秋の味覚といえば、さんまを思い浮かべる方も少なくないでしょう。
しかしこのさんま、一昔前までは丸々と脂ののったさんまが廉価で販売されていましたが、近年ではあまり脂がのっていない痩せたものが以前より高価で販売されているケースが多くなってきています。
あの脂ののった大ぶりのさんまは、いったいどこへ行ってしまったのでしょうか?
ここでは、さんまから見える海の環境の変化について解説していきます。
さんま漁のしくみ
さんま漁には、2つの種類があります。
7月に解禁される「流し網漁」と、8月10日から解禁される「棒受け網漁」です。
流し網量とは一隻の水揚げ量は少ないものの、棒受け網漁が始まるまでの比較的さんまの単価が高い時期に行われます。
その操業方法は、10トン未満の船で船頭を含めた2~3人で行われるのが一般的で、さんまの回遊に適した水温の漁場に船尾から投網し1時間程度留め置きした後、船首より揚網してさんまを漁獲するという方法です。
もう一方の棒受け網漁は、魚群探知機とサーチライトでさんまの蒸れを探し、発見したら集魚灯を点けて船を移動させます。
魚群に近づいたら船の右側の集魚灯のみを点け、さんまを右側に誘導しその間に船の左側に網を敷いて捕獲の準備を行います。
その後右側の集魚灯を消し、左側の集魚灯を点けてさんまを網の方に誘導します。
さんまを左側に集めたら赤色灯を点け興奮状態のさんまを落ち着かせ、網の中で群れ行動をとらせ、網を手繰り寄せて氷を混ぜながら魚層に入れます。
この俸受け網漁では、一度の量で流し網漁より多くの量のさんまを獲ることができます。
さんまの漁獲量はピーク時の30分の1に減少している
さんまの漁獲量は、1958年の約57万5,000トンをピークに減少傾向が続いており、「全国さんま棒受け網漁業協同組」によると、2021年の漁獲量は前年の約38%減となり過去最低を記録しました。
この漁獲量は、最盛期と比較すると約30分の1の量となっています。
さんまの不漁の原因は?
さんまの漁獲量は、年々少なくなってきています。
ここでは、その原因について解説していきます。
地球温暖化
温暖化により、気温だけではなく海水温も上昇しています。
気象庁の発表によると、2020年までの100年間にわたる海域平均海面水温の上昇率は、+1.16℃となっており、さんまの水揚げ量が多い釧路沖の海水温の上昇率は+1.25℃とさらに高くなっています。
このように海水温が高くなっている日本海では暖水塊が発生しており、さんまの南下を阻むためさんまの水揚げ量が低下していると考えられています。
中国・台湾の漁獲量の増加
日本では、さんまを沿岸で獲ることが一般的でした。
しかし、近年では中国や台湾が急速にさんまの漁獲量を伸ばしています。
中国や台湾のさんま漁船は、冷凍設備などを搭載した1,000トン規模の大型漁船を用い公海でさんま漁を行い、日本近海に来遊するさんまを「先取り」してしまうため、日本のさんまの不漁に拍車をかけています。
サンマ資源全体の減少
近年、公海上では各国によるさんまの「奪い合い」という状態になっています。
日本を含めた各国がさんまを獲りすぎたため、さんま資源自体が減少するという事態になっています。
このような理由でさんま資源自体が減少していることから、海水温が低下してもさんまが日本近海に戻ってくる可能性は低いという考えもあります。
日本のさんまの漁獲量を上げるために必要なこととは
著しく減少している日本のさんまの漁獲量を上げるためには、どのような方法があるのでしょうか。
ここでは、その方法について解説していきます。
日本の漁獲量を制限しさんま資源の回復を図る
日本のさんまの漁獲量を制限し、さんま資源の回復を図るという方法でさんまの漁獲量を増すことができる可能性があります。
もともとさんまは日本が大量に漁獲し消費してきたという状況にあったため、日本の漁獲枠を決め、その範囲での量を行うことでさんま資源の回復が期待できます。
他国と漁獲量に対しての取り決めを行う
現在では日本だけではなく、中国や台湾といった国々もさんま漁を行っています。
そのため、日本に回遊してくるさんまが少なくなるだけではなく、さんま資源自体も減少しているという現状があります。
日本一国で漁獲量を制限してもその効果は限定的なものになる可能性が高いため、さんま漁を行っている国々が強調して漁獲量の制限を行う必要があります。
地球温暖化を止め、海水温上昇に歯止めをかける
地球温暖化による海水温上昇により、日本近海にさんまがこなくなるという事態が発生しています。
このような事態を解消するためには、地球温暖化を止める必要があります。
この課題は地球に住むすべての人が取り組む必要がある、非常に壮大な方法になりますが、地球温暖化を止めることでさんまの不漁以外にも、世界中のさまざまな問題の解決につながります。
さんまを含む生態系の保護に取り組んでいるNPO団体
さんまを含む、生態系の保護に取り組むNPO団体も存在します。
ここでは、そのようなNPO団体を紹介していきます。
公益財団法人日本自然保護協会
公益財団法人日本自然保護協会とは、人と自然が共に生き、赤ちゃんからお年寄りまでが美しく豊かな自然に囲まれ、笑顔で生活できる社会づくりを目指している団体です。
自然とともにある暮らしや喜びを提供し、自然のしくみから自然から得られる恩恵、そして威力までを全国に深く理解を広め、人々の心や地域の文化のよりどころとなる日本の自然を守ることを目的として設立されました。
現在の日本には絶滅の危機にある生き物が3,600種もあり、一度失われてしまった自然は二度と元に戻ることはありません。
なくなりそうな自然を守る、絶滅危惧種の生息環境を保全する、守った自然で地域を元気にする、地域の自然の守り手を増やすという4点に力を注いだ活動を行っています。
認定NPO生体工房
認定NPO生体工房は都市部に暮らす人々が、身近な公園や緑地で地域固有の生態系を保全し、子どもたちは在来生物に親しみ、豊かな自然観を育むことができる地域社会を目指す活動を行っています。
具体的には公園や街中の身近な水辺を、多様な在来生物が生息する豊かな自然に回復させる取り組みを行っています。
この取り組みを行政と市民が協働で行えるように図り、官民一体となって持続可能な保全活動を各地域に定着させます。
認定NPO法人自然環境復元協会
認定NPO法人自然環境復元協会は、外なる自然の復元と内なる自然の回復をビジョンとし、身近な自然の復元を行う、自然体験を通した豊かな感性と人間力あふれる「ひと」が育つ場を提供するといった活動を行っています。
全国で環境保全を行う団体や、約9000名のメンバーとともに連携し、環境人材の育成、都市の自然環境の保全、農山漁村の活性化に力を尽くしている団体です。
まとめ
ここまで、さんまの漁獲方法やさんまの漁獲量減少の原因、そしてさんまの漁獲量を回復させるためにすべきことについて解説してきました。
さんまの漁獲量が減少したのは、人間の行いが原因であることがお分かりいただけたと思います。
さんまの漁獲量を以前の量に戻すために、まずはさんま資源の量を増やす必要があります。
そのためにさんまの漁獲量の制限など、さんま漁を行う近隣の国々で協調してさんま資源を増やすために努力していく必要があります。
また、地球温暖化にストップをかけるために世界中で二酸化炭素の排出量を抑えていく試みも、さんまの資源量を増やし海の豊かさを守るために非常に重要なことになります。