SDGsの1番目の目標は「貧困をなくそう」です。
この目標を達成するためには、一人一人が個人的にできることは少ないでしょう。
そのため、この目標を達成するために企業単位で取り組みを行っているケースが多くなっています。
その企業の中には大企業のみならず、中小企業も含まれています。
ここでは、貧困をなくすための取り組みを行っている中小企業と、その取り組みの内容について解説していきます。
雪ヶ谷工業株式会社・フェアトレードゴムで貧困をなくそう
雪ヶ谷工業株式会社は1951年に創業して以来、一貫して特殊発泡体の専業メーカーとして着実な事業を行っています。
1960年代から化粧品用スポンジの材料を天然ゴムから合成ゴムに置き換えることに成功し、品質が向上したため世界のトップシェア企業として認知されています。
また、化粧品市場で培ったノウハウを応用し、自動車部品や建材、音響機材等への参入にも成功し、ワールドワイドな成長を続けています。
この雪ヶ谷工業がSDGsの目標達成のために掲げているのが、国内天然ゴム市場で流通する天然ゴムのすべてを、フェアトレードによって取引されたものにするためのルール作りです。
フェアトレードとは、貧困のない公正な社会を作るために途上国の経済的に弱い立場にある生産者と経済的に強い立場にある先進国の消費者が、対等な立場で行う貿易のことです。
フェアトレードによる貿易を行うことで、経済的に弱い立場にある生産者が製品を安い値段でしか販売することができずに、貧困に陥ることを防いだり貧困状態から脱したりすることが期待できます。
雪ヶ谷工業は、天然ゴムの取引を行う環境が強制労働に紐づいていないかを現地まで赴いて調査し、適切な労働環境の構築に寄与しています。
さらにフェアトレードの天然ゴム識別マークを作成し、国内のフェアトレード品の使用を推進する働きをしています。
ジモティー・ひとり親家庭の支援
株式会社ジモティーは、地域密着型フリマや掲示板「ジモティー」をネット上で運営している企業です。
この株式会社ジモティーは、貧困状態に陥りがちなひとり親家庭に対する継続的な支援を行っています。
ユーザーの調査によるとこのジモティーが提供しているサービスは、約65万世帯ものひとり親家庭が利用しているという調査結果もあります。
株式会社ジモティーは、このようなひとり親家庭を支援するために協賛企業から提供された支援物資をジモティー上に掲載し、ひとり親家庭優先の受け渡し会を実施し、ひとり親家庭を支援しています。
株式会社ユーグレナ・バングラディシュの農家の生計を支援
株式会社ユーグレナは、2005年に設立された東京大学発のバイオベンチャー企業で、ミドリムシ由来のバイオ燃料や健康食品の研究を手掛けている企業です。
この株式会社ユーグレナは、バングラデシュの財団であるグラミングループと共に合弁会社を設立し、緑豆栽培事業「緑豆プロジェクト」を立ち上げ、貧困農家に高品質な緑豆栽培のノウハウを伝授しています。
また、このプロジェクトにより収穫された緑豆を市場価格よりさらに高い価格で購入することで、雇用の創出と所得の増加に貢献しています。
また、隣国ミャンマーから逃れてきたロヒンギャ難民への食糧支援も行っています。
このようなSDGsへの取り組みが評価され、2021年に第5回ジャパンSDGsアワードの「SDGs推進本部長(内閣総理大臣)賞」を受賞しました。
プロジェクトデザイン・ビジネスゲームによる地域社会改善の啓発
プロジェクトデザインでは、SDGsと地域共生の関連性を理解し、一人一人の住民が生きがいを持って暮らせる地域社会を考えるビジネスゲーム「地域共生社会」を開発し提供しています。
このゲームを通じて、地域共生のへの取り組みとして解決すべき貧困などの課題について考えることは、SDGsの目標1「貧困をなくそう」について考えること一致します。
「地域共生社会」のゲーム中には自己や他者が貧困状態になるという疑似体験を通じて、支援の大切さを学ぶことができ、SDGsの理解や実践に通じる考え方を身に付けることができます。
このゲームによって、貧困状態が生み出す複合的な問題や、貧困がさらなるウェルビーイングの低下をもたらす構造を体感することができます。
サグリ・農業と環境の課題をAI技術と衛星データで解決
サグリは、AI技術と衛星データを活用したサービスを提供する企業で、起業アワードなどでの受賞歴が豊富な坪井俊輔氏が2018年に設立しました。
日本国内では、衛星データを活用した農地の耕作情況解析技術をもとにして耕作状況分析アプリケーションを展開しており、主な顧客は自治体や農業委員会などです。
それまで、目視や手動に頼っていた農地管理業務の効率化の支援を行っています。
他方では、途上国の農業事業を改善することを目的に事業を進め、インドを進出国としました。
進出国をインドに決めた理由は、農業課題が山積しており改善の余地がある大きな市場だったからです。
このプロジェクトを進めるためには多くのエンジニアを必要とすることから、技術系人材が豊富なベンガル―ル地方にインド法人を設立しました。
この技術をインドに持ち込む前には、農家自体に「いつ、どのようなタイミングで、その作物を育成するのが大切か」「肥料をどのようにして最適化するか」といった情報が乏しいという問題がありましたが、AIの技術と衛星データを活用しこれらの情報を可視化するだけではなく、現地のネットワークを通じてより多くの農家に情報を提供することで、経営の安定化につながり収益の増加を実現しました。
三木プーリ株式会社
貧困をなくすためには、そのための活動を行っているNPO法人などに寄付を行うことも効果的な方法です。
三木プーリ株式会社は、特定非営利法人With優に寄付を行うことで、日本の貧困問題の解決に寄与しています。
このようにして三木プーリから寄付されたお金は、生活困窮世帯の子どもたち向けの宿泊型イベントに使われています。
このようなイベントの内容はスキー合宿やキャンプなど多岐にわたり、参加費は無料となっています。
幅広いイベントを無料で提供することで、生活困窮者の「体験格差」を無くすことができます。
低所得世帯では行うことができないレジャーを、そのような世帯の子どもたちが体験することで、多くの子どもに平等に娯楽の機会を与えることができます。
このように心身を豊かに成長させる場を提供することにより、日本の貧困問題の解決に協力しています。
まとめ
ここまで、日本の中小企業がSDGsの目標1「貧困をなくそう」の達成のために行っているさまざまな取り組みを紹介してきました。
貧困をなくすという一つの問題への取り組み方には、さまざまなアプローチがあること、そして自社の専門分野のノウハウを生かして行うことができるという事がお分かりいただけたと思います。
多くの大企業ではほとんどの企業でSDGsの目標達成のための取り組みを行っていますが、中小企業であってもその取り組みに対する熱意に変わりはありません。
自社の得意とする方法で、SDGsの目標達成のための取り組みを行ってみてはいかがでしょうか。