世界の貧困をなくす必要とは

SDGsの1つ目の目標は、「貧困をなくそう」です。
「私自身は貧困に苦しんでいないのに、わざわざ他国や他人の貧困をなくす必要はあるのか」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、私たち人間はたとえ遠い国の人とであっても福祉的なつながりがあり、経済的な不平等が広がることでさまざまな悪影響が自身に及ぶ影響があります。
そのため、世界から貧困をなくす必要があるのです。

ここでは、貧困の定義や世界の貧困の現状などについて解説していきます。

「貧困」の定義とは

貧困の定義は機関や国によって異なりますが、SDGsのひとつ目の目標である「貧困をなくそう」で定義されているのは、最も一般的な基準である「1日1.25ドル未満で生活している人々」のことを貧困状態にあると定義しています。

また、貧困には2つの種類があり必要最低限の生活が満たされていない「絶対的貧困」と、特定の地域社会の標準的な生活水準と比較して貧しい状態を指す「相対的貧困」があります。

貧困が引き起こすさまざまな問題

貧困は、さまざまな問題を引き起こします。

生活を営むうえでお金がないと、十分に食事をとることができず栄養失調になってしまい、最終的には餓死してしまう可能性もあります。
また病気になってしまった場合でも、十分かつ適切な治療を受けることができないため通常であれば軽い症状で済むような病気であっても、重い症状に苦しんだり時には命を落としてしまったりする危険性もあります。

このように飢餓の状態に置かれたり、病気をしても満足な治療を受けることができなかったりすることから、貧困により寿命が短くなってしまうという問題があります。
また貧困を少しでも改善するために子どもが働かざるを得ないケースも多く、教育の機会が奪われてしまうということもあります。
このようにして教育を受けることができなかった子供たちは、大人になっても十分な収入を得ることができる仕事に就くことが難しく、貧困の連鎖を生み出してしまいます。

世界における貧困の現状

SDGsで貧困の線引きとなるのは、「1日1.25ドル未満で生活している人々」となっていますが、2015年の10月に世界銀行は貧困の基準となる金額を1日1.9ドル以下の収入に改訂しました。

そのため、ここでは貧困している人の定義を1日1.9ドル以下の収入で生活している人と定義して説明していきます。
1日1.9ドル以下の収入で生活している人は、世界中に約7億3600万人存在し、この人数は世界の人口の約10%にあたります。
1990年における世界の貧困率は約36%でしたが、2015年の調査によると貧困率は約10%と大きな改善を見せているものの、貧困を撲滅するためにはまだまだ問題が山積しているというのが現状です。

貧困をなくす必要性とは

貧困はなぜ世界で協力し合いなくしていく必要があるのでしょうか?

その理由は、経済的な不平等からその国の経済成長に悪い影響が及び、政治的一体性が損なわれてしまう原因になるためです。
このような事態になってしまうと、政治や社会の緊張度が高まり場合によっては情勢不安や紛争の原因となってしまう可能性もあります。
貧困をなくすことで、その地域のみならず世界中の平和を守ることが可能になります。

気候変動と貧困は関係がある?

実は貧困と気候変動には、切っても切れない関係があります。
特に途上国は、地球温暖化のリスクに非常に弱いという現状があります。

サブサハラ・アフリカ、東南アジア、南アジアの3つの地域における気候変動の影響をドイツのポツダム研究所が研究した結果、以下のような結果が出ました。
予想されている4℃の気候変動による影響は、世界各地に激しい暴風雨や長期間にわたる熱波、これらの影響による水や食料の不足、そして社会と経済の広範囲な停滞といった状況がもたらされることが分かっています。

サブサハラ・アフリカでは、このような気候変動の影響により干ばつと猛暑が起こることが予想され、現在トウモロコシを栽培している地帯の約40%で栽培が不可能になり、さらにサバンナの草原が大幅に失われてしまうために田園地帯で農業を営んでいる人々の生活が脅かされてしまいます。

東南アジアにおいては、全域で海面上昇や熱帯低気圧の激化、漁獲量の減少に加えてサンゴ礁が死滅してしまうことにより護岸機能が失われてしまうため、農家や沿岸のコミュニティーだけではなく、都心部へも深刻な影響が及ぶと考えられています。

南アジアでは、降雨パターンが変化することにより一部の土地が水没してしまうことが予想され、発電、飲料、干がい用の水の不足が懸念されています。
このような気候変動による災害が続くと、安全な水や食料の確保も難しくなり、疫病が流行することも予想されます。

気候変動のリスクを受けやすい地域には農村や田舎、沿岸などがあり、そのような地域のコミュニティーなどに住む、もともと貧困かまたはそれに近い状態にある人々に影響を及ぼすため、貧困がさらにエスカレートしてしまう危険性が高いと言えます。

貧困をなくすために私たちにできることとは

世界から貧困をなくすために、まず自分でできることはあるのでしょうか。
ここでは、貧困をなくすためにひとりひとりができることについて解説していきます。

ボランティア活動

ボランティア活動の中には、貧困が問題となっている地域に実際に行かなくてもできるものもあります。
それは募金の呼びかけや、ボランティアイベントのスタッフとしてイベントの進行を手助けするなどの方法です。

このような方法は間接的ではありますが、貧困にあえぐ地域と自分が住んでいる地域の橋渡し役となるため、非常に重要な役割を持ちます。
実際に体を使って貧困問題解決の役に立ちたいと思われている方は、このようなボランティア活動に参加してみてはいかがでしょうか。

支援団体への寄付

一番手軽にできる支援に、貧困地域を支援している団体への寄付というものがあります。
さまざまな団体が寄付を募っているため、寄付をする場合にはその団体がどのような目的で寄付を募っているのかをしっかりと調べてから寄付を行うことをおすすめします。

また、寄付は金銭だけではなく古着などで行うことができるケースもあります。
自宅にもう着ない衣類がある場合には、廃棄してしまう前に寄付して再利用してもらうことも念頭に置いてみてはいかがでしょうか。

フェアトレードの商品を購入する

フェアトレードとは、途上国で生産された製品などを適正な価格で売買し、生産者が正当な金額の報酬を受けとることができ、それによって生産者の生活の改善を経済的な自立を目指す貿易の仕組みのことを言います。

現在の社会では、残念なことに途上国で生産された製品が世界中に非常に安い価格で出回っているという現状があります。
そのため、途上国の生産者は十分な利益を得ることができず貧困に陥ってしまうというケースが後を絶ちません。
このような事態を避けるためにも、フェアトレード商品を購入することで貧困をなくす一助とすることができます。

まとめ

ここまで、世界の貧困をなくすべき理由と貧困が引き起こすさまざまな問題、貧困をなくすために私たちひとりひとりができることについて解説してきました。
貧困は遠い国の出来事だと思われがちですが、現在住んでいる場所でも貧困の影響を受ける可能性があります。
自分が貧困問題で悩んでいないから…と他人ごととしてとらえている方もいらっしゃるかもしれませんが、そのような方も世界や身近にある貧困問題に目を向けてみることをおすすめします。

最新情報をチェックしよう!