香川県は日本の四国地方に位置する県で、日本の47都道府県の中で総面積が一番小さな県として有名です。
しかし、人口密度は令和元年10月1日の時点では全国で11位となっており、比較的ゆったりしているので、持ち家比率も高く一人当たりの延べ床面積も広い傾向にあります。
県都である松山市は、瀬戸の都とも呼ばれており企業の支店や国の出先機関も多く、四国の拠点都市となっています。
松山市には多くの大型小売店や飲食店が立ち並んでいますが、その中にはゆったりとした都市公園があり、その面積は全国で7位となっています。
このように自然と都市が共存する香川県は、子どもの感性を伸ばす子育てに最適な場所です。
この香川県では、子どもたちの世代にSDGsの17番目の目標である「海の豊かさを守ろう」を達成するための取り組みが行われています。
ここでは、香川県が行っている海の豊かさを後世に残すための取り組みについて解説していきます。
海洋ごみの種類
海洋ごみには、海岸に打ち上げられた漂着ごみ、海底に堆積した海底ごみ、海中や海面を漂う漂流ごみの3つの種類があります。
その海洋ごみの内訳の中で最も多いのが、食品の容器や包装袋、釣り糸などいわゆる使い捨てプラスチックのもので、海洋ごみのうち約66%を占めています。
このプラスチックごみは、適切に処理されない場合に海洋ごみとなってしまいます。
プラスチックごみ以外の海洋ごみの中には、自然物や金属、木材や布などがありますが、これらは自然に分解されることができます。
しかし、プラスチックごみは日光に含まれる紫外線や波の影響で小さく砕かれ、マイクロプラスチックごみとなり、海の生態系に大きな影響を与えてしまうのです。
海岸ごみに対する取り組み・「さぬき瀬戸」パートナーシップ
香川県の海岸ごみを除去するための取り組みに、「さぬき瀬戸」パートナーシップというものがあります。
「さぬき瀬戸」パートナーシップとは、県民と行政がパートナーとなって協力し合い、ふるさとである香川県の海岸の環境を守る取り組みのことです。
主に地域団体である自治会や婦人会以外にNPOなどの協力も得ながら、海岸の美化清掃・愛護活動を行っています。
「さぬき瀬戸」パートナーシップに参加する自治会などの団体は、概ね20名以上であることが求められ、その団体は「パートナー」と呼ばれます。
パートナーは年に2回以上海岸の美化活動を行い、それを2年以上継続していく必要があります。
回収された漂着ごみは、粗大ごみや産業廃棄物を除いて活動を行う場所の自治体の決まりに従った方法で分別し、処分されます。
漂流ごみの取り組み
香川県は、海面清掃船「みずきⅡ」を」活用し、漂流ごみを回収し処理を行っています。
海面清掃船とはその名の通り海面に漂う漂流ごみを回収する機能を持つ清掃船のことをいい、みずきⅡは行内での船の安全な航行と美しい環境を守るために製造された船です。
普段は高松港内で清掃活動を行っているみずきⅡは、回転円盤(ローター)を回転させて水流を起こし、回転円盤の前面に強力な吸引力を発生させ、海面の漂流ごみを船の中に吸い込み、ごみだけを船内のコンテナに回収するという仕組みで海面の清掃を行います。
海底ごみの取り組み・香川県方式海底ごみ回収・処理システム
海底ごみは、誰に処理を行う責任があるかが明確でないことから全国的に対策の遅れが見られます。
しかし、海底ごみの多くは沿岸の住民が廃棄した生活ごみであることから、香川県ではまず県内の地域の海底ごみをその地域に関わる全ての人の協力により回収し処理しています。
香川県方式の海底ごみの回収・処理システムは、漁業者が底引き網などにかかった海底ごみをボランティアで港に持ち帰り漁協等で保管し、沿岸市町や県などの行政がその運搬と処理を行い、内陸部を含めた全市町と県が処理費用を負担して処理を行うというシステムになっています。
この香川方式のシステムの画期的な部分は、沿岸地域だけではなく内陸部を含む全市町村が協働で行うという点で、全国初の取り組みとなっています。
海洋ごみの発生を抑える取り組み
香川県では、海洋ごみの発生を抑える取り組みを行っています。
ここでは、その取り組みについて解説していきます。
人材の育成
海洋ごみのほとんどは、人間が出す廃棄物です。
そのため海洋ごみを減らすためには、廃棄物を減らすまたは正しく処分するということが非常に重要になってきます。
また、漂着ごみの清掃などには多くの人手を必要とするため、小学生や中学生を対象として海岸および陸上での体験学習を通じて、海洋ごみの問題に対する高い知識と意識を持ったリーダーとなる人材の育成講座を開催しています。
プロモーション
香川県は海洋ごみへの理解や関心を県民に深めてもらうため、ポスターや「海ごみの教科書」「海ごみハンドブック」などのパンフレット、「ウミゴミラ公式ソング」などの映像、「僕と私と海ごみ」などの海ごみ漫画、「海ごみ大図鑑」などの絵本によるプロモーションを実施しています。
このような多くの方法を利用して、大人から子どもまで海ごみに対する理解を深めることができるようになっています。
川や道路(まち)での清掃ボランティアへの支援
川や道路(まち)にあるごみは、いずれ海に流れ着いて海洋ごみとなってしまいます。
そのため、海洋ごみを回収するだけでは海の環境を美しく保つことはできません。
そのような理由から、海だけではなく山や川、里(まち)にあるごみを拾い、すべての場所の環境美化に努めることで、海洋ごみを減らし海の環境を守ることができます。
海洋ごみに対する対策を立てる前に、その地域の海洋ごみの現状を知っておくのは非常に重要なことです。
アメリカの環境NGOの呼びかけに応えて、日本で1990年から海洋ごみの問題解決のための国際環境保護活動としてスタートした国際海岸クリーンアップ(ICC)が行った国際的な海岸ごみ調査の結果を、香川県のホームページの「香川の海ごみ情報」で閲覧することができます。
この国際海岸クリーンアップによる調査結果は、世界的に活用することが可能です。
この調査結果などをもとに海・陸を問わず清掃活動を行うことになるのですが、その際に市は一般ごみの処理等、県は清掃用具の支援やボランティアの保険加入等の支援を行っています。
まとめ
ここまで、香川県の海洋ごみに対する取り組みについて解説してきました。
香川県は瀬戸内海に面しており、魚介類の産卵・生育に最適な環境である播磨灘・備讃瀬戸・燧灘(ひうちなだ)を擁しているため、美しい海の環境を保つことは非常に重要な課題です。
しかし海岸線は複雑に入り組み、海底は起伏に富む天然焦となっていることから、海洋ごみが集まりやすく、海洋ごみが環境に及ぼす影響は非常に深刻なものとなりつつあります。
瀬戸内海の豊かな環境は、ここで生まれて育っていく魚類だけではなく、他の海域からやってくる魚類の産卵場所となり、孵化し育った稚魚はまたこの瀬戸内海から世界の海へと出ていきます。
香川県沿岸をはじめとした瀬戸内海の環境が悪化してしまうと、この魚類のサイクルが狂わされてしまい、豊かな漁場を守ることができなくなってしまいます。
SDGsの14番目の目標である「豊かな海を守ろう」を達成するためには、香川県のように県や市町、自治会やNOP団体など行政から民間まですべての団体・個人が海洋ごみに対する理解を深め、海の環境美化に対する行動を行うことが重要となります。