人間が生活していくうえで、インフラは欠かせないものです。
上下水道、電気、ガス、そして現代においてはインターネット環境がないと、日常生活を送ることは非常に難しくなるでしょう。

しかし、無印良品が開発した「インフラゼロハウス」は、このようなインフラが整っていない場所であっても、何一つ不自由なく生活することができます。

このインフラゼロハウス・MUJI HOUSEとは、どのようなものなのでしょうか?
ここでは、無印良品のインフラゼロハウスを紹介していきます。

日本のインフラ普及率

日本におけるインフラの中で電気を取り上げてみると、その普及率は100%です。

どのような山奥や離島であっても、管轄の電力会社が電力を供給してくれます。
上下水道の普及率は、電気のように100%とは言いえませんが、90%以上の地域にまで普及しています。

そのおかげで蛇口をひねればそのまま飲める水が利用でき、スイッチ一つで照明を使い家電を動かすことができ、トイレは水洗でいつも清潔に保たれています。

このような状況が日本ではあたり前だと思われがちですが、この便利な生活を送るために発電所から延々と繋がれた送電線によって電気が送られ、浄水場で浄化・消毒された水が地下に埋められた浄水管を経て供給され、使用された排水はやはり地価の下水管を通して汚水処理場で処理されるという膨大なインフラが、長い時間と労力、そしてエネルギーを使って日本中に整備されてきたからこそ、今日の便利な生活があるのです。

MUJI HOUSEのインフラゼロハウスとその仕組み

生活インフラは、日本全国を網羅しています。
しかし、人によってはこのインフラが整備されていない、人がいない静かな場所で生活してみたいと思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。

昨今では、ソロキャンプがブームとなっていますが、それがこのような気持ちを持つ人もいるという現実の表れなのかもしれません。
しかし、人がいない所にインフラが整備されていることは稀なので、「不便さ」に直面することも多いでしょう。

キャンプのような短い期間であれば対して問題になることはないかもしれませんが、長い期間インフラがない場所で生活するとなると、インフラがない不便さを克服する体力や知識、そして覚悟も必要になるのではないでしょうか。

そこで考案されたのが、MUJI HOUSEのインフラゼロの家です。

このインフラゼロハウスは一見ただのトレーラーハウスに見えますが、さまざまな機器が搭載されているため、電気や給排水、ガス、インターネットも利用できるという今までのトレーラーハウスとは全く異なるものなのです。

インフラゼロの家は、ユーティティ棟とリビング棟に分かれています。

ユーティティ棟

ユーティリティ棟には、蓄電池や水循環システム、キッチン、シャワーなどが設けられています。

ユーティリティ棟の壁と屋根は太陽光パネルになっていて、必用なエネルギーを蓄電池に蓄え、暮らしに必要な電力を賄います。

シャワーはキッチンなどで利用した後の水を循環させて再利用した水を利用しており、給湯器が標準装備されているため、温水シャワーを利用することもできます。

キッチンはIHヒーターを採用していて調理ができる以外にも、電子レンジやケトルを利用することもできるため、料理も一般家庭のキッチンと同様に行うことが可能です。

近年では生活に欠かせないインフラとなったインターネットも、屋根に設置してあるアンテナで電波を送受信できるため、安定的なWi-Fi環境が実現されているので生活の質が落ちることはありません。

リビング棟

リビング棟は、リビングスペース、バイオトイレなどを備えた生活のためのユニットです。

エアコンが設置してあり、快適な室温で生活できるほか、シングルベットを二台並べることができるスペースがあります。

内装は、高気密高断熱仕様となっており、断念材で温かさを保ち室内を快適に保ちます。

注目すべきは、トイレです。
バイオトイレが使われていて、水を使うことなく自然の力でトイレットペーパーに至るまで処理することができるのです。

このように外部のインフラを必要とせず、インフラゼロハウスの中でインフラが完結しているということが、この家の大きな特徴です。

カーボンゼロハウスの利便性

インフラゼロハウスは、インフラやカーボン、リビングコスト、災害リスクの4つのゼロを目指して開発されました。

現在の段階でインフラゼロの家は、別荘や宿泊施設としてのニーズを見込んでいます。
インフラゼロの家の販売価格は、まだ決まっていません。

通常のトレーラーハウスよりは高額になるでしょうが、設置する場所にインフラを整備する必要がないことを考えた場合、非常に低コストであるといえる価格になるでしょう。

また、分類としては「トレーラーハウス」となるため、建築物としての制限を受けないことも大きなメリットです。
そのため用途地域や地目、接道などの理由で制限を受けることはありません。

このような特性により、今まで活用できなかった山奥や海沿いの土地に別荘や宿泊施設として設置することができます。

また、災害対策としても心強い働きをすることも期待されています。

普段は別荘や宿泊施設として利用していても、どこかで大規模な災害が起こった場合、仮設住宅として利用することも可能だからです。

目標は住宅のライフサイクルカーボンマイナス化

インフラゼロハウス開発のスタートは、2023年に立ち上げた「ゼロ・プロジェクト」です。

このプロジェクトでは、「インフラゼロでも暮らせる家」の実用化だけではなく、それによって蓄積された知見を活かして、住宅のライフサイクルカーボンマイナス化を進めていくことを目指しています。

ライフサイクルカーボンマイナス化とは、建設時、運用時、廃棄時においてなるべく二酸化炭素の排出量を削減する取り組みに加えて、さらに太陽光発電などを利用することで、住宅建設時の二酸化炭素排出量を含め、ライフサイクルを通じて二酸化炭素の収支をマイナスにする住宅のことを言います。

無印良品では、2011年に室温維持に必要なエネルギー量を計算して、消費電力や節約効果を見える化した温熱シミュレーションの全棟実施や、環境に配慮した高性能な住宅の実現のためにトリプル断熱とトリプルガラスサッシの標準仕様化を行ってきました。

ここで紹介しているインフラゼロハウスは、これらの続く施策となります。

そして、千葉県房総市の廃校を活用した複合施設「シラハマ校舎」に、インフラゼロハウスを設置し、試泊もできるようにしました。

この試泊を通じて、住み心地や試用・設備に関する課題や要望を洗い出し、2025年の実用化に向けてさらに改善を行っています。

住むことで二酸化炭素を削減することを目指して

インフラゼロハウスは、インフラが整備されていない場所であっても自前でそれらを賄うことができる「トレーラーハウス」であり、環境にかける負荷が非常に少ないものであるといえるでしょう。

しかし、インフラゼロハウスを作った時点で無印良品の挑戦は終わりません。

インフラゼロハウスの開発で培ったノウハウを利用して、「住むことで二酸化炭素排出量を削減する」ライフサイクルカーボンマイナス住宅の開発も視野に入れています。

このような住宅が一般的になれば、多くの人が日常生活の中で二酸化炭素排出量の削減のために積み重ねている努力による削減量を、はるかに上回る量の二酸化炭素を削減できるようになります。

そして、そのような未来はすぐそこに来ているといえるでしょう。

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