再生可能エネルギーが地球に与える負荷によって環境破壊につながる?

再生可能エネルギーの大きな特徴に、「資源が枯渇しない」、「温室効果ガスをほとんどまたは全く排出しない」というものがあります。
このような理由から地球にやさしいとされている再生可能エネルギーですが、じつは再生可能エネルギーも地球環境に負荷を与え、その負荷によって環境破壊につながるケースもあります。
ここでは、再生可能エネルギーが地球環境に与える負荷と、それにより起こりうる環境破壊を最小限に抑えるための方法について解説していきます。

再生可能エネルギーが環境破壊を引き起こす?

再生可能エネルギーは枯渇する心配がない、地球温暖化ガスを排出しないといったクリーンなイメージがありますが、再生可能エネルギーを利用して電気を生み出すためには、それぞれの再生可能エネルギーの特性に合った広大な土地を用意する必要があります。
この特性に合った土地を用意する場合に森林伐採などを行う必要が出てくるため、環境に悪影響を与えることがあります。
またそれ以外の原因によって、環境に負荷を与えることもあります。

再生可能エネルギーが環境に与える悪影響

再生可能エネルギーは、地球環境に悪影響を与える可能性があることは前述しました。
以下に、再生可能エネルギーの種類ごとに環境に与えやすい悪影響について解説していきます。

太陽光

太陽光により大量の電力を生み出すためには、広い敷地を利用するメガソーラーシステムを利用する必要があります。
このようなメガソーラーシステムを設置するために、森林を伐採することで森にすむ動物の住処を破壊してしまうことがあります。
また、メガソーラーシステムを設置する場所の地盤が弱い場合には、土砂崩れや地滑りが起こりやすくなることも考えられるため、周辺住民の方々の生活に危険を及ぼす可能性もあります。
このようなリスクがあるため、自然環境だけではなく周辺に住んでいる人々の安全な暮らしという点にも考慮して、メガソーラーシステムの設置を行う必要があります。。
さらに使用不可能になった太陽光パネルにはカドミウムやセレン、鉛などの有害物質が含まれているため、産業廃棄物として適切に処分を行わず不法投棄を行ってしまうと、これらの有害物質が自然界に漏れ出してしまい、周辺環境に悪影響を与えてしまいます。

風力

風力発電を行う風車を設置するのに適した場所は、1年を通じて毎秒6.5m以上の風速の風が安定して吹く場所です。
風車を設置する場所は海沿いや山の上なので民家への影響は少ないのですが、風車設置のためと風車の設置工事やメンテナンスのために、車両が通行できる5m以上の幅の道路を建設する過程において、大規模な森林伐採を行う必要が出てきます。
また風力発電施設が稼働し始めた後には、バードストライクという鳥類が風車のブレードに衝突するという事故によって、希少な鳥類の生息数が減少するという問題もあります。
さらに、風力発電では巨大な風車を設置する必要があるため、景観を損ねてしまうという悪影響もあります。

水力

ダム式の水力発電設備を建設する際には、山奥などの豊かな自然がある場所にダムを建設し貯水を行い発電するため、周辺の自然環境に大きな影響を与えます。
ダムの底に民家が沈んでしまうケースも、少なくありません。
また、森林伐採や巨大な貯水池を建設する必要があるため、そこに住む野生の動物の住処も破壊してしまうことになり、生態系に大きな影響を与えることになります。

地熱

地熱発電は温泉などが湧出している場所の地熱を利用して発電を行う方法ですが、この地熱発電も自然環境にさまざまな影響をおよぼします。
その影響とは、温泉水の汲み上げすぎによる温泉水の枯渇または減少や、時には地中にできた空洞の影響で地盤沈下や地滑りを起こすこともあります。
また、地熱発電所を建設する際には掘削を行う必要があり、この時に地下から亜硫酸ガスや硫黄などの人体や周辺に生息する生物に有害な物質が出ることもあります。
さらに日本で大規模な地熱発電設備の建設に向いている場所の多くは、国立公園の中にあるため、景観や環境に大きな悪影響を及ぼすことが考えられます。

再生可能エネルギーが自然界に及ぼす悪影響を最小限の抑えるために必要なこととは

ここまで、再生可能エネルギーを利用した発電方法であっても全く環境に負荷をかけないということはないという点について解説してきました。
化石燃料による発電に比べれば再生可能エネルギーが自然環境に与える影響は少ないのですが、それでも自然破壊につながることに変わりはありません。
ここでは、再生可能エネルギーを利用して発電を行い電力を生み出す際に、自然環境にかかる負荷を軽減する方法について解説していきます。

ゾーニング

ゾーニングとは、ターゲットとした地域の野生動物の生息状況や植生、そこで生活している人々の情報を地図の中に落とし込んでデータを見極め、その地域に再生可能エネルギーを利用した発電施設を建設した際に、どの程度の負荷がその地域にかかるかということを事前に予測する方法のことを言います。
このゾーニングを行うことで、再生可能エネルギーを利用した発電施設を建築する際に、環境に与える負荷が最も少ない「適地」を明らかにすることができます。

環境アセスメント

環境アセスメントとは、再生可能エネルギーを利用した発電施設の建設に限らず、大規模な開発事業を行う際に、事業者が自らあらかじめこれから行おうとしている開発事業などがターゲットとなる地域の環境に与える影響を予測し、その内容についてその地域の住民や関係する自治体などから意見を聞くとともに、専門的な立場からその内容を審査し事業を実施する際に適切な環境に対する配慮がなされるようにするために行われる一連の手続きのことを言います。
令和3年5月26日に成立した改正温暖化対策推進法では、前述したゾーニングは自治体の「努力」ゆだねられる形であるため、開発を行う事業者自身がしっかりとした環境アセスメントを行うことで、ターゲットとする地域の自然環境に及ぼす負荷を最小限にとどめることができます。

省エネ

再生可能エネルギーの利用は、地球温暖化を防止するために必要不可欠な方法です。
しかし、再生可能エネルギーを利用した発電施設のほとんどは、その建設時に環境に負荷をかけ、悪影響を及ぼしてしまいます。
社会全体で必要とする電力の総量を抑える、いわゆる「省エネ」を行うことで、新たに建設する再生可能エネルギーを利用した発電施設の数を必要最小限に抑えることで、環境に与える負荷もまた最小限に抑えることができます。
自宅やオフィスで節電を行ったり、省エネ家電に買い替えたりするなどの方法をとることで、結果的に自然破壊を最小限にとどめることができます。

まとめ

ここまで、再生可能エネルギーが自然環境に与える影響と、その影響を最小限に抑えるための方法について解説してきました。
再生可能エネルギーを利用した発電方法は、化石燃料など従来の火力発電をメインとした発電方法で排出される地球温暖化ガスを削減するために、非常に大きな力を発揮します。
しかし、クリーンで地球にやさしいと言われる再生可能エネルギーであっても、全く自然環境に負荷をかけない訳ではありません。
ここで解説してきた内容から、得に再生可能エネルギーを利用した発電施設を建設する際に、環境に大きな負荷をかけることがお分かりいただけたと思います。
このことから、再生可能エネルギーをできるだけ環境に負担をかけずに利用するためには、自治体や事業者が環境に負担をかけない努力を行うだけではなく、電力を利用するすべての人が節電などの努力を行う必要があります。

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