日本の国土の67%を占める森林。しかし、その多くが手入れ不足や林業衰退で危機に瀕しています。森林は、SDGs達成や企業価値向上のカギとなる貴重な資源です。
この記事では、国産木材活用や企業事例を通じて、個人や企業がどのように森林保護に貢献できるかを具体的に解説します。環境保護がビジネスの未来を変える、その可能性に触れてみませんか。
日本の国土(こくど)の67%が森林!
日本は国土の67%が森林で覆われています。緑豊かな国だと感じるかもしれませんが、その多くは保護や管理が行き届いていません。
戦後に植林されたスギやヒノキの人工林は伐採されないまま成長し、過剰に密集することで土壌流出や生態系の乱れが発生しています。また、林業の人口減少や高齢化などにより、森林の手入れが不足しているのも問題です。
このような背景から、国内の森林を保護する取り組みが必要とされているのです。
参照:農林水産省|https://www.maff.go.jp/j/heya/kodomo_sodan/0105/19.html
参照:林野庁|都道府県別森林率・人工林率(令和4年3月31日現在)|https://www.rinya.maff.go.jp/j/keikaku/genkyou/r4/1.html
なぜ、日本の森林を守る必要があるのか
日本の森林は二酸化炭素を吸収し、地球温暖化の抑制に貢献するだけでなく、生物多様性を支え、水資源を保護する重要な役割を担っています。SDGs(持続可能な開発目標)では、目標15「陸の豊かさも守ろう」を掲げており、森林保護はこの目標の達成に欠かせない要素です。
日本の森林を持続的に管理することは、気候変動の緩和、自然環境の保護、そして持続可能な社会の実現に寄与します。森林資源を活用しつつ、長期的に守っていく取り組みが今まさに求められているのです。
日本の森林保護のためにできること
森林を保護するためには、企業と消費者の協力が不可欠です。ここでは具体的な取り組みを紹介します。
木材を使った商品の開発・購入
国産木材を利用した商品開発は、持続可能な森林管理の一環として非常に有効です。日本の木材資源を利用することで、木材の輸入に伴う環境負荷を削減できるほか、林業を支える地域経済にも貢献できます。
また、製品が再利用や再生可能な素材で作られていれば、消費者はその製品を長く使い続けることで森林保護も期待できます。これらは、SDGsの目標「12.つくる責任つかう責任」にも繋がるでしょう。
エコパッケージの導入
企業が製品パッケージにエコ素材を採用することで、環境負荷を低減することが可能です。エコパッケージとは、プラスチックフリーで、FSC認証(森林管理協議会)の木材を使用したパッケージや、リサイクル可能な素材で作られたものなどを意味します。
環境への負担が少ないエコパッケージの導入は、森林保護だけでなく消費者に環境意識を促す効果もあります。
木造の普及
企業が建物の構造やインテリアに木材を使用することで、持続可能な資源利用を促進できます。特に、間伐材(間引かれた木材)を活用することにより、過密な森林の健康状態が改善され、健全な成長環境が整います。
木造建築は、二酸化炭素の吸収や湿度調整にも優れており、環境にやさしい建築方式です。
植林活動や保護活動への参加
企業や地域団体が協力して植林活動を行うことで、地域の森林再生が促進されます。
また、企業はCSR活動の一環として従業員参加型の森林保護プロジェクトを実施することで、森林への理解と貢献意識を広めることが可能です。
森林保護に繋がる企業事例8選
ここでは、日本の森林保護に積極的に取り組んでいる企業の具体的な事例を紹介します。
無印良品「木のブロック・もくロック」
無印良品は、山形産の木材を使った木のブロックを開発しました。精密機器工場の技術を駆使した結果、ブロック遊びをしながら木のぬくもりに触れられることを可能にしたのです。
国産の木材から生まれた玩具は、子どもの木育にも繋がるといえます。
トヨタ「間伐材モビリティ」
トヨタ自動車株式会社は、多様な恵みをもたらす森林生態系を守るため「トヨタ三重宮川山林」の間伐材を活かして使うプロジェクト「はじめてのとよた」を始動。子どものものづくりの好奇心を刺激しながら、成長に合わせて形を変えたり、使わなくなったら室内インテリアとして思い出を飾ることを想定した「間伐材モビリティ」の開発を開始しました。
間伐材を使うことで、山の手入れが進まない課題の解決に繋がると評価できるでしょう。
参照: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000046.000104325.html
こもれ陽「ブックカバー」
国産材から布を作る「木糸」という技術を活用したブックカバーを開発しました。優しい生成り色の見た目で、自然の温もりが感じられるアイテムです。
それぞれに「りす」「ふくろう」「さかな」「てんとう虫」がプリントされていて、大人から子どもまで使いやすいデザインになっています。
参照: https://komore-bi.shop-pro.jp/?pid=172268770
コクヨ「間伐材ノート(mori-no-oto)」
間伐材のパルプと、古紙のパルプを使用したノートを開発しました。環境に配慮しているだけではなく、機能性も高いアイテムです。
間伐材を有効利用することは、森林保護や森林の育成にも繋がります。
参照: https://www.zenmori.org/kanbatsu/products/101_index_detail.php
もくわく
「もくわく」は、未来を守るライフスタイルを提案する天然木の家具メーカーです。日本の木を使った収納棚やカウンター、学習机やワークスペースなどを展開しています。
どんな暮らしにもフィットするシンプルなデザインで、一生付き合える家具づくりを目指しています。アイテム一つひとつは、各産地で職人の手により丁寧に作られているのも魅力です。家具の使い捨てをしない設計は、循環型社会の形成にも寄与しているともいえるでしょう。
参照:https://mokuwaku.jp/about/concept/
野村不動産「共用木造棟」
野村不動産は、無機質なコンクリート造の分譲マンションに、国産木材を活用した共用棟を配置することで、森林サイクルの促進に貢献しています。
分譲集合住宅において国産木材を活用したり、中庭につくったりすることで、自然の豊かさを感じられる空間を提供していると高く評価されています。コストと心地よさを両立した事例といえるでしょう。
参照: https://www.g-mark.org/gallery/winners/8772
monacca「Roots」
monaccaは、国産杉の間伐材を使った世界で唯一の成形デザインによる木製品ブランドです。都心に住みながらも、木の持つ質感や自然の豊かさを感じられることを重視しながら、高知県馬路村にある小さな林業会社「株式会社エコアス馬路村」と、プロダクトデザイナー・島村卓実氏のデザインがタッグを組んだことで生まれました。
生産は日本製にこだわっていて、原木丸太の選定、木材のスライス、三次元成型、表面研磨仕上げ、塗装、縫製、最終チェックまでの全工程を職人が担当しています。木は自然の産物で、木目や性質は一つひとつ異なるため、熟練の技術が欠かせません。
森林保護と地域の活性化を同時に実現した事例といえるでしょう。
山本木工所「木らり 手洗いボウル」
岐阜県多治見市にある山本木工所は、オーダーメイド家具や木製品の制作に携わっています。
「木らり 手洗いボウル」はひのきと液体ガラスをかけ合わせたアイテムで、「ウッドデザイン賞2024」を受賞しました。環境問題への寄与、そして高いデザイン性と機能性を兼ね備えた事例といえます。
まとめ
日本の豊かな森林は、私たちの生活や地球環境にとって欠かせない存在です。国産木材の利用やエコパッケージの採用、植林活動への参加など、私たちには森林保護に貢献できるさまざまな方法があります。企業や個人が持続可能な選択をすることで、森林の資源を守り、SDGs目標である「陸の豊かさを守ろう」の達成にも近づけるのです。
今回ご紹介した無印良品やトヨタ、コクヨなどの企業事例からもわかるように、森林保護は単なる環境保護活動にとどまらず、地域社会や産業の活性化にも繋がります。国産木材や間伐材を活用した製品は、私たち消費者が身近に取り入れられる実践的な選択肢です。
日々の生活やビジネスでの選択が、環境にどのような影響を与えるかを意識しながら、持続可能な取り組みに参加することで、次世代に美しい日本の森を引き継いでいきましょう。