ペットボトルのリサイクルは、以前から行われてきました。
リサイクルされるペットボトルは、従来まで食品トレイや卵のパック、包装フィルムやセロテープなどさまざまな形に生まれ変わってきました。
一部のペットボトルはワークウエアや肌着としてリサイクルされるものもありますが、そのほとんどは使用後にすぐ廃棄されるものへとリサイクルされます。
そこで考え出されたのが、ペットボトルの水平リサイクルです。
ペットボトルの水平リサイクルを行うことで、半永久的にペットボトルをリサイクルし続けることが可能になります。
ここでは、ペットボトルの水平リサイクルのための取り組みを行っているサントリーを例にとって、ペットボトルの水平リサイクルの手法や問題点について解説していきます。
ペットボトルを水平リサイクルするために必要な分別方法
ペットボトルを他の製品にリサイクルしてしまうと、使用後に焼却するなどの方法で処分されてしまうので、多くても数回でリサイクルの輪が途切れてしまいます。
ペットボトルの水平リサイクルの割合が増えることで、新たな化石燃料由来の原料の使用量を削減し、循環型社会の実現に貢献することが可能になります。
しかし、ペットボトルの水平リサイクルを実現するためには、ペットボトルを正しい方法で分別する必要があります。
正しい分別法とは
- ラベルをはがす
- キャップを外す
- ボトルをきれいにすすぐ
- ボトルをつぶす
の4つの工程です。
水平リサイクルされるペットボトルの割合を増やすためには、ペットボトルに入った飲料を購入した市民の協力が必要不可欠です。
ペットボトルの水平リサイクルの方法
各家庭から回収された使用済みのペットボトルは、まず収集業者によって中間処理施設へ運搬されます。
中間処理施設に集められたペットボトルは、ベール化と呼ばれる圧縮作業を経て、輸送効率を高めたのちにリサイクル工場へ運搬されます。
その後、細かなフレーク状にしてアルカリ洗浄を施します。
ペットボトルをフレーク状に裁断した後は、異物の除去を行い高温減圧(高温で溶かす)処理が行われ、「レジン」と呼ばれる再生ペット樹脂となります。
このレジンをもとにして成形した「プリフォーム」を膨らませ、再びペットボトルとして再生します。
ペットボトルの水平リサイクルのメリット
ペットボトルを一から作る場合には、レジンの原料である原油を海外から運搬したり、レジンを作ったりする工程で二酸化炭素が排出されます。
しかしペットボトルの水平リサイクルを行う場合には、この工程が不要になるため、二酸化炭素の排出量を約60%削減することができます。
二酸化炭素の排出量を大きく削減することで、SDGsの目標13「気候変動に具体的な対策を」に貢献することができます。
サントリーと大村市の協定
大手飲料メーカーであるサントリーは、12年前からペットボトルの水平リサイクルを行っており、2024年4月に長崎県大村市と協定を結びました。
協定の締結により、大村市は年間80トン回収しているペットボトルの半分を水平リサイクルに充て、サントリーグループが再びペットボトルに生まれ変わらせます。
サントリーホールディングスは、使い終わったペットボトルをきれいな状態にし、分子レベルまで分解することなくまたペットボトルに再生するという取り組みを行っています。
この方法でペットボトルを再生することにより、環境にやさしく安心できる水平リサイクルのペットボトルを使用することができるようになりました。
大村市長は、ようやく市民の皆さんに、より一歩進んだリサイクルの意識と普及の取り組みにこの協定がつながっていくと思われると話しています。
サントリーグループは、このようなペットボトルの水平リサイクルだけではなく、今後大村市の小中学校で環境に関する授業や環境センターの見学などを通じて市民のリサイクルに関する意識のボトムアップを目指していきます。
ペットボトル水平リサイクルの課題
一見良いことずくめに思えるペットボトルの水平リサイクルですが、まだまだ課題がのこされています。
ここでは、ペットボトルの水平リサイクルが抱える課題について解説していきます。
衛生面に関する消費者の不安
ペットボトルは直接口に付けるものなので、消費者の中には衛生面に関する不安を持つ方もいらっしゃるでしょう。
水平リサイクルによって作られたペットボトルは、厳密な衛生管理のもと作られていますが、それが分かっていても気持ちの面でやはり抵抗を持つ方も少なくありません。
このようなリサイクルが注目される時代のニーズに沿ったペットボトルの水平リサイクルであっても、必ずしもニーズが広がらない可能性があります。
異物混入
水平リサイクルを行う際には、リサイクルされるペットボトルに異物が混入していない状態であることが求められます。
現在、廃棄されたペットボトルの多くは焼却処分されていますが、その理由はペットボトルの中にゴミや飲み残しなどが残っていることが多く、これらをしっかりと仕分けするのが難しいためです。
燃やした時の熱は熱エネルギーをリサイクルする手法であるサーマルサイクルによって生かすことができますが、残った灰には埋立地へと送られます。
スムーズ水平リサイクルを行うためには、異物の混入を防ぐ取り組みが急務となります。
高いコスト
水平リサイクルには、高いコストがかかってしまいます。
使用後のペットボトルを回収する運搬車のガソリン代、工場を稼働させるための光熱費などです。
ペットボトルの原料を輸入するよりコストは低いのですが、他の方法でペットボトルを再生する方法と比較すると、まだコストは高いと言えます。
このコストは、納税者や事業系廃棄物を出した企業が負担することになります。
ペットボトルの水平リサイクルのために、市民税や企業の金銭的負担が増えるということになれば、それを快く思わない方も出てくるでしょう。
しかし、中国が廃プラスチックの受け入れ拒否を行ったように、今後もごみの輸入規制を行う国は増加していくと考えられ、また最終処分場のキャパシティーの問題もあるため、すべて焼却処理を行うということには、問題もあります。
たとえ処理費用が高額になるとしても、今後はペットボトルの水平リサイクルの必要性は高まっていくと考えられます。
まとめ
ここまで、ペットボトルの水平リサイクルについて解説してきました。
ペットボトルからペットボトルを作るという取り組みは、ゴミ処分が抱える問題を解決する手段となるでしょう。
さらにサントリーが行う環境に対する授業などによって、リサイクルに対する意識の高まりも期待でします。
しかし、一方ではペットボトルの水平リサイクルはさまざまな課題を抱えていることも事実です。
これらの課題は企業の努力だけでなく、ペットボトルを使用した後の正しい分別法の周知や、リサイクルに関する市民の意識の高まりもこれらの課題をクリアする重要なキーになるでしょう。