皆さんは海に行ったとき、波打ち際に打ち上げられたプラスチックのごみを見たことはありませんか?
今このプラスチックごみが、海の環境や生態系、沿岸に暮らす人々の生活に大きな影響を与えています。
安価に製造することができ、さまざまなものを入れるために利用されているプラスチックの生産量は1950年代比較すると、約200倍に増えています。
そしてプラスチックは、紙袋や木でできた割りばしなどのように自然に分解されることはありません。正しい方法で捨てられなかったプラスチックごみが最後に行きつく場所が海で、プラスチックごみはその海の環境を壊してしまっているのです。
このプラスチックごみは、具体的にどのような悪影響を海の環境に与えるのでしょうか。
SDGsの14番目の目標である「豊かな海を守ろう」を実現するために、プラスチックごみを削減する方法とともに解説していきます。
プラスチックごみは海にどのような悪影響を与える?
正しく捨てられなかったプラスチックごみが最後に行きつくのが海であり、1年間に海に流れ込むプラスチックごみの量は約800万トンといわれています。
この数字は年々増加しており、2050年には海に漂うプラスチックごみの量は魚の量を上回ってしまうと言われています。
さらに、現在海に漂っているプラスチックごみは1億5000万トンに及びます。
海に流れ着いたプラスチックごみは、日光に含まれる紫外線や波の影響を受けて、マイクロプラスチックごみと呼ばれる5ミリ以下のごみになってしまいます。
また、マイクロプラスチックごみには有害な添加物が使用されており、さらに石油から作られているため汚染物質を吸収しやすいという特徴も持っています。
このようにして小さな破片となってしまったマイクロプラスチックごみを、海鳥や魚、貝などの海洋生物が餌と間違って食べてしまい、喉に詰まらせたり消化器官を傷つけられたりして栄養失調になったり、死んでしまったりしてしまいます。
また、非常に小さなマイクロプラスチックごみをプランクトンが体内に取り込んでしまい、体内に蓄積していきます。
プランクトンに蓄積されたマイクロプラスチックごみは、食物連鎖を通じて大きな海洋生物に取り込まれ、最終的には食卓に上る魚介類にも蓄積されてしまいます。
マイクロプラスチックごみによって海の環境が壊されてしまうだけではなく、食卓の安全までも脅かされてしまうのです。
プラスチックごみを減らすことにより得ることができるメリット
プラスチックごみは、個人や企業の努力によって減らすことができます。
プラスチックごみを減らすことで得られるメリットには、プラスチックごみを減らすと同時に地球温暖化防止や資源の枯渇を防ぐことができるというものがあります。
また、企業がプラスチックごみの削減に取り組むことで、その企業のイメージアップを行うことができます。
近年ではスターバックスコーヒーがプラスチックのストローの使用を取りやめ、紙のストローの利用を始めたことはご存じの方も多いと思います。
このように環境にやさしい素材を使うことは、プラスチック製品を利用することよりコストがかかる場合もありますが、それ以上のPR効果が期待できるケースもあります。
また、コロナ禍の影響から飲食店がオードブルなどの飲食店販売を始めるケースが増えてきていますが、この時に利用している容器がクラフト紙などの天然素材を用いていると、おしゃれな盛り付けと相まって「映え(ばえ)」効果を生み出し、SNSで拡散され高い宣伝効果を挙げるケースもあります。
このように、プラスチックの利用を控えたり天然素材に置き換えたりといった方法をとることで、環境を守る効果以外にもさまざまなメリットを得ることができます。
プラスチックの使用量削減のために家庭でできること
では家庭でプラスチックごみを減らすためには、どのような方法を取れば良いのでしょうか。
ここでは、家庭でできるプラスチックごみ削減のための方法について解説していきます。
マイバッグの利用
2020年7月1日より、レジ袋の有料化が始まりました。
これを機に、マイバックを使い始めた方も多いと思います。
レジ袋有料化以前の日本では、年間約300億枚のレジ袋が消費されていましたが、有料化によりかなりの量のレジ袋の消費量を抑えることができると考えられます。
マイバックを使うことで自然環境を守ることができるようになるとともに、節約を行うこともできます。
マイ箸・マイボトルの利用
飲食店の中には、食事を提供する際にプラスチック製の箸を提供している店舗もあります。
マイ箸を利用する人が増えることで、このプラスチック製の箸の生産量自体を抑えることができ、プラスチックごみを減らすことができます。
また、外出先でお茶などを飲む場合にはペットボトル飲料を購入する方も多いと思いますが、購入して自宅にストックしてある紙パックを使用した飲み物や自分で淹れたお茶やコーヒーなどをマイボトルに入れて持ち歩くことで、ペットボトルの消費を控えることができるため、この方法でもプラスチックごみを減らすことができます。
バイオマスプラスチックの利用
人は生きていく中でプラスチックを全く使わないで生きていくことは、現在のところ非常に難しいと言わざるを得ないでしょう。
どうしてもプラスチックを利用する必要性がある場合には、バイオマスプラスチックを利用することをおすすめします。
バイオマスプラスチックとは、再生可能な生物由来の資源を原料としたプラスチックのことを言い、プラスチックという名前で呼ばれますが実際には原料にサトウキビやトウモロコシが利用されているため、石油でできたプラスチックのように資源が枯渇してしまうことはありません。
また、バイオマスプラスチックの中には生分解性プラスチックというものもあり、使用後には一定の条件下で最終的には水と二酸化炭素に分解され、自然に還るプラスチックもあります。
このようなプラスチックでできたプラスチック製品を利用することにより、海に流れ込むプラスチックごみを減少させることができます。
詰め替えができる製品を選ぶ
近年ではシャンプーや洗剤、入浴剤などの商品の多くが、「詰め替え」ができるようになってきています。
この詰め替え用の商品が入っているパッケージは、使用するためのパッケージよりも少ない量のプラスチックを使用しているため、このような「詰め替え」の商品を利用することで、プラスチックの使用量を減らすことができます。
バイオマス原料を使用したパッケージの製品を選ぶ
菓子などはプラスチックの袋に入っていることがほとんどですが、ネスレは2019年9月からネスレの製品であるキットカットの包装紙を紙の包装に移行しました。
このような動きは、今後食品業界だけではなくさまざまな業界に広がりを見せていくと考えられるため、プラスチックで包装された商品も減少していくものと考えられます。
減らせないプラスチックは3Rで対応
3RとはReduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル)のことです。
どうしても減らすことができないプラスチック製品については、この3RのうちReuse(リユース)とRecycle(リサイクル)を行うことで、ごみとなるプラスチックを減らすことができます。
まとめ
ここまで、プラスチックごみが海の環境に大きな悪影響を与えていることと、プラスチックごみを減らすためにできることについて解説してきました。
プラスチックごみの削減は、SDGsの14番目の目標である「豊かな海を守ろう」を達成するために、急いで取り掛かるべき事柄であることがお分かりいただけたと思います。
プラスチックごみを削減するためには、さまざまな方法があるためまずは実行しやすいことからひとつひとつ始めてみてはいかがでしょうか。