これまでゴミ拾いや海岸清掃といえば、ボランティアで行うことが一般的でした。
しかし、ゴミ拾いや海岸清掃などの活動をスポーツとしてとらえ、楽しみに変えたのがこの「スポGOMI」です。
では、このスポGOMIはどのようにして始まり、広がりを見せていったのでしょうか。
ここでは、スポGOMIが誕生した経緯と現在行われているスポGOMIのルールや活動方法について解説していきます。
海岸や街の清掃の必要性
海岸には、日本国内の町中から河川などを流れて来たり近隣諸国で発生したりしたごみが大量に漂着しています。
これらのゴミは海岸の景観を損ねるだけではなく、生態系を含む海岸環境の悪化や海岸機能の低下による漁業への影響を及ぼしてしまいます。
今までもこのような海岸の状況を改善するために、環境省による漂着ごみ関連の調査や回収事業以外にも、民間団体による海岸清掃が実施されてきました。
また、特に海の生物の多様性を守るためにも、海岸を美しく保つことは非常に重要です。
そのための海岸清掃は、国の事業や民間団体のボランティアによって行われることがほとんどです。
スポGOMIとは
スポGOMIとは、企業や団体が今までボランティアとして行ってきた海岸清掃に、「スポーツ」の要素を加え、ゴミ拾いを「社会奉仕活動」から「競技」へと変換させた、日本発祥の全く新しいスポーツです。
この社会奉仕活動とスポーツの融合により参加者は、同じ目標に立ち向かう、チームで力合わせ達成感や爽快感、そして負けた時の悔しさを感じ次は勝ちたいという気持ちを持つことができます。
このようなスポーツ特有の素晴らしいキーワードが、競技者自身のごみ拾いへの価値観を一新させます。
スポーツは、時に既存の価値観をプラスに転じさせる力があります。
スポGOMIのルールは、単純明快。
あらかじめ定められたエリアで制限時間内にチームでゴミ拾いを行い、ゴミの質と量でポイントを競い合うというものです。
スポGOMI に込められたメッセージとは
スポGOMIには、いくつかのメッセージが込められています。
そのひとつが、スポGOMIによって改めて街を知り、人を知るということです。
街には、さまざま人が異なる目的を持って集まります。
その理由は学業や仕事、買い物、そこに暮らしているなどさまざまです。
このような人々がスポGOMIを通してお互いを知り、街を知ることで素敵な関係性が生まれるでしょう。
また、子供たちのスポGOMIへの参加は、彼らをユニークなゴミと向き合わせることにより、ゴミを捨てない子ども、環境意識の高い子どもへと成長させます。
このような子供たちの意識の変革のきっかけが、スポGOMIというスポーツであればよいと考えています。
このようなスポGOMIのもつメッセージと思いは、大人だけではなく子どもの意識変革にも役立つでしょう。
スポGOMIのルール
スポGOMIには、スポーツマンシップにのっとったルールがあります。
スポGOMIは競技であるため、競い合う相手が存在します。
また、ルールがある以上競技者がルールを守っているかどうかを判断する審判が必要になります。
スポGOMIは
- 相手を尊重する
- ルールを尊重する
- 審判を尊重する
という3つのルールが存在します。
これら三本の柱となるルールに、よりスポーツとしてのエンターテイメント性を持たせることで、競技者の意識の中のごみ拾いがスポーツへと転換され、競技者を熱中させる要因となります。
そしてすべてのルールは、「ソーシャルスポーツイニシアチブ公式ルール」として、スポGOMIを主宰する一般社団法人ソーシャルイニシアチブが作り上げ、管理・保管を行っています。
一般社団法人ソーシャルイニシアチブの運営体制
スポGOMIを運営する一般社団法人ソーシャルイニシアチブの運営体制は、連盟の理事にマーケッター、教育ビジネス、ブランドコンサル、スポーツビジネスなどのプロフェッショナルな人材とスポーツアスリートを組織し、本部運営事務局には大学生をそれぞれ配置しています。
大会事務局(各大会主体者)は、主体となる自治体や企業がその業務を担います。
また、協賛・後援・共催には地元商店街や青少年育成委員会、体育協会、PTAなどが協力することにより、「おらが街」で開催されるこのスポGOMIの大会を「他人事」ではなく「自分事」として、「街」にかかわる多くの企業や団体、住民が作り出すイベントに発展させます。
世界でも開催されるスポGOMI
スポGOMIは、今や日本国内だけではなく世界中で行われるスポーツになっています。
2023年の11月には、スポGOMIワールドカップも開催されました。
その募集要項は
- 1チームは3名
- 12歳以上のメンバーが1人でも含まれる場合には、18歳以上の人を1人含めること
- 18歳未満の参加者の出場には、保護者の同意が必要
- 車いすでの参加も可能
- 3人のうち2人は当該開催国の国籍を有していること
- 申し込み時からメンバーを入れ替える場合には、当日までに受付に申し出ること
- パスポートを所有または取得予定であること
- 優勝した場合、原則日本に渡航可能であること
となっています。
また、日本への渡航費、滞在費、食費その他必要とされる費用は大会側で負担します。
このような募集要項に沿って各国で予選大会を行い、優勝したチームが日本での決勝大会に駒を進めることができます。
スポGOMI によりもたらされるメリットと今後の課題
スポGOMIを行うことにより、街や海岸がきれいになる以外にも、さまざまなメリットがあります。
スポGOMIを開催した海岸などの知名度が上がり観光客が増える、スポGOMI以外の地域清掃活動の参加人数の増加、散乱ごみの周囲の住民への周知ができたということが主なものです。
また、スポGOMIによりゴミ拾いを積極的に行う団体が設立されたなどの波及効果も見られました。
しかし、スポGOMIには課題も残されています。
それはボランティア活動として行われているのに、優勝者に景品が出ることの批判や、依頼者の高齢化が進んでいるため、継続が難しいと考えている団体がいること、また運営団体に人件費を支払う必要があること、うまく人を集められなかったこと、またその時の対処というものです。
スポGOMIのメリットをより良いものにし、課題を克服することでスポGOMIはさらに楽しく効率的に街や海を美しくすることができるでしょう。
スポGOMI が目指すものとは
「ゴミ拾いはスポーツだ」というスローガンを掲げ、現在では世界中で行われているスポGOMIですが、このスポGOMIには最終的な目標があります。
それは、「スポGOMIというスポーツが世界からなくなること」です。
ゴミを捨てる人がいなくなれば、スポGOMIという競技は存在できなくなります。
そのように、街や海にゴミがない世界の実現を、スポGOMIの主催者は願っているのです。
まとめ
運営組織の創設に始まり、ルール設定を行い、ゴミ拾いをスポーツ化し、今や世界中でスポGOMIが行われるまでに育て上げたスポGOMIが最終的に目指すものは、スポGOMI自体がなくなることです。
スポGOMIを通して街や海の清掃を行うことで、社会奉仕活動をスポーツとしてとらえる人が増え、それにより大会の規模も大きなものになってきました。
スポGOMIは課題克服とさらなる普及により、そう遠くない将来に陸と海からごみが無くなり、SDGsの目標14海の豊かさも守ろう、目標15陸の豊かさも守ろうの目標達成に大きく貢献するでしょう