離島が抱える医療問題は、高齢化に伴う医療ニーズの拡大や医療の担い手不足、さらには新型コロナウイルス感染症への対応などが挙げられます。
離島以外であっても僻地と言われる地域では、その地域に医師が一人しかいないというケースも多く、専門外の疾病の疑いがある場合には専門の病院がある地域への通院を進められることもあり、そこに住む人にとって大きな負担となっていました。
しかし、このような現状は1世代前の前のAIである「ディープラーニングAI」によって改善されつつあります。
ここでは、AIが持つ離島・僻地医療問題解決の可能性について解説していきます。
医療に利用されるディープラーニングAIとは
いまやディープラーニングAIはさまざまな分野で活用されていますが、それは医療の世界でも同じです。
ディープラーニングAIは、コンピューターの進化に伴い生まれた大量のデータを学習する「機械学習」という技術で蓄積されたデータを、AI自身が抽出して判断できるようになったものです。
ディープラーニングを直訳すると「深層学習」となり、ロボットが事前に与えられた情報をもとに正誤判断や単純作業を繰り返すうちに、自動で学習できるようになるというものです。
機械学習の手法としては、「ニュートラルネットワーク」と呼ばれる仕組みが用いられます。
これは、データのひとつひとつにどのような特徴があるのかを数値化した「特微量」と呼ばれるものを組み込み、コンピューターに判断させるというものです。
ディープラーニングはこの特微量をもとにすることで、より細かく分析を行い精度の高い判断ができます。
この技術によって、人がAIに対して「教える」よりも高い精度の結果を出すことができるようになりました。
この結果、医療分野においてもAIをさまざまな技術に応用することが可能になったのです。
AIはどのような方法で疾病の判断を行う?
すでにAIが活躍している分野として、疾病の診断を行えるようになっているという分野が挙げられます。
ここでは、AIがどのような方法で疾病の診断を行っているかを紹介していきます。
画像認識
画像診断は、ディープラーニングAIが最も得意とする診断方法のひとつであると言えます。
AIが行う画像診断の方法は、レントゲンやMRIなどの画像を用いて異常がある部分を発見するというものです。
人間の目で画像診断を行う場合には時間をかけて病変を探す必要がありますが、AIを用いれば高速に大量の画像の処理を行うことができ、病変がある可能性が高い画像を抽出することができます。
この抽出された画像をもとに、医師が最終的な診断を下します。
ゲノム解析
ここでいうゲノム解析とは、生物が持つ遺伝子や染色体などの遺伝情報であるゲノムを調べ、病気の予防や診断を行うことを言います。
AIが遺伝子を解析してがんに関連するゲノムなどの悪い遺伝情報を発見し、早期発見と早期治療に役立てることができます。
AIを用いてゲノム解析を行うと、検査結果が分かるだけではなくそのデータを基にして治療方針もAIがアドバイスすることも可能によります。
すでに先進医療のひとつとして活用されつつありますが、ゲノム解析に必要なデータは膨大な量にのぼるため、活用するために相応のインフラを整備する必要があります。
医療機器への組み込み
心電図計や尿分析装置には、古くからAIによる自動診断システムが組み込まれており、医療現場のデジタルトランスフォーメーション化を図るきっかけになったと言われています。
診断から医師への情報共有までを行う「AI聴診器」なども実用化されており、医療機器とAIのつながりが広がってきています。
また海外では患者に接触しない、スマートスピーカーといった音から心拍数などをモニタリングして疾病の早期発見を行う医療機器や、採血を行うロボットなどが活用されています。
離島・僻地医療で最も活用されているのが、このようなAIが組み込まれた医療機器です。
なぜ離島・僻地医療の質がAIによって高められるのか
離島や僻地には、医師が一人しかおらず専門外の患者を診る必要が出てくることも多くあります。
そのような際にディープラーニングAIが組み込まれた医療機器を使用したり、画像診断にディープラーニングAIを使用したりすることで、病変を発見できる可能性が非常に高くなるというメリットがあります。
このような方法で医師が専門外の疾病であっても対応することができるようになると、離島や僻地医療のレベルアップにつながります。
このようにAIによる医療が一般的になることで、住む場所によって適切な医療を受けられないという可能性が低くなります。
また、離島や僻地の医師は過重労働が当然といった風潮がありますが、これらの機器を活用することで、疾病を早期発見できるようになるだけではなく医師自身の負担軽減にもつながるでしょう。
ディープラーニングAIを活用した医療の今後の課題
AIは、今後人間が行っているさまざまな業務を代わりに行えるようになると言われています。
しかし、医療の分野においては患者の客観的なデータのみでは把握できない患者自身が抱える悩みや、他人には言いにくい事情があるケースがあることも少なくないため、AIによる診断結果のみでは患者が納得しない可能性もあります。
また、AIは過去のデータを蓄積し診断を下しているため、過去に例がない新しい事柄についての診断制度は著しく低下する可能性もあります。
また、医療現場ではどんなにAIが普及しても医師に変わってAIによる予測を他の人がそのまま伝えるのではなく、AIによる予測を参考にしながら医師がさまざまな状況を踏まえたうえで、最終的な診断を下し適切な方法で患者に伝える必要があります。
そのため、AIが学習し提示した疾病の可能性をさらに絞り込み、正しい診断を下すための学習を医師も行い続ける必要があります。
まとめ
ここまで、ディープラーニングAIが医療現場でどのように利用されているかということや、ディープラーニングAIがなぜ離島や僻地の医療のレベル向上に役立っているかについて解説してきました。
さらなるAIの発達と医療現場への導入により、住む場所によっておこる医療格差をなくすことも不可能ではありません。
これは、SDGsの目標3すべての人に健康と福祉をの実現に大きく役立つものです。
このようなAIを利用した医療体制が、日本だけではなく海外の十分な医療を受けられない人が多い地域まで広がることで、多くの命が救われるでしょう。
そのためには、AIを組み込んだ医療機器の普及も重要ですが、それを使いこなす医師の存在も欠かすことはできません。
AIを組み込んだ医療機器の普及と、それを使いこなす医師の育成の両方が達成されてこそ、地域や国による医療格差をなくすことができるでしょう。