、「普及指導員」という仕事があります。
普及指導員とは農業に従事する方に直接接して、農業技術の指導を行ったり、経営相談に応じたりして、農業に関する情報を提供し農業に携わる人の農業技術や経営を向上するための支援を専門とする、国家資格を持った都道府県の職員のことです。
普及指導員の主な仕事には、大きく分けて以下の5つものがあります。
- 担い手を育てる
普及指導員は、農業に携わる方(=担い手)に新しい技術を紹介したり、担い手と一緒になって技術の改良に取り組んだりしています。
そのような方法で、それぞれの担い手の経営の発展を支えています。
また、新たに農業を始める方(新規就農者)に対して、農業技術から経営まできめ細かな指導を行い、次世代の担い手を育てています。 - 産地を支える
全国各地の気候や風土を生かして生産される作物の産地を維持し、発展させることは、食料を安定的に供給するためや、地域経済の面においても非常に重要なことです。
普及指導員はこうした産地をさらに発展させたり、新たな産地を作るよう農業従事者を仕向けたり、さらに地元の農協や市区町村と連携して農業従事者の組織化支援などのコーディネート活動を行います。 - 環境への配慮
農業生産は土や水などの自然を利用して成り立っている産業なので、未来にわたって持続可能な環境と調和した生産方法が求められます。
普及指導員は農薬や肥料などの訂正な使用方法や、堆肥の利用による土壌改良の方法などについて、現場で農業従事者に対して環境に配慮した農業への転換をすすめています。 - 安全・安心を支える
現代では、消費者の食に対する安全・安心への意識が非常に高まっています。
普及指導員は、直接農業従事者に接して減農薬の栽培方法を指導したり、農産物の販売に取り組む農業従事者にアドバイスを行ったりすることで、安全・安心な農業への取り組みを支援します。 - 「地域振興」をサポート
農業・農村をより魅力あるものにするために、農業従事者一人一人の個性や地域の魅力が十分に発揮できる環境づくりが必要です。
普及指導員はこれを実現するために、農業を行っている家族内のルールである「家族経営協定」の締結に向けた改革作りを支援したり、農産物の加工・販売を始める農業従事者にアドバイスを行ったりして、農業を核として地域活性化への取り組みを支援しています。
ここで解説した普及指導員は、日本国内で活動する仕事ですが、海外で同様の活動を行っている人もいます。
それは、Jicaやジェトロの指導員です。
このような指導員は、海外における農業の発展のために、日本で身に付けた知識と技術を普及させ、農産物の生産量の向上と、農業従事者の生活を豊かにするための活動を行っています。
食品事業
目標1貧困をなくそう
飢餓をゼロにするために、食品事業を展開している企業もさまざまな取り組みを行っています。
食品を直接取り扱っているため、他の企業と比較するとより直接的にこの目標の達成にダイレクトに関わっているといえるでしょう。
例を挙げると、培養肉の開発というものがあります。
培養肉を製造するためには、広大な農地も大量の飼料も必要になりません。
食品業のある企業では、一般的な培養肉がミンチ状であるのに対して、サイコロステーキ状の培養肉づくりに成功した企業もあります。
食肉を作るためには前述したように大量の飼料を必要としますが、飼料に使われている穀物など人間の食料にできる分を人間用に使用することで、食料難に苦しむ多くの人の飢餓を解消することができるでしょう。
しかし、食肉の需要が無くなることはありません。
その際に食肉の代わりになるのが、この培養肉です。
培養肉が普及して一般的になれば、今まで飼料になっていた穀物を人間用に利用することができ、家畜の放牧に利用していた広大な土地を農地に転用できるようになります。
このように、食品業の新たな商品の開発により、食料の増産が期待できます。
まとめ
ここまで、SDGsの目標達成のために深く関わることができる職業を紹介してきました。
どのような職業であっても、ほとんどの場合程度の差こそあれSDGsの目標達成に役立っています。
しかし、より深くSDGsに関わる職業に就きたいと考えている方は、ここで紹介した職業やそれ以外にも数多くあるSDGsに関わりの深い職業の中から、自分の適性に合った職業を見つけ、転職や就職をお考えになってはいかがでしょうか。