ウオッカ、テキーラ、ラムと並んで4大スピリッツに数えられるジン。
さまざまなカクテルに使われることで有名なこのジンが、近年大きな注目を集めいています。
その背景にあるのが、世界的な「クラフトジン」の流行です。
クラフトジンは小規模な蒸留所で独自のフレーバーを付けて作られているため、ジンを作っている蒸留所ごとに飲み比べをするのも楽しいでしょう。
このクラフトジンの世界にも、SDGsの目標「作る責任、使う責任」の目標に則した商品が存在します。
ここでは、このような「エシカルな」クラフトジンとそのビジネスモデルについて解説していきます。
クラフトジンとは
クラフトジンに、明確な定義はありません。
クラフトジンの特徴は、小規模な蒸留所で作られていて蒸留所ごとの特徴を持っているということです。
クラフトジンは大手の蒸留所が使用していない独自のボタニカルが使用されていたり、伝統的な製法が採用されていたりとそれぞれ個性が異なります。
一般的に流通しているジンと比較するとクラフトジンは強い個性を持っていますが、その個性ゆえにジンとひとくくりにすることなく複雑な味と香りを楽しむことができます。
一般的なジンの製造方法
ジンは、ベースとなるスピリッツにボタニカルの香味を付加させて作られます。
このような方法以外にも、蒸留を行っていないベーススピリッツにボタニカルを漬け込んで香味を付加させる方法もあります。
後者の方法で作られたジンは、無色透明ではなく多少色がついているものもあります。
一般的なジンとエシカルジンの違いとは
一般的なジンは、ベーススピリッツの原料として糖蜜や穀物を使用しています。
一方、クラフトジンの中でも「エシカルである」とされているジンは、ベーススピリッツの原料として酒粕など、食材のうち廃棄されることが多いものを使用しています。
そのため、エシカルジンは一般的なジンのベーススピリッツが無味無臭であるのに対して、原料となる食材の風味などが感じられるという違いがあります。
※エシカルという言葉の意味は以下の記事をご覧ください。
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酒粕がクラフトジンの原料に向いている理由
酒粕を蒸留することで作ることができる蒸留酒には「粕取焼酎」というものがありますが、焼酎製造の新規参入には、需要と供給の調整という観点から高いハードルが設けられています。
しかし、スピリッツ用の酒類製造免許の取得は焼酎製造の新規参入と比較すると容易であり、短期間で製造販売を開始することができます。
またラムであればサトウキビ、ブランデーであればブドウなどと原料が決まっていますが、ジンのベーススピリッツの原料は決まっていないため、酒粕を利用してもジュニパーベリーという木の実で風味を付けることで本物のジンとして市場に出すことができます。
ジンのベーススピリッツは基本的に無味無臭であり、ここにさまざまなボタニカルで風味付けをしていくのですが、酒粕から製造したベーススピリッツには酒粕そのもののフレーバーが付いています。
この酒粕のフレーバーを活かしてボタニカルを加え風味付けをすることで、オリジナルの風味を持つクラフトジンを作ることができるのです。
エシカルジンを選択することによってどのようなメリットがあるのか
エシカルジンが普及し、それを選択する人が増えることによって得られるメリットには以下のようなものがあります。
酒粕のフレーバーをベースにし個性的なジンを作ることができる
一般的なジンに使用されている無味無臭のベーススピリッツと異なり、酒粕から作られたベーススピリッツにはその風味が残っているため、その風味をベースとして個性的なジンを作ることができます。
廃棄される酒粕を有効利用できる
酒粕は日本酒造りの工程でできるもので、その量は日本酒造りに使用される酒米の約3割の量に及びます。
酒粕の一部は調味料や漬物の材料として再利用されますがその量は非常に少なく、多くの酒粕は廃棄されてしまいます。
この酒粕をジンの原料とすることで、廃棄される酒粕の量を減らすことができます。
酒米作りが盛んになるため耕作放棄地が減少する
現在の日本の特に農村部では、農業の担い手不足や安価な海外産の農作物の輸入により利益を上げることができなくなった農家が増えてきたことから、耕作放棄地が非常に多くなっています。
内閣府の資料によると1980年には12.3万haの面積だった耕作放棄地は、2015年になると42.3万haと約3倍に増加しています。
耕作放棄地が増えることによって田んぼの保水能力が減少し、農村部で水害被害が増えることが予想され、また害獣や病害虫の発生が引き起こされ、深刻な打撃となってしまいます。
酒粕を原料としたジンの製造量が増えると、酒米の需要が増えるためその生産が活発になり、耕作放棄地を利用した酒米づくりにつながります。
クラフトジン製造を行うエシカル・スピリッツ株式会社とは
この酒粕を使用したクラフトジンを製造しているのは、エシカル・スピリッツ株式会社という企業で、その商品名をLAST GINといいます。
エシカル・スピリッツ株式会社は酒粕に新たな付加価値を付けるために、グローバルに成長している「ジン」というカテゴリーに目を付け、個性的で世界に一つしかない味わいのジンの製造に成功しました。
さらにエシカル・スピリッツ株式会社は、このジンによって得た利益の一部で酒米を購入し、酒粕の提供元に送り返すことで、ビジネスの循環を行っています。
しかしエシカル・スピリッツ株式会社代表は、エシカルであるという理由からではなくおいしいからという理由でLAST GINを手に取ってほしいと考えており、結果的にSDGsの目標達成に寄与できるようなビジネスがしたいと考えています。
ただ単にエシカルなだけのジンでは、SDGsに関心が高い人のみが購入することになり、ジンの味と香りを楽しむという本来の目的が二の次になってしまうからです。
エシカルということだけが価値ではなく、エシカルだからこそおいしいというジンを生み出す努力から、ジンを嗜む人へ楽しみを提供すると同時に結果としてSDGsの目標達成に役立つビジネスモデルを構築したのです。
まとめ
循環型ビジネスモデルの構築を考える際に、一番優先されるのは利益ではないでしょうか。しかし、エシカル・スピリッツ株式会社のビジネスモデルは、利益を循環させることにより食品ロスを減少させたり、日本の農村部の利益を向上させたりといった副産物を生みだしており、それがSDGsの「作る責任、使う責任」を達成しています。
SDGsの多くの目標を達成するためには、寄付やボランティア活動を行ったり、日々の生活の中で目標達成のための工夫を行ったりする必要があります。
エシカル・スピリッツ株式会社が作り出す、酒粕を利用したジンを嗜むという「楽しみ」を享受することで、知らず知らずの間に地球環境にやさしい影響をもたらすことができるということは、非常に新しいSDGsの目標達成の方法であると言えるでしょう。
このように楽しむことでSDGsのさまざまな目標達成につながるというスタイルが今後増えていくことは、地球や人類の今後の在り方を良いものにしていく速度を加速させていく可能性を秘めていると言えます。