2015年9月の国連サミットで持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)が採択されて以降、環境問題や飢餓などに対する注目度は格段に上がりました。
SDGsを達成するための製品、サービス、取り組みは多岐にわたりますが、今回は「ファインバブル」という小さな泡の力をご紹介します。

ファインバブルとは

近年、テレビや雑誌などのメディアでもファインバブルと言う言葉を耳にすることが増えてきましたが、ファインバブルの定義はあまり知られていません。実はファインバブルは国際的な定義が決められており、2種類の泡から構成されています。(図1)

ファインバブル:直径100μm未満の小さい泡。マイクロバブルとウルトラファインバブルの2種類がある。
マイクロバブル:1μm以上100μm未満の泡
ウルトラファインバブル:1μm以上100μm未満の泡

今でもナノバブルという言葉が使われることがありますが、正式な呼び方ではありません。


(図1)ファインブルの定義と特徴
出典:一般社団法人ファインバブル産業会「ファインバブルとは? ~定義・特徴~」

泡といえば、炭酸飲料の泡、洗剤の泡、水槽のエアレーションの泡など私達の生活では身近な存在です。その泡の中でも、ファインバブルには以下のようなユニークな特徴があります

マイクロバブル

  • マイクロバブルが水中に存在すると、水が白く濁ったように見える。
  • 非常にゆっくり上昇し、水中で消える。

ウルトラファインバブル

  • サイズが小さいため肉眼で見えない。
  • 水中に長期間残存する。

このファインバブルの特徴が、面白い効果を生み出してくれるのです。

小さな泡で環境負荷を軽減

2015年に国連サミットでSDGsが採択されて以降、貧困や環境問題に関する注目度は飛躍的に高くなりました。日本でも様々な企業が自社のサービスや製品がSDGsに貢献出来ることをアピールしています。
その中で注目したいのが、今回紹介するファインバブルです。
前述の通りファインバブルにはミリサイズやセンチサイズの大きな泡にはない特徴があり、その特徴を生かして様々な効果を得ることができます。(図2)


(図2)ファインバブルの代表的な効果
出典:九州経済産業局「ファインバブル活用事例集」(2018)

マイクロバブルは、泡の中の気体を液体中に短期間で溶かすことができ、ゆっくりと浮上することで気体の溶解を促進できます。また、マイクロバブルが壊れるときに発生する衝撃波を利用することも可能です。

ウルトラファインバブルはマイクロバブルよりさらにサイズが小さいため、植物の根や種子からも吸収されやすく生理活性効果が報告されています。それに加え、長期間水中に存在できるので、ガスの貯蔵作用を利用することも可能です。

ファインバブル(マイクロバブルとウルトラファインバブル)は、表面がマイナスに帯電する性質があり、プラスに帯電した汚れを吸着する効果があります

これらの効果を組み合わせた活用方法は日々研究が進められており、以下のようにすでに販売されている商品もあります。

サイエンス

ミラブルplus(ウルトラファインバブル生成シャワーヘッド)

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シャワーヘッドでウルトラファインバブルを生成し、バルブが毛穴やシワの間に入り込み汚れを吸着することで洗浄効果を高めています。
シャワーを当てるだけで汚れが落ちるCMは視聴者に大きなインパクトを与えました。

出典:株式会社 サイエンス「ミラブルplus」

東芝ライフスタイル株式会社

ザブーン洗浄(ドラム式洗濯乾燥機)

東芝 洗濯機 7.0kg ウルトラファインバブル洗浄 インバーター制御 AW-7DH1-W ピュアホワイト

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ウルトラファインバブルと洗剤を混ぜ合わせることで、繊維の奥まで浸透し洗浄効果を高めています。
さらに、マイクロバブルを併用することで、汚れの再付着も防止できるすぐれものです。

出典:東芝ライフスタイル株式会社「抗菌ウルトラファインバブル洗浄EX」

この他、工業分野や農業、水産分野など幅広くファインバブルの技術が取り入れられており、部品洗浄や植物の成長促進、水質浄化などに活用されています。

これらファインバブル活用事例の特徴は、省エネや洗剤使用量の削減などを通して環境負荷を軽減できるという点です。

ファインバブルのこれから

泡の研究は古来より世界各国で行われてきましたが、ファインバブルは特に日本で盛んに研究されており、日本はファインバブル技術の先進国と言えます。現在でも様々な研究が行われており、空気以外のガスを利用した事例もたくさんあります。(図3)

参考

(図3)ファインバブルの活用可能分野および活用例
出典:九州経済産業局「ファインバブル活用事例集」(2018)

例えば、温室効果ガスの一つである二酸化炭素を地下に貯留する技術にもファインバブルの利用が検討されています。温室効果ガスを有効利用できれば、温暖化対策にもつながります。

窒素は不活性ガスであるため、昔から食品の酸化防止に使われていました。この窒素をファインバブル化した海水に鮮魚を浸漬させると、長期間鮮度を保つことができます
この技術を応用すれば、これまで届けることができなかった場所まで食品を届けることができるようになり、飢餓問題の解決にも貢献できるかもしれません。

ファインバブル技術は水と空気というシンプルなもので構成されており、環境負荷を少なくしつつ特徴的な機能を持たせることができます。
また、使用する液体やガスの種類を組み合わせることで様々な分野に応用可能であるため、持続可能な開発目標を達成するために非常に有効な技術であると言えます。
たった1ミリにも満たない小さな泡が、私達の生活をより良くしてくれる可能性を秘めているのです。

出典

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