男性の育休はいつから?子育てにやさしい企業事例8選

近年、「男性の育休」が注目されています。政府も「産後パパ育休」「パパ・ママ育休プラス」などの制度を定め、男性の育休を推進しています。

とはいえ、「男性の育休はいつから」「どんな制度があるの」と疑問に思う方もいるかもしれません。

この記事では、男性の育休やメリットについて分かりやすく解説します。

またSDGsとの関係や企業事例についてもまとめました。

男性の育休はいつから?

そもそも育休とは、法律に定められた育児休業制度です。

男性の場合、育休は出産予定日から取得できます。原則子どもが1歳になるまで取得できますが、保育所や託児所などに入れない事情があれば、1歳6ヶ月までの延長も可能です。

産後パパ育休とは

2022年10月からは、分割取得が2回まで認められるようになりました。

通常、育児休業の取得は原則1回までです。けれども、出生後、父親が8週間以内に育児休業を取得した場合には、特別な事情がなくても、もう一度、育休が取得できます。ただし、以下の要件を満たしていなけば、適用されません。

  1. 子の出生後8週間以内に育児休業を取得していること
  2. 子の出生後8週間以内に育児休業が終了していること

パパ・ママ育休プラスとは

「パパ・ママ育休プラス」を利用して両親がともに育休を取得する場合は、原則1歳2ヶ月まで延長できます。

パパ・ママ育休プラスとは、両親がともに育休を取得することで期間を延長できる制度です。以下の要件を満たす場合、利用できます。

  1. 配偶者が子が1歳に達するまでに育児休業を取得していること
  2. 本人の育児休業開始予定日が、子の1歳の誕生日以前であること
  3. 本人の育児休業開始予定日は、配偶者がしている育児休業の初日以降であること

このように、男性の育休は、家族の状況によって期間が変わるので注意しましょう。

引用:厚生労働省(PDF)

男性の育休はSDGs「5.ジェンダー平等を実現しよう」に貢献!

男性の育休を推進することで、性別関係なく育児に参加しやすい環境が整います。その結果、SDGs「5.ジェンダー平等を実現しよう」に貢献できるのです。

世界の国々と比べると、日本は女性の育児や家事の負担が大きいと指摘されています。

内閣府男女共同参画局の報告によると、6歳未満の子どもがいる夫婦の家事・育児関連時間で、男女差があることが明らかになりました。

また2022年の「ジェンダー・ギャップ指数」をみても、男女の経済や政治における格差は深刻な問題です。日本の総合スコアは0.650で、順位は146か国中116位でした。先進国の中でも最低レベル。韓国や中国より低い結果だったのです。

日本人女性は、育児や家事の負担が非常に大きく、経済的自立がしづらい環境であるといえます。

妊娠や出産を経験した女性が無理せずに働くためにも、男性の育休の充実が求められているのです。

出典:内閣府男女共同参画局|コラム1 図表2-2 6歳未満の子供を持つ夫婦の家事・育児関連時間(週全体平均)(1日当たり,国際比較)

出典:内閣府男女共同参画局|世界経済フォーラムが「ジェンダー・ギャップ指数2022」を公表

企業側が男性の育休を推進するメリット

では、企業側が男性の育休を推進することで、どのようなメリットがあるのでしょうか。3つに分けてまとめました。

メリット①社員が多様な働き方ができる

男性の育休を推進することで、社員が多様な働き方を選択できるようになります。仕事だけではなく、家族との時間も充実することで、ライフワークバランスも整うことが期待できるといえるでしょう。

メリット②離職率が低下し優秀な人材を確保できる

多様な働き方を尊重することで、社員は子どもが生まれても働きやすくなります。育児を理由に仕事を変えたり辞めたりすることもなくなるため、離職率を抑えられるのです。その結果、優秀な人材も確保しやすくなります。

メリット③企業イメージが上がる

男性の育休を推進することは、外部評価のアップにもつながります。その結果、企業イメージのアップも期待できるでしょう。

最近では、企業のサステビリティを重視した投資家も増えています。資金調達からみても、男性の育休はメリットがあるといえるでしょう。

出典:みずほ銀行

男性の育休に取り組む企業事例8選

男性の育休を積極的に推進している企業は、どのような取り組みをしているのでしょうか。男性の育児休暇取得が高い企業を中心にまとめました。

①ライオン

ライオンでは、20022年の男性の育休取得率は68%で、取得者の増加に成功しました。男女関係なく仕事と育児が両立できるような支援に努めた結果といえます。

育休から復職した後のサポートも整えています。育児世帯でも活躍できるよう、短時間勤務とフレックスタイム勤務を融合した新しい働き⽅「ショートタイムフレックス制度」も整備。復職後もサポートがあることで、育休も安心して取得できるようになるのではないでしょうか。

出典:ライオン|ワークライフエンリッチメントの推進

②Amazon

Amazonでは、子どもの出産または養子縁組前後において、全額支給される出産休暇や育児休暇オプションを実施しています。

「育休を取得したいけれど、給与がなくなるのは不安」と思う方も多いのではないでしょうか。経済面において手厚いサポートをすることで、男性の育休を後押しすることにつながるのです。

国からの育児休業給付金にプラスして、Amazonからファミリーボーナスが給付されます。育休を取得した男性社員からも、育休を取りやすい職場環境だという声が多数上がっていました。

出典:Amazon

出典:Amazon|Amazonの男性社員に聞いた、子育ての楽しさと仕事のやりがいが増える育児休暇取得のコツ

③ローソン

男性の育休を促進するために、2014年度から「短期間育児休職制度」を導入。2022年10月1日から産後パパ育休の導入に伴い、管理職を含めた全社員向けに、育休の理解を深めるeラーニングを実施したり、育休を取得したパパのリアルな体験を共有する場も設けたりしました。

その結果、2016年度には男性の育児休職取得率が80%を達成。2022年度の長期・短期合わせた男性の育休制度利用は、取得率92%を記録しました。

出典:ローソン|従業員との関わり

④積水ハウス株式会社

積水ハウスでは、「キッズ・ファースト企業」として日本でも男性の育休取得が当たり前になる社会を目指しています。そのため、2018年9月より「男性社員1ヶ月以上の育児休業(育休)完全取得」を推進し始め、2023年で5年が経ちました。

5年間で男性の育休取得の日数は約10倍になりました。さらには社内全体の男性育休ヘ意識や理解度も大きく変化したのです。

家族が暮らす家をつくるハウスメーカーとして、子育てにやさしい企業としてあるべき姿を体現しているといえるでしょう。

出典:積水ハウス|男性育休白書2023

⑤双日株式会社

双日株式会社では、男性社員がより育休を取得しやすい職場を目指しています。

男女ともに取得できる「産後育児休暇」新設。子どもの出生後から1歳になるまでの間の40日間を限度に、有給休暇を利用できます。

取得回数に制限なく分割ができるため、取得者のニーズによってカスタマイズすることは可能です。育休の分割回数を工夫した事例といえるでしょう。

出典:双日株式会社|双日、新しい育児休暇制度導入

⑥江崎グリコ

江崎グリコでは、2017年度の男性の育休取得が4%でした。けれどもそこから、2020年度から3連続でCo育てMonth男性取得者の取得率100%を達成したのです。

Co育てMonthとは、グリコ独自の育休で、子どもの出生後6か月以内に1か月の休暇取得を必須としています。男性従業員の育児参加を推進することをねらいとしています。

休暇取得をきっかけとなり、働き方についての意識を見直したり、生産性が向上したりなど、企業へのメリットも現れているそうです。

出典:江崎グリコ|ダイバーシティー&インクルージョン推進

⑦docomo

男性の育休取得も100%を目指しています。育休中でも職場とのつながりをもったり、キャリア継続をサポートしたりするために、「ドコモ・スマイルリレー」を実施しています。

  • 育休前に制度の説明や今後のキャリアについて話す三者面談
  • 育休中はコミュニケーションの場を提供し、上司との連絡も可能
  • 復職後に2度目の三者面談を実施。働き方や不安について共有

このように、育児と仕事が両立できるよう、支援対策に努めているのです。

2019年度に育休を取得した男性は33名でしたが、2022年度は男性132名。男性の取得率の増加に成功しました。

出典:docomo|両立支援

⑧イオン

イオンでは、育休を取りやすい環境に努めています。2021年度は63名の社員が育休を取得し、そのうち男性は36名でした。2019年度と比較して約2倍となりました。

育休を申請するときに理由は求められません。けれども、取得しない場合にその理由を問われることもあるそうです。育休が当たり前である風土が根付いているといえるでしょう。

出典:イオンモール|ダイバーシティ・働き方改革

出典:イオン株式会社(PDF)

まとめ

男性が育休をとる場合、これまでは「男性でも育休とるんだ」という風潮が当たり前でした。けれども、ジェンダー平等な社会を実現するためには、男性が育休を取得しないことに違和感を感じる風潮が理想であるといえるのではないでしょうか。

男性の育休が増えることは、人手不足につながるのではと思う方もいるかもしれません。けれども、企業の取り組みをみると、企業イメージが上がったり、生産性が上がったりなど、企業にとってのメリットもたくさんあるといえます。

個人としても、自分の中にある「男性だから」「父親だから」という無意識な偏見と向き合うことが大切なのではないでしょうか。

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