JAXAとは、正式名称を宇宙航空研究開発機構といい、日本政府全体の宇宙開発利用を技術で支える中核的実施機関と位置づけられていて、宇宙分野の基礎研究から開発・利用に至るまでの事業を一貫して行っています。
創設から10年の節目となる2013年に、経営理念を「宇宙と空を活かし、安全で豊かな社会を実現する」と定め、コーポレートスローガンに「Explore (探求)」と「Realize (果たす)という二つの意味を込めて、“Explore to Realize”を掲げました。
そして2015年4月には国立研究開発法人となり、同法人の設立趣旨である日本全体の研開発成果の最大化を目指し、新たな一歩を踏み出しだしました。
このような性格をもつJAXAですが、「宇宙と空を活かす」ことで地球の環境を観察し、SDGsの目標達成に一役買っていることをご存じの方はあまり多くないと思います。
ここでは、SDGsの目標達成のためにJAXAが担う役割について解説していきます。
宇宙からの活動
JAXAは、「持続可能な宇宙活動のためのJAXA行動方針」を制定しています。
その内容は、国連宇宙空間平和利用委員会(COPOUS)でも発表されました。
「持続可能な宇宙活動のためのJAXA行動方針」は、大きく3つに分けられます。
その内容とは
- 宇宙に関わる世界中の人々とともに、人類共通の活動領域としての宇宙空間の維持に取り組みます。
- 現在世代だけではなく、将来世代にも等しく宇宙開発・利用の恩恵をもたらします。
- 革新的な技術開発で、持続可能な宇宙活動推進のための諸課題を解決します。
というものです。
この行動方針による宇宙での活動には、以下のようなものがあります。
宇宙天気の把握
宇宙天気とは、太陽活動に応じて変動する宇宙環境の現象のことです。
太陽の表面で大規模な爆発が起こると、地球周辺でも宇宙環境攪乱が発生し、社会や生活に対して影響を及ぼすことがありあります。
その例として、航空管制や人工衛星、通信、電力網等に影響が表れることがあります。
このような変化を予報するために、太陽圏サイエンスセンターによる太陽観測衛星「ひので」、ジオスペース探査衛星「あらせ」、水星探査衛星「みお」、高感度太陽紫外線分光観測衛星Solar-C(EUVST)を中心とした太陽圏の包括的な観測に基づいた太陽圏システム科学分野の研究、高次データプロセス・データ公開等により宇宙天気現象の理解の向上、宇宙環境の変動メカニズムの解明を図り、宇宙天気情報の精度向上へ貢献します。
宇宙天気予報が向上することで、地上や宇宙のインフラへの影響を軽減し、安定的な宇宙利用を実現します。
この取り組みは、目標9「産業と技術革新の基礎を作ろう」、目標11「住み続けられるまちづくりを」、目標13「気候変動に具体的な対策を」の達成に貢献しています。
KiboCUBE
衛星の技術開発が確立されていない新興国・途上国に対して、超小型衛星の開発支援を行うとともに、国際宇宙ステーション「きぼう」日本実験棟から超小型衛星の放出することで、宇宙空間での利用・実験機会を提供しています。
これにより、発展途上等の宇宙技術の向上、宇宙利用能力の構築及び発展途上国等に対する宇宙実験機会の提供および衛星開発を通じた人材育成に貢献しています。
この取り組みによって、目標4「質の高い教育をみんなに」、目標9「産業と技術革新の基盤を作ろう」、目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」の達成に貢献しています。
商業デブリの除去実験
デブリとは、宇宙ゴミのことです。
このデブリは地球周回軌道に存在している使用されていない人工物のことで、それらのほとんどは役目を終えたロケットや人工衛星、あるいはこれらから分離した破片などの物体のことです。
もし、これらのデブリが人工衛星に衝突してしまうと、部品が故障して人工衛星の機能を喪失させたり、人工衛星を破壊指定しまいそれを構成する部品が壊れて破片となり新たなデブリを発生させたりしてしまいます。
中でも大型のデブリ同士が衝突することで、さらに数千個の新たなデブリを発生される恐れもあり、年間に数体の大型デブリを除去することで、現状の起動環境を維持できると予想されています。
JAXAは宇宙ステーション補給機「こうのとり」などで培ってきた接近近傍運用技術を民間に異端視、デブリ対策の事業化を目指す民間業者等と連携して新たな市場の創設を目指し、日本の国際競争力確保に貢献します。
この取り組みは、目標4「質の高い教育をみんなに」、目標9「産業と技術革新の基盤を作ろう」、目標12「つくる責任 使う責任」、目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」の達成に貢献しています。
RABBIT
RABBBTは、デブリ接近衝突確率に基づくリスク回避支援ツールです。
現在、宇宙を飛んでいるもののうち90%はデブリであり、このデブリは小さなものであっても超高速で飛行しているため、大きな破壊力を持っています。
そのため私たちの生活を支える人工衛星が、このデブリによって破壊の危険に脅かされていて、現在だけではなく将来的にも人類の宇宙活動の妨げとなってしまいます。
また、人工衛星運用における宇宙ゴミの回避は専門的な知識や経験が必要となり、宇宙ゴミを回避して運用できるようになるまで、利用できない人工衛星運用機関や人工衛星運用社があるため、デブリの回避技術の確立が急がれています。
JAXAは、長年のデブリ回避運用で得た技術と経験をもとにしたツールであるRABBITを、世界に無償で提供しました。
RABBITは、デブリの衝突リスクを解析し視覚的にもわかりやすく表示するシステムです。
このRABBITを活用することにより、誰でもデブリの最適な回避対策を短時間で立案できるようになりました。
RABBITを活用することにより、目標4「質の高い教育をみんなに」、目標9「産業と技術革新の基盤を作ろう」、目標10「人や国の不平等をなくそう」、目標12「つくる責任 つかう責任」、目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」の達成に貢献しています。
はやぶさ2拡張ミッションで、プラネタリーディフェンス
小惑星や彗星などの太陽系小天体が地球に衝突した場合、非常に大きな災害となります。
その小天体の大きさが数十メートル程度であっても、地球に衝突することで大きな災害を引き起こしてしまします。
天体の地球衝突は、天体を発見し正確な軌道推定を行うことで、数十年先まで正確に予測することが可能です。
「はやぶさ2」は、小規模2001CC21の新設高速フライバイ(探査機が惑星あるいは惑星の近くを通過すること)観測を行っています。
探査機を正確な軌道でフライバイさせる技術を習得することは、探査機を小天体に衝突させてその天体の軌道を変更する技術につながります。
この技術は、目標9「産業と技術革新の基礎を作ろう」、目標11「住み続けられるまちづくりを」の達成に貢献しています。
宇宙からも地球を守る取り組みは行われている
ここで紹介したように、地球を守る取り組みは宇宙からも行われています。
重要なのは宇宙には国境がないため、さまざまな国と技術の提供などの方法で連携し地球を守る取り組みが行われているということです。
このように国境を越えてさまざまな技術を提供し合い、地球環境を守るという取り組みは、地球上においてはなかなか困難であるといえるでしょう。
今後は地球上でも宇宙空間のように多くの国や地域がさまざまな形で連携し、地球を守る取り組みが行われることで、SDGsの目標達成に大きく近づくことになるでしょう。