太陽光を利用して発電を行う太陽光発電システムに、欠かすことができないものといえば太陽光パネルです。
この太陽光パネルの実物を見たことが無いという方は、ほとんどいないでしょう。
太陽光発電システムは自宅用の小規模なものからメガソーラーと呼ばれる大規模なものまでその規模はさまざまですが、このシステムのすべてに太陽光パネルが使用されています。
太陽光パネルにも寿命があり、それを過ぎてしまうと発電効率の著しい低下などが起こるため、交換する必要が出てきます。
しかし交換などの理由で不要となった太陽光パネルが適切な方法で処分されないと、自然環境に悪い影響をもたらすなどの問題を引き起こしてしまいます。
ここでは不要となった太陽光パネル、すなわち廃パネルが引き起こす問題について解説していきます。
太陽光パネル2030年問題とは
太陽光パネルの寿命は、20年から30年程度です。
そのため、太陽光発電システムが普及し始めた頃の太陽光パネルが2030年の半ばごろに大量に廃棄されることが予想されます。
現在廃パネルは埋め立てて処分されていますが、このまま廃パネルの再資源化が進まない限りは埋め立て処分場がひっ迫する事態が予想されます。
太陽光発電システムの導入は右肩上がりに伸びているため、導入量の増加により廃パネルの量もまた右肩上がりになってしまいます。
この廃パネルの増加による埋め立て処分場の逼迫が、2030年問題です。
太陽光パネルを廃棄する際に知っておきたい5つの事項
太陽光パネルを廃棄する際に、知っておきたい5つの事項があります。
ここでは、その5つの事項に関して解説していきます。
廃パネルは一般廃棄物?それとも産業廃棄物?
太陽光パネルには、有害物質であるカドミウムやセレン、鉛などが含まれています。
そのため、産業廃棄物として適切に処分する必要があります。
産業廃棄物は法律で定められた方法で適切に廃棄する必要があり、これに違反すると罰金刑や懲役刑が科せられることもあります。
太陽光パネルに構造上の危険はあるのか
太陽光パネルにはさまざまな大きさのものがありますが、その重量の約60%を占めるのがガラスです。
このガラスが処分の過程で割れてしまうと、作業を行う人のけがなどの原因になってしまいます。
太陽光パネルに有害物質が使用されている?
前述したように太陽光パネルにはセレンやカドミウム、鉛などの有害物質が使用されています。
これらの有害物質にはそれぞれ適切な処分方法がありますが、含まれる有害物質の正しい情報が産業廃棄物処理業者に正確に伝わっていない場合、適切に処分が行われないという問題が起こってしまいます。
太陽光パネルのリサイクル方法や処分方法とは
廃パネルの大廃棄時代、すなわち2030年問題が起こってしまうと「廃パネルの墓場」ができてしまうことになります。
しかし真面目な太陽光電気事業者の多くは、この問題に真摯に向き合おうとしています。
その理由は太陽光発電に関する悪いイメージが広まることによって、長期的な事業の継続が難しくなることが予想されるためです。
そして、実際に廃パネルの大量廃棄問題に対して技術で対応する業者も出てきています。
廃パネルの廃棄で発生するシリコンで、「ケイ素繊維」を作る技術が開発されています。
ケイ素繊維は保湿性や耐熱性に優れた繊維なので、ダウンジャケットの中綿やスポーツウエアなどの衣料品として再利用することができます。
またコストパフォーマンスも高く、大量廃棄が懸念されている廃パネルを再利用する優れた方法であると言えるでしょう。
このように廃パネルをリサイクルするための技術は、今後さらに前進していくものと考えられます。
また廃パネルを点検し、中古品として販売している業者も存在しています。
太陽光発電システムは、廃棄を行う際に資本費の約5%の廃棄費用が必要となりますが、太陽光パネルの寿命と呼ばれる期間を過ぎ発電能力が低下しても、十分に再利用することが可能です。
そのため廃パネルの簡易検査を経て買い取ってもらうことで、廃棄に必要な費用を軽減させることも可能になります。
将来的に適切に廃棄されずに放置されたり不法投棄されたりする太陽光パネルが増える可能性も
事業者が所有している土地で行われている事業用太陽光発電は、実質的に事業が終了した際にコストが必要となる廃棄処理を行わず、有価物であるとして放置される可能性があります。
また事業用太陽光発電に限らずいずれのケースでも、廃棄のための費用が捻出できなかったり準備していなかったりなどの理由で、不適切な場所に不法投棄されてしまうという懸念があります。
太陽光パネルが適切に処分されない場合に起こる問題
太陽光パネルが適切に処分されない場合には、以下のような問題が起こることが予測されます。
有害物質の流出
廃パネルには、自然環境に悪影響を与える有害物質が含まれています。
そのため、この情報が産業廃棄物処理業者に伝わっていなければ、有害物質の流出や拡散の危険が出てきます。
このような有害物質の流出や拡散が起こる背景には、そもそも廃棄物を出す事業者側が廃パネルに有害物質が含まれていることを知らなかったり、知っていても確認を怠っていたりといったケースもあります。
さらに太陽光パネルのメーカー側が、積極的に情報を開示していないケースもあります。
リサイクル・リユースできる太陽光パネルを活かすことができなくなる
廃パネルは現在いくつかの方法でリサイクルやリユースができるようになっており、今後技術の進展によってその方法はさらに増えていくものと思われます。
このように有効利用できる廃パネルを不適切な方法で処分することは、資源を無駄にしていると考えることもできます。
廃パネルは新たな役割を果たすことができるようになる資源であると考えることもできるため、適切に処分し可能であればリユースやリサイクルを行う必要があります。
太陽光パネル正しい処分方法とは
太陽光パネルの産業廃棄物としての正しい処分方法は、まずリユースが可能であるかどうか判断し、解体・撤去工事の発注を行い、産業廃棄物処理業者による収集と運搬を行い、有害物質の流出を防ぐ「管理型最終処分場」へ埋め立てるという流れになります。
廃パネルは産業廃棄物の品目のうち、金属くず、ガラスくず・コンクリートくず及び陶器くず、廃プラスチック類の混合物として取り扱われるため、それらの許可品目を持つ埋立処分業者に埋め立てを委託する必要があります。
また、自治体によっては粗大ごみとして処分してもうことが可能な場合もありますが、ソーラーパネルを撤去する場合には電気工事士の資格が必要となるので、この資格を持っていない方は自己判断で取り外しを行わないようにしましょう。
まとめ
ここまで、太陽光発電システムのうち寿命を迎えた廃パネルの処分に関する問題や、適切な処分方法について解説してきました。
今や多くの家屋の屋根や郊外に設置されている太陽光発電システムですが、その太陽光パネルの廃棄には費用も手間もかかり、それを惜しんでしまうとさまざまな問題につながることがお分かりいただけたと思います。
クリーンな電気を作り出すための太陽光発電ですが、誤った方法で処分を行うと自然環境に害を与えてしまう結果にもなりかねません。
最後までクリーンに処分するために、適切な処分方法を知っておきましょう。