食品ロスとSDGsの関係を解説!企業事例3選

食べ残しや賞味切れなど、何らかの理由で食材を捨てていませんか?このように、本来なら食べられるものを廃棄することは「食品ロス」です。

非常に身近な問題である一方で、深刻な社会問題の一つ。実は、SDGsと深く関わっているのです。

とはいうものの、「食品ロスの現状は?」「SDGsの目標のどれと関係があるの?」など疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

この記事では、食品ロスについてSDGsの視点から解説します。食品ロスの削減に取り組む企業の事例についてもまとめました。ぜひ最後まで、お読みください。

食品ロスとは?

食品ロスとは、本来食べられた食材を捨てることを表します。食品のライフサイクルにおける生産、製造、流通、販売、消費といったあらゆる段階で発生します。例として、以下のものがあげられます。

  • 食べ残し
  • 売れ残り
  • 加工過程で廃棄される可食部
  • 消費期限切れ
  • 腐らせてしまった食材

このように、何らかの理由で食材を捨てた経験は誰にでもあるのではないでしょうか。どこでも起こり得る食品ロスは世界的な社会問題になっているのです。

世界の食品ロス

世界でみると、どれくらいの食品ロスがあるのでしょうか。FAO(国際連合食糧農業機関)の報告書によると、毎年「約13億トン」の食料が廃棄されています。これは、世界で生産された食料のうち「3分の1」が捨てられていることになるのです。

食品ロスは先進国だけではなく、開発途上国でも同じくらい発生しています。けれども、食品ロスの発生原因は一緒ではありません。

開発途上国における食品ロスの4割以上は収穫後と加工段階で発生しています。一方、先進国では同じ割合のロスが小売および消費者の段階で生じているのです。

このように、世界では飢餓問題が大きく取り上げられる一方で、大量の食料が廃棄されています。

参照:FAO(国際連合食糧農業機関)(PDF)

日本の食品ロス

では、日本における食品ロスの現状はどうなっているのでしょうか。

農林水産省の報告によると、令和2年度の食品ロス量は「522万トン」。この食品ロスを国民一人当たりに換算すると、「お茶碗約1杯分(約113g)を毎日捨てている」といえるのです。前年度より48万トン減少したものの、大量の食材が破棄されていることに変わりありません。

日本での食品ロスの原因は主に2つ。一つ目は事業系食品ロスです。スーパーマーケットやコンビニエンスストアなど小売店での売れ残りや返品、飲食店での食べ残し、売り物にならない規格外品といった食材が全体の約6割を占めています。

二つ目は、家庭系食品ロスです。料理の食べ残しや、賞味期限切れや腐敗した食材、皮のむき過ぎなどの可食部などの食材が約4割も含まれています。

企業も消費者も自分ごとに捉えるべき問題が「食品ロス」といえるでしょう。

参照:農林水産省|食品ロスの現状を知る

食品ロス削減で解決できる課題がある!

国内外問わず食品ロスが大量に廃棄されていることが分かりました。けれども、どうして食品ロスを削減することが必要なのでしょうか。

単純に「もったいないから」という理由だけではありません。食品ロスを削減することで、解決できる社会的課題があるからです。

飢餓の問題

一つ目は、飢餓の問題。世界人口の増加や新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、飢餓人口は急激に増加しています。

2021年版「世界の食料安全保障と栄養の現状(The State of Food Security and Nutrition in the World Report: SOFI)」の報告によると、重度の食料不安を抱えている人は「9億2800万人」と推計されました。そのうち、3人に1人は必要な栄養素を満たす食事にアクセスできていません。

このように、深刻な飢餓がある一方で、食料は捨てるほど余っているのが今の現状です。実は、先進国の食品ロスの量はサブサハラアフリカ地域の食料生産量に等しく、世界の食品ロス量は「20億人分の食事」に及ぶといわれています。

つまり、食品ロスの原因を解決することで、飢餓を救える可能性は十分に考えられるのです。

参照:JICA|報告書「2021年世界の食料安全保障と栄養の現状(SOFI)」

環境保護

二つ目は、環境保護。食品ロス削減は、気候変動の対策になるからです。

食品ロスは家畜や畑などの肥料に使われることもありますが、それ以外は焼却されます。それに伴い、膨大なエネルギー資源がかかり、最終的に大量の二酸化炭素を排出しています。

世界中で食料廃棄によって発生する二酸化炭素の量は、アメリカと中国に次ぐ3番目の排気量となります。相当な環境負荷を与えていることは容易に想像できるのではないでしょうか。

二酸化炭素などの温室効果ガスは、地球温暖化の原因の一つです。「脱炭素」「カーボンニュートラル」を合言葉に、世界でも気候変動の対策として二酸化炭素削減の動きは活発化しています。

食べものを捨てない世界をつくることが、未来の豊かな自然を守ることになるといえるのではないでしょうか。

参照:国連WFP|「不十分の」途上国と「不注意の」先進国

企業の社会的責任

企業が食品ロス削減に取り組むことは、社会的責任を果たすことにつながります。企業が受ける恩恵も大きいといえるでしょう。

例えば、生産過程を見直すことで食品ロス防止につながります。例えば、ジュースを加工する場合、皮や可食部などがゴミとして捨てられる場合が多いです。

捨てられる食材を少しでも減らしたり、新たな商品へアップサイクルしたりする努力が企業には求められています。この努力の成果は、社会貢献だけではなく、コストカットや売上アップにも直結するといえるでしょう。

企業には、社会的ニーズにあわせた商品開発が期待されています。

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食品ロスはSDGsの目標の何番?

食品ロスを削減することで、飢餓、環境問題、企業の社会的責任における問題解決につながることが分かりました。

つまり、食品ロスはSDGsとも深く関わっているのです。SDGsの目標「12.つくる責任 使う責任」のターゲットの中にはっきりと明記されています。

目標12のターゲット

目標12は、「持続可能な生産消費形態の確保」を目指した目標です。ターゲットは全部で11個あります。

12.1 開発途上国の開発状況や能力を勘案しつつ、持続可能な消費と生産に関する 10 年計
画枠組み(10YFP)を実施し、先進国主導の下、すべての国々が対策を講じる。

12.2 2030 年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する。

12.3 2030 年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減
させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる。

12.4 2020 年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環
境上適正な化学物資やすべての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響
を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。

12.5 2030 年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発
生を大幅に削減する。

12.6 特に大企業や多国籍企業などの企業に対し、持続可能な取り組みを導入し、持続可
能性に関する情報を定期報告に盛り込むよう奨励する。

12.7 国内の政策や優先事項に従って持続可能な公共調達の慣行を促進する。

12.8 2030 年までに、人々があらゆる場所において、持続可能な開発及び自然と調和した
ライフスタイルに関する情報と意識を持つようにする。

12.a 開発途上国に対し、より持続可能な消費・生産形態の促進のための科学的・技術的
能力の強化を支援する。

12.b 雇用創出、地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業に対して持続可
能な開発がもたらす影響を測定する手法を開発・導入する。

12.c 開発途上国の特別なニーズや状況を十分考慮し、貧困層やコミュニティを保護する
形で開発に関する悪影響を最小限に留めつつ、税制改正や、有害な補助金が存在する場合はその環境への影響を考慮してその段階的廃止などを通じ、各国の状況に応じて、市場のひずみを除去することで、浪費的な消費を奨励する、化石燃料に対する非効率な補助金を合理化する。

引用:外務省|我々の世界を変革する:持続可能な開発のための 2030 アジェンダ(PDF)

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食品ロスとSDGsの関係

ターゲットをみると、SDGsの達成には以下のような対策が欠かないといえるでしょう。簡単にまとめると以下の対策が必要です。

  • 2030年までに、食品ロス量を半分に減らす
  • 生産者から消費のサイクルの中で、食料が捨てられたり、失われたりする食材を減らす
  • あらゆる廃棄物を環境に害を与えないように管理できるようにする
  • ごみの発生を防いだり、減らしたり、リサイクルやリユースをして廃棄物を減らす
  • 開発途上国が生産過程における食品ロス削減ができるよう、科学的および技術的な能力の強化を支援する

このように、食品ロスの削減は、SDGsの目標「12.つくる責任 つかう責任」における問題といえます。しかし、広い目でみると目標「2.飢餓をゼロに」、目標「13.気候変動に具体的な対策を」にも貢献できるといえるでしょう。

参照:日本ユニセフ協会|12.つくる責任 つかう責任

食品ロス削減を目指す企業事例3選

続いては、食品ロス削減を目指す企業事例を紹介します。以下に3つの取り組みをまとめました。

旬をすぐにの冷凍弁当

「旬をすぐに」は名前の通り、旬の食材をすぐにメニュー開発して提供する食事サービスです。

食材ごとの最適な加熱と冷凍技術で1℃単位の管理をすることで、食材そのものだけではなく、栄養や美味しさも無駄にしません。さらに、収穫量の多い食材を積極的に使うことで、過剰生産分の破棄を減らし、地球に優しい生産システムを実現しました。

参照:旬をすぐに

食品メーカーの賞味期限延長

大手食品メーカーは、生産過程を見直すことで、賞味期限の延長に成功しています。例えば、以下の事例があげられます。

  • キユーピーハーフ:7ヵ月から12ヵ月に延長
  •  Mizkan「納豆 金のつぶ」:10日前後から15日間に延長
  • サトウの切り餅、サトウのまる餅:15カ月から24カ月に延長
  • 森永製菓「カフェラテ240ml」:一般的なチルド飲料の賞味期限(1~2週間)に対し70日間に延長

商品の見た目や味を変えることなく、賞味期限の延期に成功している事例が多く見られました。これらの取組みは、流通段階や家庭内での賞味期限切れによる食品ロスを抑えることが期待できるでしょう。

参照:農林水産省(PDF)

リベイクの食品ロスパン

リベイクは、パン専門のお取り寄せオンラインショップです。このサイトでは、全国のパン屋で売れ残ったパンや洋菓子を注文できます。

店側にとっては、廃棄予定の商品が売上につながります。消費者にとっては、送料はかかるものの、美味しいパンを手軽に購入でき、おまけに社会貢献もできるのです。

このような食品ロスを減らす新たなシステムは、とても注目を集めています。

参照:リベイク

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まとめ

今回は、SDGsの視点から食品ロスについて解説しました。

食品ロスとは、本来食べられる食材を捨てることです。非常に身近なことではありますが、世界でみるととても深刻な社会問題といえます。

「もったいない」をなくすことが、飢餓や持続可能性食料生産、二酸化炭素の排出量削減につながります。

SDGsの目標「12.つくる責任 つかう責任」にも明記されているように、企業にとっても消費者にとっても取り組むべき課題です。一人ひとりがライフサイクルの中での意識を変え、食品ロスを生まないしくみを確立させることが求められているのではないでしょうか。

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