強靭(レジリエント)なインフラとは?~産業と技術革新の基盤を作ろう~

SDGsの9番目の目標である「産業と技術革新の基盤を作ろう」を実現するために欠かすことができないのが、強靭なインフラの整備です。
この産業と技術革新の基盤を作ろうという目標は、強靭なインフラの構築・包括的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図るというテーマのもと、8つのターゲットで構成されています。

ここでは、産業と技術革新の基盤を作ろうという目標を達成するために欠かすことができない強靭なインフラとは何かということと、強靭なインフラを整備することによって得られるメリットなどについて解説していきます。

強靭(レジリエント)なインフラとは

強靭なインフラとは、災害などの原因で破損しにくい、または破損しても復旧しやすいインフラ整備のことを言います。

このような強靭なインフラ設備は、多くの開発途上国で整備されておらず、普及のために先進国がサポートする必要があります。
開発途上国では情報通信や技術といったインフラだけではなく、道路や電力、水や衛生設備など生活に直結したインフラが整備されていない場所も少なくありません。

このような場所に強靭なインフラを整備することで、経済対策や気候変動対策を実現することができます。

開発途上国のインフラの現在

開発途上国のインフラ整備は、現在どのような状況にあるのでしょうか。
ここでは、インフラの種類別に現在の普及状況を解説していきます。

電力供給

2017年時点でのIEAのデータによると、世界の未電化人口は約10億人といわれています。
この未電化人口のうち60%をサハラ以南のアフリカが、17%をインドが占めており、そのあとはバングラデシュ、インドネシア、ミャンマーのアジア地域が続きます。

このように、未電化人口の9割以上を開発途上国が占めています。
電力が自由に使えない地域では、炊事や暖房に薪や藁、家畜の糞などを利用しており、燃料を集める労力や煙が充満する室内など、さまざまな悪影響を及ぼしています。

衛生施設

衛生施設とは主に水に関するものをいい、大規模なものでは浄水場など、身近なものでは水道やトイレなどのことを言います。
このような衛生施設を利用できていない人々は、23億人に及びます。

浄水場がなければ安全な水を使うことができず、また衛生的なトイレを使用できないあるいはトイレ自体がない場合には、疫病のまん延などが起こりやすくなります。
トイレ自体がない場合には野外で排泄を行うことになりますが、この場合には衛生的な問題以外にも女性が性的な被害に遭いやすくなるという問題もあります。

水資源

2019年の時点で、世界の人口のうち約半数が水道を使えるようになったと言われていますが、いまだに6億6,300万人もの人が清潔な水を確保できない状態で生活しています。
その半数近くが、サハラ以南のアフリカに集中しています。
清潔な水を飲み水として使うことができないと、下痢症などの理由で命を落としてしまうこともあります。

水資源に関わるインフラが整備されておらず、井戸などの貯水施設そのものがない場合には、川や池などに時には何時間もかけて水を汲みに行く必要があります。

信頼できる電話サービス

電話サービスには、インターネットサービスが含まれます。

現代においては、インターネットはなくてはならないインフラ設備ですが、2021年のITUの報告よると、約29億人はいまだにインターネットを利用したことが無いことが明らかになりました。
そのうち、96%は開発途上国の人々であると言われています。

コロナ禍により在宅勤務やオンライン授業などを行う人が多くなったことから、インターネットの需要はさらに増加しました。
しかし、このようなインターネット環境が整っていない地域もまだまだあり、そのような地域との格差の広がりが問題になってきています。

強靭なインフラが整備されることによって得られるメリット

強靭なインフラを整備することによって得られるメリットには、そのようなものがあるのでしょうか。
ここでは、そのメリットについて解説していきます

産業・経済を発展させることができる

強靭なインフラが整備されていない地域の多くは開発途上国ですが、そのような地域の産業はほとんどが一次産業です。
強靭なインフラが整備され、水や電気が安定的に供給されるようになれば一次産業で得た農作物などを加工して新たな市場を開拓することができ、産業や経済を発展させることができるようになります。

人々の生活水準の向上・目標8働きがいも経済成長もの実現

インフラが整備されることによって、飲み水や電気が通っていないことへの心配をする必要がなくなると、日々の生活に理想を持つことができるようになり、その理想の実現に向けて働くことへの意欲が湧いてきます。
このように、人々の中に働くことに意欲が湧くことによって企業の生産性が向上し、さらなる雇用が生まれます。

また、生産性が向上した企業で働く人たちは安定した収入を得ることができるようになることができます。
このようなことから、強靭なインフラを整備することによりSDGsの目標8「働きがいも経済成長も」を実現することができます。

生産性の向上により生活が豊かになる・目標4質の高い教育をみんなにの実現

大人が生産性が向上した企業で働き安定した収入を得られるようになると、貧困から抜け出すことができるようになり、子どもたちが水汲みなどの重労働から解放され、学校に通い教育を受けることができるようになります。

このようにして、SDGsの目標4「質の高い教育をみんなに」を実現することができます。

強靭なインフラ整備のための取り組み

ここでは、強靭なインフラ整備のための取り組みを紹介していきます。

文部科学省経済研究開発局エネルギー課の取り組み

文部科学省経済研究開発局エネルギー課では、「窒化ガリウム」という半導体の研究を行っています。
この窒化ガリウムは、一般的な半導体材料と比較してエネルギー変換効率は非常に高いため、省エネ効果が期待できます。
窒化ガリウムを半導体として利用することで、照明以外の分野でも省エネ化を進めることができるようになります。

東京大学生産技術研究所都市基盤安全工学研究センターの取り組み

東京大学生産技術研究所都市基盤安全工学研究センターでは、「ミャンマーの第害対応力強化システムと産学官プラットフォームの構築」というプロジェクトに取り組んでいます。

ミャンマーでは大規模な開発が進行しつつありますが、都市人口の増加や気候変動による災害が問題になっています。
ミャンマーでの再開発に伴う地形や地盤等をモニタリングし、将来の災害脆弱性を評価するシステムの開発を行っています。

三菱電機株式会社の取り組み

三菱電機株式会社が提案するFA統合ソリューション「e-F@ctory」は、生産現場からリアルタイムに収集した各種データを活用の目的にあわせて一次処理し、現場で活用できるデータは即座に生産現場へフィードバックし、上位の情報活用に必要なデータはITシステムに供給することで、全体として最適な「モノづくり」の環境を提供しています。

このシステムを利用し継続的な改善活動を行うことで、省エネにも貢献することができます。

まとめ

ここまで、強靭なインフラを整備することによって得られるメリットや、取り組み事例について解説してきました。

強靭なインフラが整備され産業や経済が発展することにより、SDGsのその他を達成することも可能になることがお分かりいただけたと思います。

強靭なインフラを整備するためには、産学官がそれぞれにまた時には協力し合ってその目標に向けて研究を重ねています。
強靭なインフラにより産業や生産性が向上することで、人々の暮らしはより良いものへとなっていくでしょう。

日本の産業と技術革新の基盤を作ろう

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