サステナブルとは、英語で「持続可能な」「維持できる」という意味を持つ形容詞です。

この言葉は、さまざまな分野で重要なキーワードとなっていますが、これはファッションの分野についても同じことが言えます。

ここでは、サステナブルファッションとはどのようなものなのか、サステナブルファッションを実現するためにどのような取り組みが行われているかについて解説していきます。

サステナブルファッションとは

サステナブルファッションとは、衣服の生産から着用、廃棄に至るプロセスにおいて将来にわたり持続可能であることを目指し、生態系を含む地球環境や関わる人、社会に配慮した取り組みのことを言います。

つまり、サステナブルファッションは生産や廃棄に配慮するだけではなく、ファッション業界のすべての過程において環境・人・社会に配慮されたものであると言えます。

サステナブルと同じような意味でとらえられることが多いエシカルという言葉がありますが、これは「倫理的な」という意味合いが強く、法律で定められていなくても人や社会に対して良識的な行いをすることを指します。

サステナブルファッションが衣類の製造や廃棄に対して配慮だけでは成り立たずすべての過程においいて配慮が必要であるのに対して、エシカルファッションは労働者や社会、環境に対して優しいファッションのことを言うため、やや限定的な言葉となります。

しかしこの二つの言葉は、非常に関係性が深いと言えます。

サステナブルファッションが注目される背景

サステナブルファッションとは、具体的にはどのようなものをいうのでしょうか。

それは、生産から廃棄までの衣類のサイクルの中で、自然環境や労働環境に対する配慮を行い、地球にも人間にも優しいファッションを実現することです。

アパレル産業は原料の調達から生産過程、流通、消費、廃棄まですべての段階で環境と社会に影響を与え続けます。

衣服はさまざまな素材が混合されて作られますが、生産工程だけでも非常に多くの工場や企業が携わっていて、一貫した環境負荷の実態や全容の把握が困難であり、環境や人に配慮した仕組み作りが進んでいない業界でした。

環境省が2021年12月から2021年3月まで実施した、日本消費の衣服とその環境負荷に関する調査では、原料の調達から製造工程(紡績、染色、裁断、縫製、輸送)までに発生する環境負荷が、以下のようになっていることが明らかになりました。

  • 二酸化炭素排出量:約90,000kt
  • 水消費量:約83億㎥
  • 端材(半端な材料)等排出量:約45,000t
  • 有害物質が原因で生じる水質汚染

このように普段購入している衣服の製造では、環境に大きな負荷をかけています。

このような現状を打破するため、2019年のG7では「ファッション協定」が発表され、ファッション業界のサステナブルな取り組みが本格化しました。

ファッション業界の現状

2000年代以降、国内外では「ファストファッション」がブームとなってきました。

このファストファッションの流行により、消費者はおしゃれな衣服を安価に楽しむことができるようになりました。

しかし、それによって購入した衣服を廃棄し新しい衣服を購入するサイクルが早まるようになりました。

廃棄された衣服のほとんどは燃えるごみとして焼却処分されていましたが、2015年当時に全盛期だったファッションの大量消費モデルはSDGsを意識する人などからの指摘によって、徐々にスローファッションへとシフトしていきます。

スローファッションとは「長く着られるお気に入りの服を厳選して所有する」という考え方で、さらに一歩進んで現在では衣類を提供する企業の活動が、将来の地球環境を損なうことなく続けられるかということまでを意識した「サステナブルファッション」へと至っています。

国内外におけるサステナブルファッションの具体例

ここで、国内外のサステナブルファッションの具体例を見ていきましょう。

国内

日本では、消費者庁と経済産業省、環境省が連携してサステナブルファッションの促進を目的とした「サステナブルファッションの推進に向けた関係省庁連携協議会」を発足し、課題の整理や取り組みの内容の検討などが進められています。

具体的な方法として、啓発動画の作成やインフルエンサーを活用した情報発信など、消費者の関心を促す施策が検討されています。

海外

EUでは、繊維製品の消費が環境に悪影響を与えていることを踏まえ

  • 耐久性
  • リサイクルの可否
  • リサイクル済みの繊維の大幅使用
  • 危険物質を含まない
  • 労働者の権利や環境への配慮

といった条件を満たす「サステナブルファッションの推進」を目標に掲げています。

また、アメリカのニューヨーク州では2021年10月に、ファッションブランドに対して環境や社会に与える負荷の削減目標の提示、原料や素材、従業員の賃金などの情報開示を求める「ファッション・サスティナビリティ&ソーシャルアカウンタビリティ法案」が消費者製品安全委員会に提出されました。

私たちにもできるサステナブルファッションの具体例

普段から気がけることで、自分でもサステナブルファッションを実現することができます。

ここでは、その具体例を解説していきます。

手元にある衣服を長く着る

この方法が、一番始めやすいサステナブルファッションであるといえるでしょう。

多くの人が今より一年長く着用するだけで、国内全体で4万トンの衣服の廃棄量を削減することができます。

古着も選択肢に入れる

衣服を購入する際には、古着も選択肢に入れることをおすすめします。

服を服のままリユースすることで、環境にかける負荷を大きく減少させることができます。現在ではリユースショップやフリマアプリも充実しているので、一度覗いてみてはいかがでしょうか。

サステナブルファッションに取り組む企業の衣類を購入する

近年のファッション業界では、サステナブルを意識しているメーカーやブランドが増えてきています。

その取り組みにはさまざまなものがあるため、自分のスタイルに合った取り組みを行っているブランドを探してみることをおすすめします。

まとめ

サステナブルファッションという視点は、SDGsの12番目の目標である作る責任つかう責任の達成に貢献します。

また、労働者の権利の保護や環境への負荷といった観点から、目標8働きがいも経済成長も、目標13気候変動に具体的な対策を、目標14海の豊かさを守ろう、目標15陸の豊かさを守ろうといった目標に対しても重要な働きをします。

一枚の衣服を手に取るとき、長く着たいと思えるほど気に入った衣服かどうかをよく考えて購入することが、地球上の人や自然を守る第一歩になるでしょう。

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