「自動車は環境に悪い」というイメージがある方も多いのではないでしょうか。たしかにこれまでは二酸化炭素の排出が懸念されてきました。
けれども、最近ではカーボンニュートラルを目指して、環境負荷の少ない自動車が多く生産されているのです。
この記事では、年々注目されてるエコカーについて解説します。また日本の自動車企業が取り組むSDGsについてもまとめました。
自動車を通して未来のために何ができるのでしょうか。
エコカーとは?
エコカーとは、二酸化炭素のような温室効果ガスの排出量をおさえた環境にやさしい自動車のことです。電気自動車や燃料電池自動車、ハイブリッド自動車などが挙げられます。
一般的な自動車はガソリンや軽油で走ります。一方のエコカーは電気や水素など環境負荷の少ないものが動力となっているのです。
環境省によると、1990年代以降、乗用車の新車燃費は改善されるようになりました。次世代のエコカーの燃費は在来型のガソリン車のおよそ2倍程度になっているといわれているそうです。
日本の普及率は37.8%
2018年調査によると、エコカーの国内における普及率は37.8%。販売台数は年々増加傾向にあります。この要因は政府が行っている減税や補助金などの後押しが大きいといえるでしょう。
日本政府は「2035年までに乗用車の新車販売で電動車100%を実現する」という目標を掲げています。2021年5月1日から「エコカー減税」を開始。排出ガス性能や燃費性能に優れた自動車を対象に、自動車重量税を免税や軽減をするようになりました。
けれども、海外に比べると「電気自動車の普及率」が低いのが現状です。新車販売台数(普通乗用車)の割合でみてみましょう。
- 日本:約約0.88%
- アメリカ:約9.5%
- EU全体:約9.1%
- 中国:約11%
つまり、日本は自動車業界において環境負荷を減らす伸び代が大きいといえるのです。
どうしてエコカーが注目されているのか?
そもそも、どうしてエコカーの普及が求められているのでしょうか。
一つ目は維持費の安さです。ガソリン代の高騰に大きく左右されません。毎月コツコツと節約できるのは消費者にとって大きなメリットでしょう。
二つ目は購入するときに優遇措置を受けられることです。ハイブリッド車や電気自動車はガソリン車と比べて相場が高いデメリットがあります。けれども、エコカー減税があるため、実質、定価より安く購入できるといえるのです。例えば、トヨタの「AQUA」の場合。約22,500円の減税となります。
長期スパンで考えたときに、決して高い買い物ではないという点から注目を集めています。
三つ目は環境への負荷を軽減できることです。
引用:環境省|https://ondankataisaku.env.go.jp/coolchoice/kaikae/ecocar/
輸送手段の二酸化炭素排出量の割合をみると、半分が乗用車を占めています。これは6400万世帯の排出量に相当するのです。
エコカーを開発すること、エコカーを選ぶことが気候変動への対策になるといえるでしょう。
参照:トヨタ
自動車業界が取り組むSDGs
では、日本の自動車業界は持続可能な社会の実現に向けてどのような取り組みをしているのでしょうか。
エコカーの開発だけではなく、各企業が努力を重ねる事例もご紹介します。
トヨタ
カーボンニュートラルを目指して「電動車フルラインナップ」を実施しています。
- HEV(ハイブリッド車):電気とガソリンをかけ合わせた車
- PHEV(プラグインハイブリッド車):短距離なら電気で、長距離なら電気とガソリンで走る車
- BEV(電気自動車):電気のみで動く車
- FCEV(燃料電池自動車):水素をエネルギーとして走る車
このようにエコカーのラインナップが豊富なのです。利用者のニーズに合わせて、コンパクトカーからワゴン車まで幅広く取り揃えています。
また2021年5月に、トヨタは世界で初めて水素エンジンを搭載した車両でレースに参戦しました。水素エンジンで走る車は二酸化炭素を排出しないため、エネルギー効率が高く、エコであるため注目を集めています。持続可能な社会の実現に向けて、水素エンジンの開発を今も続けているのです。
参照:https://global.toyota/jp/sustainability/sdgs/#/earth/attempt/
日産
日産は、2050年までにカーボンニュートラルを実現するため、2030年代には新型車をすべて電動車両とすることを目指しています。
2021年度に2000年度比で新車から二酸化炭素の排出量の42.5%削減を達成しました。
2023年のゴールデンウィークに、筆者自身も「e-POWER」を搭載した「リーフ」に試乗。ガソリン車よりも音が静かで乗り心地もよいと感じました。
バッテリー技術の革新や高度な信頼性設計など、最先端テクノロジーを駆使して気候変動対策に挑んでいるのです。
参照:https://www.nissan-global.com/JP/SUSTAINABILITY/ENVIRONMENT/CARBONNEUTRAL/
ホンダ
ホンダは2023年1月に、2025年発売予定の新型EVプロトタイプである新ブランド「アフィーラ」を世界初公開して話題となりました。このように、自動車を通して「環境負荷ゼロ」を目指しています。ホンダが掲げる達成目標は以下の通りです。
- 2030年:カーボンフリー社会の実現をリード
- 2050年:全製品・企業活動に通じたカーボンニュートラルを実現
以上の目標を達成するために、環境関連データをくわしく公開するとともに、二輪・四輪・パワープロダクツや企業活動を通じて環境負荷の削減に努めています。
またホンダはいち早く水素の可能性に着目。30年以上の年月をかけて水素技術や燃料電池の研究開発に注力してきました。今後は、自社の製品だけではなく、商用車や産業セクターにも展開していくそうです。
ホンダの水素事業に目が離せないといえるでしょう。
参照:https://www.honda.co.jp/stories/064/
三菱自動車
三菱自動車はサプライチェーン全体で、2050年にカーボンニュートラルを実現することを目指しています。
エネルギーを消費する過程では、「消費エネルギーのミニマム化」を図っています。
- 生産プロセス効率化
- 省エネルギー活動推進
- 動力の電化推進
- 新世代技術開発
さらにエネルギーの供給サイドでは、「安価で安定した再生可能エネルギーへの転換」に努めているのです。
- 再生可能エネルギー導入(太陽光発電など)
- 再生可能エネルギー調達推進
- カーボンオフセット/回収
エコカーの開発や販売だけではなく、生産過程においても気候変動対策に貢献しているといえるでしょう。
スズキ
スズキはハイブリッド車の販売を通じて、二酸化炭素排出量の削減に貢献しています。
また資源を有効利用するため、修理交換時に発生する使用済みバンパーのリサイクルを進めています。フューエルフィラーホースカバーやサイドデッキインシュレーターカバー、バッテリーホルダーやエンジンアンダーカバーなどの自動車部品に生まれ変わっているのです。
各代理店に破砕機を設置し、破砕したバンパーを回収しています。面積を小さくすることで、バンパー輸送時の容積は6分の1に。効率的に運搬できるため、輸送時に発生する二酸化炭素の排出量削減にも成功しました。
生産だけではなく、廃棄のことまで考えた取り組みといえるでしょう。
参照:https://www.suzuki.co.jp/car/dealers-sdgs/
おわりに
「自動車は環境に悪い」というイメージを持っている方も多いと思います。けれども、現代人の生活に欠かせない自動車をなくすことは難しいといえます。
自動車業界は使う人にも環境にも配慮した自動車づくりに努めています。電気や水素で走る自動車の誕生はこれまでの研究の賜物です。どの企業も現状に満足せず、より安全でエコな自動車の開発に努めています。「ガソリンで走る」という常識をいい意味で裏切る世界がこれからも広がっていくことでしょう。
消費者としても
- 自動車に依存せず公共交通機関を利用する
- 徒歩や自転車で移動する
- エコカーを選択する
など、無理なくできることからはじめることが大切といえます。
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