日本でも「食品ロスをなくそう」という動きが活発になってきました。削減を呼びかけるポスターや表示をみたことがある方も多いのではないでしょうか。
食品ロスを減らす解決策の一つに「規格外野菜を減らすこと」が挙げられます。売れ残りや食べ残しのイメージが強いですが、消費者に届く前に多くの食材が捨てられている現状があるのです。
この記事では、規格外野菜でSDGsに貢献できる理由をくわしく解説します。さらに規格外野菜を活用した企業事例もまとめました。ぜひ最後までお読みください。
規格外野菜とは、鮮度や味に問題はないにもかかわらず、捨てられてしまう野菜を意味します。定められた基準より大きかったり、傷があったりなど理由はさまざまです。
一般的にレトルト食品やカット野菜に使用されることもあります。けれども、加工や出荷に手間がかかるため、規格外野菜はこれまで価値がないものとされてきました。
どうして規格外野菜でSDGsに貢献できるのか?
市場価値がないとされてきた規格外野菜。けれども、持続可能な社会を実現させるために、その価値を見直すべきとされています。なぜなら規格外野菜を減らすことは、環境や社会におけるメリットが多いからです。それはSDGsへの貢献につながるといえるでしょう。
目標2「飢餓をゼロに」に貢献
これまで捨てられてきた規格外野菜を食材として活用することで、国内における食料自給率をあげることにつながります。
世界と比べると「日本は飢餓とは無縁だろう」と感じる方もいるかもしれません。けれども、2050年になると安定した食料確保が難しくなる可能性があると懸念されています。
その理由の一つは、爆発的な人口増加によって食料需要も増えるからです。世界人口が97億人を突破するといわれる2050年。2010年と比較すると、約1.7倍の食料が必要になると推定されています。
日本は食料の7割を輸入に頼っているのが現状です。つまり、国内生産の割合を上げなければ、持続可能な食料生産が成り立たちません。未来の食を守るために、これまでムダにしてきた規格外野菜を生かすことが求められているのです。
目標12「つくる責任 つかう責任」
目標12を達成するためには、食品ロスの削減が欠かせません。2030年までに世界全体の食品ロスを半分にすることが掲げられています。
日本でも「食品ロスを減らそう」という意識は高まっています。けれども、令和3年度に日本が廃棄している食料は523万トン、事業系食品ロスは279万トンでした。全体でみると前年度よりも1万トン増加していたのです。
規格外野菜も食品ロスに含まれているため、規格外野菜を商品化することが事業系食品ロス削減に貢献できるといえます。つくる責任を果たすためにも、厄介なものとされてきた規格外野菜を消費者に届けるアイディアが必要といえるでしょう。
目標8「働きがいも経済成長も」
規格外野菜を何らかの形で販売することは、農家や生産者の収入アップにもつながります。
農業本来の1次産業だけではなく、6次産業の活性化にも貢献するからです。
6次産業とは、農家が食品加工や新サービスなどによって農産物の価値を高めることで、収入を向上していくことを意味します。つまり、規格外野菜を商品化することで経済成長を後押しできるのです。さらに農家の経済的支援も期待できるといえるでしょう。
規格外野菜を買える!人気サブスク
では、現在どのようなサービスや商品が注目されているのでしょうか。まずは規格外野菜を手軽に買えるサブスクを紹介します。
らでぃっしゅぼーや
有機野菜や無添加食材の定期宅配サービスを提供するらでぃっしゅぼーやでは、規格外野菜のサブスクを利用できます。これらのサービスは食品ロスの削減と農家への経済的支援のために誕生しました。
色ムラや傷などの見た目よりも、質や味などの中身を重視した野菜や果物を消費者へ届けることで、未来の食を守っているといえます。
ロスヘル
日本各地から調達した規格外野菜を宅配サービスで提供するロスヘルは、「日本サブスクリプションビジネス大賞2022」を受賞。サービス内容や配達での環境配慮などが地球に優しい宅配通販サービスであると高く評価されました。輸送時はリサイクルしやすいダンボールや新聞紙を活用することで、最低限の包装に努めています。
さらに一般的なスーパーマーケットより最大30%安く購入できます。環境だけではなく、家計にも優しいサービスといえるでしょう。
規格外野菜で商品開発!企業事例5選
続いては、規格外野菜で商品開発を成功させた企業事例を紹介します。どのように加工して価値ある商品へと生まれ変わらせたのかをまとめました。
OYAOYA
規格外野菜を乾燥野菜にした商品を販売しています。新鮮なうちに乾燥させているため、旨みが落ちていません。料理では炊き込みご飯やスープ、スイーツではクッキーやケーキなど幅広く活用できるのが魅力です。利用者も簡単に野菜の栄養をプラスできるため、非常に使いやすいアイテムといえるでしょう。
スナックミー
おやつのサブスクで人気が爆発しているスナックミーでも、規格外野菜を使った商品を提供しています。トマトジュースにはヒビが入ったトマトを採用。ポテトチップスにはクレーターで行き場を失ったじゃがいもを使っています。
おやつ作りのノウハウと食品業界のネットワークを駆使した成果ともいえるのではないでしょうか。
koyomi
群馬県高崎市にある自然派カフェの「koyomi」は、規格外野菜を使ったコールドプレスジュースを開発しました。県内の有機農家から買い取ることで、食品ロス削減、地元農家の収入アップ、地産地消、すべてを叶えました。野菜不足になりやすい方でも、おいしく野菜や果物の栄養を取れるのも魅力といえるでしょう。
みとファーム
みとファームでは、自家農園で生まれた規格外野菜を使った手作りジャムを販売しています。無添加で安心安全にこだわった商品です。
一生懸命に育てたにもかかわらず処分しなければならない食材をなくしたいという思いから生まれました。
ベジシート
ベジシートとは、規格外野菜を使って生まれたシート状の食材です。シートのままサンドイッチやおにぎりに入れるだけ、簡単に野菜の栄養を取れます。また見た目も華やかになるのも人気の理由です。
原料として使用する規格外野菜を定価で買い取っています。農家は安定した収入が増えるため、経済的支援にもなるのです。
私たちにできること
規格外野菜は消費者に届く前に捨てられています。では、消費者個人ができることはあるのでしょうか。
ステップ1:規格外野菜を知る
まずは、規格外野菜があることを知ることが貢献の第一歩といえます。「規格外野菜とは何か」「どうして生まれるのか」「どうすれば解決できるのか」など、興味をもつことが大切です。
ステップ2:規格外野菜を買う
規格外野菜の商品を買ったり、サービスを利用したりすることは消費者だからできることです。社会問題の解決に協力する買い物は、SDGsの目標12「つくる責任つかう責任」に貢献しているといえるでしょう。
サブスクではなく、まずは単発で利用したい方には以下のサービスがおすすめです。
みためとあじがちがう店
名前の通り、見た目よりも味にこだわった野菜を購入できます。
大地を守る会
ふぞろいでもったいない食材をお手頃価格で購入できます。規格外になった理由も明記されているので安心して利用できるのではないでしょうか。
タダヤサイ
抽選に応募して当たれば、無料で規格外野菜をもらえます。さらにお気に入りの商品は直接購入でき、生産者を応援できます。
ステップ3:規格外野菜を食べる
残さず食べることは、食品ロスの削減につながります。生産者への感謝の気持ちを込めて、規格外野菜を使った食事を楽しみましょう。
フリフルでは、規格外野菜を使ったレシピも公開しています。ぜひ、参考にしてみてください。
ステップ4:規格外野菜のよさを広める
規格外野菜の魅力を知ったら、ぜひ家族や友人にそのよさを伝えましょう。規格外野菜を減らしたいという輪を広げることも社会貢献といえます。
おわりに
今回は規格外野菜の課題と魅力をお伝えしました。これまでは当たり前のように廃棄されていた食材を活用することが、未来の食を守れるのです。
規格外野菜の市場価値を高めることで、食品ロス削減、安定した食料生産の実現、農家の収入アップにつながります。
生産者と消費者が「規格外野菜の恵も大切にしたい」という同じ目標に向かって行動することが求められます。ベジシートのような革新的なアイディアが、今後の日本の農業をさらに盛り上げてくれるのではないでしょうか。