サザンオールスターズやMr. Childrenなど、大物アーティストに楽曲の提供およびプロデュースを行う小林武史氏。
彼が代表理事を務める一般法人ap bankが始めたのが、このGREAT FARMERS TO TABLEです。

この活動は、どのような背景や考え方から生まれたのでしょうか。
また、小林武史氏が目指す「持続可能性」とはどのようなものなのでしょうか。

ここでは、食の生産者と消費者をマッチングするサービスであるこの活動と、小林氏が描く持続可能な未来について解説していきます。

小林武史氏の思い

小林武史氏には、J-POPの一時代を築き上げた音楽プロデューサーとしての顔以外に、環境問題や被災地の復興支援に長く取り組んできた、非営利団体「ap bank」の代表理事としての顔もあります。

ap bankは2003年に、Mr. Childrenの櫻井和寿氏と音楽家の坂本龍一氏、そして小林武史氏との共同出資によって立ち上げられ、翌年には小林氏と櫻井氏がBank Bandを結成し、野外音楽イベントやCDのリリースを行いました。

これらの収益はすべてap bankの活動資金に充てられ、自然エネルギーの推進や環境保全などのプロジェクトに融資されています。

サステナビリティやSDGsという言葉はここ数年でこそ日本でも一般的になってきていますが、それ以前から小林氏は持続可能な社会の在り方を模索していたのです。

ap bankの理念

ap bankとは、坂本龍一氏が発起人であるArtists’ Power(アーティスト・パワー)への誘いを受けて、小林武史氏と櫻井和寿氏が参加したのが始まりです。

その後、専門家や識者を講師とした環境問題に関する勉強会がスタートします。

そして講師の一人であった田中優氏から、市民のための風車を立てるために事業母体として自分たちでバンクを作ってみてはという提案を受け、立ち上げられたのがこのap bankです。

ap bankという名前は、Artists’ PowerのAPにAlternative Powerの意味を加え、決められました。

何か耳あたりの良いスローガンを掲げて資金を集めるのではなく、身銭を切る必要性を感じたと小林氏は言い、自分たちの本業分野である音楽を使って収益を上げ、このab bankの活動資金に充てています。

ap bankが開催する音楽フェスは、気持ちの良い場所で音楽を聴きながら環境問題を身近なものとして考えてもらう場として、またさまざまな取り組みの実践の場となっています。

環境に配慮した商品の販売や環境にも体にも優しい食事、トークイベントやワークショップなど、楽しみながら環境問題を考えてもらえるような趣向がこらしてあります。

このようなイベントの収益は、すべてap bankの活動資金となります。

このような活動から得た資金は、自然エネルギーや環境保全、東日本大震災への復興支援活動などに使われています。

GREAT FARMERS TO TABLE プロジェクトの背景

GREAT FARMERS TO TABLE プロジェクトの背景には、コロナウイルス感染拡大による非常事態宣言がありました。

この非常事態宣言の中、都市部では人の移動が制限され、同時に人だけではなく飲食店のシェフを通じて消費者に届くはずだった野菜や肉、魚などの食材も飲食店の営業自粛により出荷先を失い、生産地で破棄されるケースも少なくありませんでした。

一方で外出自粛が続いている中では外食や外出の機会も減少し、食卓や家庭内の生活をより豊かに彩る提案が求められている状況にありました。

そのために家庭内で消費される高品質の食材を、生産者から直接入手できる機会へのニーズが高まっていました。

そのような中で多くのシェフの協力を得て出会った素晴らしい生産者、すなわちGREAT FARMERSを紹介してもらい、GREAT FARMERSの作る食材とより豊かな食卓を求める消費者のマッチングを行うGREAT FARMERS TO TABLE プロジェクトが始まったのです。

なお、ap bankはこの活動から一切の売り上げや手数料、金銭を受け取ることはありません。

このサイトの構築や事務局運営にかかわる費用については、ap bankのこれまでの活動から得られた利益から充当されています。

GREAT FARMERS TO TABLE

コロナウイルスの蔓延によりそれまでの出荷先を失った良質な食材を作る生産者と、より豊かな食卓をマッチングすることでそれぞれの厳しい状況を乗り越えていこうという考えから始まったGREAT FARMERS TO TABLE プロジェクト。

コロナ禍が沈静化した今でもGREAT FARMERS TO TABLE プロジェクトは、日常であればお互いに顔を合わせることのない生産者と消費者が、お互いの気持ちを交わすことができるような取り組みへと変わってきました。

約二か月によるコロナ禍の外出自粛期間を経てもなお継続して続くGREAT FARMERS TO TABLE プロジェクトは、日本人が日本の食文化を考え直すきっかけになるでしょう。

KURKKUFIELDSとは

小林武史氏は、2010年に千葉県木更津市に「農業生産法人耕す」を設立し、「耕す木更津農場」を開場しました。

約9万坪(30ha)にもおよぶ広大な土地からなる農場は、「次の世代にも使い続けられる農地」を目指して有機野菜と平飼い養鶏を9年以上にわたって続けてきました。

その後の2019年には、千葉県木更津市にある広大な農場を舞台として培ってきた食の在り方を、農業と食、そしてアートの3つのコンテンツを軸に提案するサスティナブルファーム&パークKURKKUFIELDS(クルックフィールズ)としてオープンします。

KURKKUFIELDSには、オーガニックファームやエディブルガーデン、養鶏場、酪農場があり、農業体験や生産物を購入できます。

また、心の滋養となるアートの鑑賞、自然が育んだ恵みがそのままテーブルへ運ばれるダイニングやベーカリーも併設され、心も体も満たすことができます。

このKURKKUFIELDSで使用されるエネルギーは広大なソーラーパネルにより発電され、排水は微生物や植物などの自然の力を使ったバイオジフィルターによって浄化されます。

さらに養鶏場と酪農場から出てくる動物のフンは、場内の大型プラントで発酵させることで堆肥として農場で再利用されます。

このようにKURKKUFIELDSの中では動植物の生きる営みが循環し、人間に豊かな恵みをもたらしてくれるのです。

これが、小林氏が作り出した持続可能な未来の形や“いのちのてざわり”を体験できるKURKKUFIELDSという施設です。

まとめ

小林武史氏は、サステナビリティやSDGsという言葉を一般の人々が目にするはるか前に、「持続可能性」という概念を持っていました。

そしてその概念は自然エネルギーの利用やコロナ禍のフードロス削減のためのGREAT FARMERS TO TABLEプロジェクトの立ち上げ、そしてコロナ禍を経た後も続くKURKKUFIELDSという農場の開設へとつながっていきます。

この一連の流れは、SDGsの目標7エネルギーをみんなにそしてクリーンに、目標12つくる責任つかう責任、目標15陸の豊かさも守ろうの目標達成に役立つでしょう。

小林氏が行き着いたKURKKUFIELDSは、「耕すのは豊かな土と持続可能な未来」をスローガンに運営されています。

KURKKUFIELDSへ行くことができない方でも、GREAT FARMERS TO TABLEのサイトを利用することで、日本全国の良質な食材入手することができるため、一度利用してみてはいかがでしょうか。

そして、音楽がお好きな方は特にap bankの活動を通して行われる「地球を守るための支援」について知り、自分が購入した音楽の代金がどのように地球環境に役立つかを知ることも、音楽にまつわる楽しみのひとつになるかもしれません。

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