何かの災害が起こった際には、支援をしたいと思った方々はまず「非難した方へ支援物資を届けなければ」と考えるでしょう。

そして仮設住宅が建設され、被災者の方が入居した時点から徐々にその災害に対する支援は終了したとの思いに至り、支援は終了したと考えがちです。

しかし、本当の被災地支援はそこからも続きます。

ここでは、持続可能な被災地支援とSDGsの関係について解説していきます。

災害サイクルのフェーズ

災害サークルのフェーズは、以下のようになります。

超急性期

超急性期とは緊急対応期とも呼ばれ、災害が発生してから2~3日間のことを言います。

このフェーズで活躍するのは自衛隊や日赤、DMATなどです。

被災者の捜索や救助、避難所の開設・運営などが必要になります。

この時期に取りこぼされがちな高齢者や障害者、外国人といった「要配慮者」の支援も行います。

災害医療としては、「トリアージ」「搬送」がメインとなります。

この超急性期には報道も大々的に行われるため、災害と聞けばこのフェーズを思い浮かべる方が多いでしょう。

超急性期には、指揮命令系統の確立や安全確認、トリアージなど行わなければならないことが非常にたくさんあります。

急性期

急性期とは、災害が発生してから1週間程度の時期を言います。

DMAT隊など、超急性期から支援している第一団は従来の医療機関に徐々に引継ぎを行います。

撤退と引継ぎが行われるため、医療支援が一時的に低下することもあります。

また避難所生活が始まる時期でもあるため、避難所の設備が重要になります。

このタイミングがボランティアの参加や、支援物資の到着の時期となります。

災害支援本部では、ボランティアチームの指揮命令系統の確立や、支援物資の管理にも力を割く必要が出てきます。

亜急性期

亜急性期とは、災害が発生してから2~3週間の時期のことを言います。

災害発生直後の混乱が落ち着き始め、被災者が抱える潜在ニーズの掘り起こしや、健康面への影響などの二次災害を防ぐ支援が行われます。

新たな外傷患者は減少する傾向にありますが、普段飲んでいた薬がなくなったり、衛生環境の悪化などによる慢性疾患や持病の悪化の対策に注意したりすることが必要な時期となります。

また長引く避難所生活により免疫力が低下し、感染症の流行やストレス障害が増加します。

品難所の衛生環境を良好な状態にすることは急性期の時点からも重要なことですが、日常的な医療を提供できれば救えたはずの災害死や障害関連死が増加してくるタイミングでもあります。

この時期には被災家屋の解体や撤去が必要となりますが、資金や作業従事者の不足といった課題も出てきます。

しかしこの課題を解決しないと土地の確保や住宅の新設も難しいため、先の見通しが立てづらく、被災地に不安が生じやすいフェーズであるともいえます。

慢性期

慢性期とは、災害発生から数か月~数年の時期のことを言います。

この時期になるとあまり報道もされなくなるため、ほとんどの方の関心が薄れていきます。

しかし、ここからが被災地の本格的な復興の時期となります。

被災地の医療体制の整備などの、中長期的な支援が必要となります。

被災者の多くは精神的ダメージを負っているため、メンタルヘルスに関する医療需要が高まります。

しかし、被災地には日常が戻り始める時期でもあり、被災者の生活再建や地域経済の再生に向けた長期的な活動が本格化してきます。

一方ではボランティアや支援団体など、外部からの支援の担い手が徐々に撤退していくという問題ができます。

被災した方々が自力で生活していくためのサポートや、コミュニティーの再生、地元に根付いた文化や産業を復興させるための被災地の将来を見据えた長期的な支援が必要になります。

被災地支援とSDGsの関係とは

前述したように災害支援には、4つのフェーズがあります。

ここでは、災害支援がSDGsとどのように関わっているのかを解説していきます。

目標1 貧困をなくそう

貧困や障害により社会のセーフティーネットから逸脱してしまい、災害時に貧困に陥ってしまうこともあります。

特に災害時の場合には、障害により避難が遅れ命を落としてしまうリスクや、災害そのものの被害は免れたものの、その後の避難生活が加齢や障害、慢性疾患などに十分な配慮がなされないために、災害関連死を含めた深刻な影響が出るなど災害に対する脆弱性があらわになります。

このような事態を避けるためにも、強固な地域のコミュニティーを確立したり、自分の障害や持病に対してどのような配慮が必要なのかをしっかりと把握したりしておくことで、逃げ遅れや避難所生活での災害関連死に対するリスクを低く押さえることができます。

目標6 安全な水とトイレを世界中に

日本は公園など公共の水は無料で利用でき、治安も良いことから「水と安全は無料の国」と呼ばれてきました。
しかし災害時には、水は貴重品となります。

飲料用の水はもちろんですが、トイレに利用する水もまた重要になります。

災害時には断水してしまうことも珍しくなく、飲料水の提供はあってもトイレの水の供給までは手が回らないことも少なくありません。

清潔なトイレが使用できない場合、人は飲食の控えトイレの利用をできるだけ少ない回数に抑えようとする心理が働き、脱水症状や免疫力低下、エコノミークラス症候群などのリスクが高まります。

日本においても災害時には飲料水の供給を十分に行うとともに、仮設トイレの設置までの期間を健康に乗り切るために、携帯トイレの備蓄も行う必要があります。

目標11 住み続けられる街づくりを

災害リスクを理解するためにはハザードマップなどを参考にして、災害によってそのようなリスクや被害にどう備えておくべきかということや、高齢者や障害者などの避難行動要支援者の存在も想定した防災訓練やワークショップの実施などによる防災教育の実施などが、SDGsにおける防災への取り組みとしてつながります。

また、このようなソフト面での取り組みだけではなく、災害に強いインフラの整備などもおこなう必要があります。

目標13 気候変動に具体的な対策を

日本の面積や国としては小さいにも関わらず、多くの自然災害が発生しています。

近年では各地で大雨が発生し、観測史上最大の降水量を記録した地域も少なくありません。

さまざまな気候変動の中で、それがなぜ起こるのか、どのような取り組みを行うべきかを考えた持続可能な社会の担い手を育てる必要があります。

まとめ

ここまで、被災地支援とSDGsについて解説してきました。

災害時のさまざまなフェーズで必要になる支援と、SDGsの目標に関連があることがあります。

被災地支援の最終的な目標は、「住み続けられる街づくりを」構築することです。

災害に強いインフラなどの設備を備えた街づくりが達成され、人々のコミュティーも再構築されて初めて、被災地の復興が成し遂げられたといえるのではないでしょうか。

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