SDGsへの意識が高まる中、サステナブルホテルが注目を集めています。環境に配慮しているからという理由でホテル選びをする人も見られるようになりました。
とはいうものの、「サステナブルホテルとは?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
この記事では、サステブルホテルの意味や、ホテルが抱える課題をSDGsの視点から解説します。さらに、具体的な事例やおすすめのサステブルホテルも紹介しています。
最後まで読めば、新たなホテルとして期待されているサステナブルホテルの魅力が分かるのではないでしょうか。
サステナブルホテルとは
サステナブルホテルとは、環境に配慮したホテルです。最近は、「エコホテル」「SDGsホテル」「エシカルホテル」とも呼ばれることもあります。
ホテルとしてのサービスを通して、社会や環境に関する問題解決に取り組んでいます。
例えば、以下の通りです。
- アメニティをリサイクル素材や紙製のものに変更する
- アメニティを部屋に置かない
- 電力を再生可能エネルギーにする
- 食事メニューで、地産地消に貢献する
このような取組みを通して、利用者の方と一緒に社会貢献に努めているのです。最近では、消費者や企業の環境意識が高まっているため、「環境に配慮しているかどうか」で宿泊利用や事業提供などを判断するケースも増えています。
これからのホテル業界に「サステナブルホテル」は必要不可欠であるといえるのではないでしょうか。
ホテルとSDGs!取り組むべき課題とは?
サステナブルホテルは年々注目を集めています。時代の変化に伴って、ホテルや旅館の意識も大きく変わり始めているのです。
その背景には、ホテルがSDGsに取り組むべき理由がありました。ホテルが取り組むべき課題をSDGsの視点から解説します。
食品ロス削減と「12.つくる責任つかう責任」
ホテルが取り組むべき課題の一つが、食品ロス削減です。食品ロスの発生は二酸化炭素排出量や飢餓人口の増加につながりかねません。
本来食べられるはずの食材を捨てることは多くのホテルで行われており、世界的な問題だと指摘されています。SDGsの17目標では、「12.つくる責任つかう責任」に該当します。
農林水産省と環境省の報告によると、令和2年度の食品ロス量は522万トンでした。前年度の570 万トンに比べると、減少していますが相当な量といえるでしょう。
このうち、ホテル業界も含まれる食品関連事業者から発生する「事業系食品ロス量」は275万トン。一般家庭から発生する食品ロス量は247万トンを上回っています。
ホテルビュッフェは、好きな料理を好きなだけ食べられる魅力があります。しかし、大量の食品ロスが発生するリスクも伴っているのです。
ホテルにとって、食品ロスの削減は避けては通れない課題といえるでしょう。
プラスチック削減と「14.海の豊かさを守ろう」
ホテルに泊まると、多くの部屋にさまざまなアメニティが揃えられています。ホスピタリティとしては素晴らしい反面、プラスチックごみを増やす原因にもなっているのです。
この課題は、SDGsの目標「14.海の豊かさを守ろう」と深く関わっています。なぜなら、プラスチックごみがこのままのペースで廃棄されると、2050年には海中は魚よりもプラスチックの方が多くなると懸念されているからです。
世界では、年間900万〜1400万トンの使用されたペットボトルやビニール袋などのプラスチックごみが、海へ流されています。海の豊かさを守るためにはプラスチック使用の見直しが欠かせません。
ホテル業界にも、プラスチックごみをなるべく出さないサービスの提案や仕組みづくりが求められているといえるでしょう。
電力使用の見直しと「7.エネルギーをみんなに。そしてクリーンに」
電力使用量が多いホテルにも、電力使用の見直しが求められています。これは、SDGsの目標「7.エネルギーをみんなに。そしてクリーンに」へ大きく貢献する課題です。この目標のターゲットの中には以下の内容が記載されています。
・2030年までに、エネルギーをつくる方法のうち、再生可能エネルギーを使う方法の割合を大きく増やす
・2030年までに、今までの倍の速さでエネルギー効率をよくしていく
つまり、ホテルが節電に努めたり、再生可能エネルギーを使用したりすることが欠かせません。
出典:日本ユニセフ協会|7.エネルギーをみんなに。そしてクリーンに
雇用の多様化と「8.働きがいも経済成長も」「5.ジェンダー平等を実現しよう」
最近では、自分らしく働ける社会を目指す動きが強まっています。雇用の多様化はホテル業界も取り組むべき課題の一つです。
- 性別
- 国籍
- 年齢
- 障がいの有無
- LGBTの問題
- 子育て支援
など、あらゆる立場の人が働きやすい環境が求められているといえるでしょう。女性管理職の割合の向上や障害者の積極的な雇用における取組みがホテル業界にも期待されています。
ホテルが取り組むSDGs事例
では、各ホテルはSDGsの目標達成に向けて、どのような取組みを行っているのでしょうか。以下に、SDGsの事例をまとめました。
パークホテル「障害者の社会進出を支援」
パークホテルは、障害があっても自立できる社会の実現を目指し、アート支援を続けています。
「一般社団法人障がい者自立推進機構パラリンアート運営事務局」の協力のもと、アート展示会を実施。世界中の障がいのあるアーティストが芸術的才能を披露できる機会を意図的に設けているのです。
- 持続的にアーティスト活動の場を提供
- 展示作品の販売
- 募金箱の設置
- ホテル館内自動販売機の売り上げの一部を寄付
- パラリンアート世界大会に協力企業として参画
障害の有無を問わず、自分の才能を開花できる未来づくりに貢献しているといえるでしょう。
富士屋ホテル「コルクのアップサイクル」
富士屋ホテルは、環境に配慮した取組みとして、コルクのアップサイクルを実施しています。
コルクアップサイクルとは、レストランや宴会場で消費されたワインなどのコルク栓を収集し、コースターにアップサイクルする活動です。NPO法人を通じて都内の社会福祉法人にて販売を行っています。これら商品の収益の一部は、障がい者の自立支援へ寄付されています。
さらにプラスチックごみの廃棄量を減らすために、すべてのレストランで生分解性のストローと紙おしぼりに変更。さらに、ペットボトルでの仕入れを削減しています。
アップサイクルやアイテムの素材を変更することで、プラスチックやゴミの量を減らすことに成功していました。
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メズム東京「ジェンダー平等のユニフォーム」
メズム東京は、従業員のユニフォームをユニセックスなデザインのものにリニューアルしました。多様化するジェンダーに合わせて、女性・男性スタッフが同じデザインの制服を着用しています。
従来のホテルマンのイメージを一新することで、クルー一人ひとりが年齢・性別・国籍の枠にとらわれず、自分らしさが輝くような職場を実現させたのではないでしょうか。革新的な方法で新しい文化を創出した事例の一つといえます。
帝国ホテル「食品ロス削減」
帝国ホテルは、生ゴミのリサイクル率を2020年度は合計で64.5%まで向上させました。社内で排出されるゴミを細かく分別し、廃棄物の焼却処理で発生する排熱を回収し、エネルギーとしています。
また、料理長が考案したサステナブルソルトは、食品ロス削減に貢献しています。サステナブルソルトとは、じゃがいもやグレープフルーツの皮などを利用して作った塩です。
ただ食品ロスを減らすのではなく、アイディアと発想力で解決するという姿勢は、SDGs事業のロールモデルになるといえるのではないでしょうか。
おすすめのサステナブルホテル4選
続いては、おすすめのサステナブルホテルを紹介します。日本で泊まれる魅力的なホテルを4つに厳選しました。
星野リゾート
星野リゾートは、フードロスの削減、伝統文化や伝統工芸の継承に向けた取り組みなど、さまざまな活動を行っています。
2022年中に歯ブラシを捨てない仕組みを国内51すべての宿泊施設に導入しました。年間100万本以上も廃棄されている使用済み歯ブラシを回収し、リサイクルすることで、歯ブラシに使用されるプラスチックの資源循環を成功させたのです。
さらにプラスチックごみ削減に向けて「ペットボトルフリー」を実施。客室でのペットボトル入りウォーターの提供を廃止し、共有スペースにウォーターサーバーを設置しています。
筆者自身も宿泊した時に利用しましたが、何一つ不便さを感じませんでした。逆に社会貢献していると実感でき、気分も上がりました。
川崎キングスカイフロント東急REIホテル
川崎キングスカイフロント東急REIホテルは、世界初の水素ホテルです。脱炭素社会を目指して、水素発電を継続しています。
- 食品廃棄物由来の電気を使ったレタス栽培
- 食品ロスを再生可能エネルギーに変える「バイオフードリサイクル」の導入
- ホテルから出る食品廃棄物のリサイクル率100%を実現
- 米の籾殻など植物由来の資源を使用したアメニティを導入
- 各フロアにウォーターサーバーを設置
このようにサステナブルなホテルづくりに努めているのです。
出典:川崎キングスカイフロント東急REIホテル|サステナブル
グッドネイチャーホテル京都
グッドネイチャーホテル京都は、「体・心・地域・社会・地球にとって健康的で、しあわせであること」がモットーです。
「使い捨てない社会、循環する社会」を目指し、2022年4月から希望のアメニティの有料販売を開始しました。アメニティの売上は、循環型社会の実現にむけて活用されるそうです。
他にも
- 施設から出る食品廃棄物を堆肥化して活用
- RAUのチョコレートはカカオ豆をコスタリカの農園からフェアトレードで輸入したもの
- カカオの外皮を捨てずに使い切ったカカオティーの開発
- 自然由来100%のオーガニックコスメをホテル客室内に配置
- 京都を中心に農作物や工芸品、加工食品を生産者と連携しながら販売
- バイオプラスチックを使用した洗って繰り返し使用できるカトラリーやお箸などの導入
など、さまざまな取組みを継続的に実施しています。
カミツレの宿 八寿恵荘
日本初のBIO HOTELであるのが「カミツレの宿 八寿恵荘」です。BIO HOTELとは、環境や宿泊者の健康、持続可能性などに意識を向けるホテルを意味します。厳格な基準のうち、3つ以上を満たしていなければ認証されません。
- 自社農園や農家さんからの無農薬野菜を中心とした素材を使った自然に寄り添った食事
- 動物性食材を使わないメニュー
- 内装の木材はすべて県内産の無垢材(自然素材)
- オーガニックコットンやリネン、羽毛など自然素材だけで作られた寝具を使用
- クリーニングは植物由来の洗剤のみを使用する専用のランドリーで行う
- CO2の排出を実質的に増やさない木質チップのボイラーを導入
以上のように、環境や宿泊者にとってやさしい経営をしているホテルといえます。
まとめ
サステナブルホテルとは、環境に配慮したホテル。お客様へのサービスを通して、社会や環境に関する問題解決に取り組んでいます。
ただプラスチックごみや食品ロスを減らすのではなく、できるだけ発生しないように仕組みづくりを行っているホテルが多い印象を受けました。アイディアをプラスすることで、付加価値のある取組みが生まれるのではないでしょうか。
環境や人の健康を一番に考えながらサービスを提供するサステナブルホテル、ぜひ一度泊まってみてはいかがでしょうか。何か新しい発見があるかもしれません。