廃プラスチックの輸出入の規制で海の豊かさを守ろう

海洋汚染の原因として問題視されているプラスチックごみですが、このプラスチックごみが適正な方法で処理されていれば、プラスチックごみの海洋流出量も減少し海洋汚染にブレーキがかかるでしょう。

しかし、現状ではプラスチックごみの処理方法には問題となる点があり、それが海洋汚染へとつながっています。
では、プラスチックごみの処分法にはどのようなものがあり、どのような問題があるのでしょうか。

ここでは、プラスチックごみの処分方法について解説していきます。

一般系廃プラスチックと産業系プラスチックの違い

廃プラスチックには、一般系廃プラスチックと産業系廃プラスチックの二つの種類があります。

一般系廃プラスチックとは家庭や店舗、事務所からごみとして出るペットボトルやビニール袋、発泡スチロール、その他のプラスチック類のことを言い、その中では容器包装プラスチックが約6割を占めています。
これらを一般系廃プラスチックといい、資源としてリサイクルされるもの、可燃ごみとして焼却されるもの、不燃ごみとして処分されるものの3つに大別されます。

一方の産業系プラスチックとは、プラスチック製品の製造や加工、流通過程で出るスクラップや包装資材のことを言います。
これらの産業系廃プラスチックは単純焼却されるものや埋め立てなどの処理をされるものもありますが、リサイクルなどの方法で有効活用される割合が徐々に多くなってきています。

廃プラスチックの正しい処分方法

廃プラスチックの正しい処分方法には、どのような方法があるのでしょうか。ここでは、廃プラスチックの正しい処分方法について解説していきます。

埋め立て

2018年に埋め立て処分をされた廃プラスチックは、一般系廃プラスチックの合計排出量約429万トンのうち、約16%になります。

しかし、この埋め立てという処分方法で処分されている廃プラスチックの中には、リサイクルできる廃プラスチックも含まれているため資源を無駄にしていることになり、また廃プラスチックは粉砕した後に圧縮を行っても容量が大きく1トン当たり1.3立方メートルの体積となります。
そのため、埋め立て空間を圧迫してしまいます。

焼却

焼却処分とは、文字通り廃プラスチックを焼却炉で焼却処分を行うことを言います。

廃プラスチックごみを焼却処分することは、以前は焼却炉を傷めたり、ダイオキシンなどの発生が問題となったりしていましたが、現在では焼却炉の性能が向上したため、このような心配はなくなってきています。

しかし、この焼却という方法も資源として利用可能な廃プラスチックを無駄にしていることになります。

リサイクル

プラスチックごみのリサイクル方法には、3つの方法があります。

まず1つ目はマテリアルリサイクルです。
マテリアルリサイクルとは、廃プラスチックの材質を活かして、他の製品や別のプラスチック材料として活用する方法を言います。
マテリアルリサイクルでは、廃プラスチックが包装用トレイや衣類、コンテナ、ベンチなどを作る材料として活用されています。

2つ目のリサイクル方法は、ケミカルリサイクルです。
ケミカルリサイクルとは、廃プラスチックを科学的に処理し化学原料として再生する方法のことを言います。
高炉の還元剤や熱源として利用されたり、ガス処理を行って水素やメタノールなどの基礎科学品を作ったりするなど、さまざまな方法で活用されています。

3つ目の方法は、サーマルリサイクルです。
サーマルリサイクルとは、廃プラスチックの熱エネルギー源としての性質に注目し、熱源として利用する方法のことを言います。
廃プラスチックを燃焼させることにより得られる熱エネルギーを利用して、発電や温水利用に活用する以外にも、固形燃料に加工するなど数多くの活用手段があります。

廃プラスチックの輸出入で起る問題

廃プラスチックは、輸出で処分を行ったり輸入し再利用したりすることもあります。
しかし、この廃プラスチックの輸出入にはさまざまな問題があります。

ここでは、廃プラスチックの輸出入によって起こる問題について解説していきます。

輸出で起る問題

日本の廃プラスチックは品質が良いことから、少し前までは中国などアジアの国々を中心に輸出されてきました。

その廃プラスチックを再利用してプラスチック製品を製造することも多かったのですが、その際に廃プラスチックの分別が不十分になることもあり、日本に輸入されるプラスチック製品の中には汚れたままの廃プラスチックを利用したものも存在します。

廃プラスチックの洗浄には非常に大きなコストがかかるため、輸出した廃プラスチックが正しくリサイクルされているかという問題に対して輸出国が関与できないという点に問題があります。

輸入で起る問題

輸入した廃プラスチックの中には、汚れたものもあります。

このような汚れた廃プラスチックの分別・洗浄は、ほとんどの場合輸入国の人の手作業で行われてきました。
なぜなら資源にならないような廃プラスチックの選別や、汚れた廃プラスチックを洗浄するという作業は機械で行うことが難しいからです。

このような作業は手作業で行われるため、作業を行う人の健康に被害を及ぼしたり、汚れた廃プラスチックごみを洗浄するために使用した汚水が環境問題を引き起こしたりするといった問題が起きています。

バーゼル条約により廃プラスチックの輸出入が制限される

バーゼル条約(Basel Convention)とは、1989年にスイスのバーゼルで採択された条約で、「有害廃棄物の国境を超える移動およびその処分の規制に関するバーゼル条約」が正式名称です。
この条約は、一定の有害廃棄物の国境を超える移動などの規制についての国際的な枠組みと手続きなどを規制したものです。

バーゼル条約が制定された背景には、1970年代から行われてきた有害物質の国境を越えた移動があります。
1980年代には有害物質が欧米などの先進国からアフリカなどの途上国に輸出され、輸出先の国々で環境問題を引き起こし、これらの廃棄物によって引き起こされた問題の最終的な責任の所在が不明確になるなどの問題が起きていました。

そこで、経済協力機構及び国連環境計画で議論がなされた結果、バーゼル条約が締結されたのです。

日本における今後の廃プラスチックをめぐる課題とは

日本では、バーゼル条約とOECD理事会決定に沿うために、「特定有害廃棄物等の輸出入の規制に関する法律(バーゼル法)」、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)」、さらに「外国為替及び外国貿易法(外為法)」により、廃棄物等の輸出入の規制をはじめました。

しかしバーゼル条約に日本を含む多くの国が締結してとはいえ、途上国ではまだアフリカや東南アジアへの汚染されたプラスチックごみの輸出は続いています。

このような状況を変えていくために、日本は廃プラスチックごみの処理を国内で完結させることができるよう、また資源として有効活用できるよう技術を発展させる必要があります。

まとめ

ここまで廃プラスチックの処分方法と廃プラスチックの輸出入によって起こる問題、バーゼル法と日本が今後廃プラスチックの処分について抱える問題について解説してきました。

廃プラスチックの処分に輸出という方法をとることは、国内の問題になるだけではなく海外の環境や廃プラスチックの分別作業を行う人々の健康被害といった問題にもつながることがお分かりいただけたお思います。

廃プラスチックを正しい方法で処分することで、海に流れ出て汚染の原因となる廃プラスチックを減らすこともできるでしょう。

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