フラワーロスをご存知ですか。実は食品ロスと同じように、花も見えないところで大量に廃棄されています。
この記事では、フラワーロスについて解説するとともに、花の命を救おうと奮闘する企業の取り組みも紹介します。
心を豊かにしてくれる花の未来を一緒に考えましょう。
フラワーロス(ロスフラワー)とは
フラワーロスとは、まだ楽しめるにもかかわらず廃棄されてしまう生花のことです。
- 規格外だった
- 傷や痛みなどがあった
- 鮮度が落ちてしまった
- イベントが中止や縮小になった
- 式場やお店などで一度使用して役目を終えた
- 売れ残った
このように何らかの理由で市場に出回ることのない花が多く存在しています。
捨てられる花は年間10億本?
一説によると、捨てられる花は年間10億本ともいわれています。仕入れた花の30〜40%が廃棄。経済損失は年間1500億円に上るとも示唆されているのです。
コロナ禍で相次いでイベントが中止になり、フラワーロスが大量発生したことでより一層問題視されるようになりました。
フラワーロスを解決するメリット
では、フラワーロスの問題を解決することには、どのようなメリットがあるのでしょうか。
メリット1:廃棄量と排気量の削減
フラワーロスをなくすことで、ゴミを減らせます。その結果、焼却時に排出される二酸化炭素も削減できるのです。
ムダを生まないことが、地球にやさしい行動につながります。
SDGsの目標「12つくる責任つかう責任」の中では、主に食品ロスに重点が置かれています。けれども、生産者と消費者が責任を果たすために、花の命をムダにしないことも重要なのです。
メリット2:在庫のコストカット
生産した花をできるだけ消費者に届けることは、生花店や卸業者の在庫をなくすことにつながります。コストカットして利益を出すことは、持続可能な経営をするために欠かせないといえるでしょう。
- 需要にあう分だけ生産や発注をする
- 価値がないものに付加価値をつけて販売する
- ドライフラワーや雑貨などにアップサイクルする
このように在庫をなくす努力が循環型経済を後押しするのです。
メリット3:市場拡大のチャンス
フラワーロスには年間1500億円の経済効果が眠っています。このような現状を周知し、売り方を工夫することで市場拡大が期待できます。
イベントの中止や縮小でフラワーロスが増えた2020年から、農林水産省は家庭や職場に花を飾って楽しむ「花いっぱいプロジェクト」を実施。花の消費アップを支援しました。
フラワーロスがターゲット層を広げるチャンスになるかもしれないのです。
フラワーロスを救う!企業の取り組み9選
「フラワーロスになりそうな花を買いたい」と思った方もいるのではないでしょうか。続いては、フラワーロスを救うために邁進する企業事例を紹介します。
ホテルTRUNK
ホテルTRUNKでは、館内でのウェディングやイベントで使用した花を有効活用しています。フラワーデザイナーがアップサイクルしたドライフラワーをブーケしたものを販売しているのです。
また通常は廃棄されてしまう花をムダにしないために「ソーシャライジングフラワーマーケット」を開催。少し傷があるため、500円程度で買えるブーケもあるそうです。
「幸せのお裾分け」といえる取り組みといえるでしょう。
参照:https://trunkstore.official.ec/items/43471656
参照:https://itssoeasy.jp/blogs/all/20221117
RIN
RINは「花のロスを減らし花のある生活を文化にする」をビジョンに掲げて、事業を展開しています。
- 花農家から直送する規格外の花のオンライン販売
- パートナー企業とのコラボフラワーアイテムの販売
- 花市場、生花店や結婚式場などで発生したフラワーロスを買取り、ドライフラワーで装飾する(イベントやディスプレイ、広告撮影など)
このように新たな命を吹き込むことで、花の命を最大限に生かしているのです。
ボタニック
ボタニックは、「お客様、生産者、花屋などの、花や植物に関わる全ての人々を幸せにすること」を使命として捉え、花や植物を使った装飾や空間づくりを行っています。
またLIFFT(リフト)というブーケの注文販売も展開。オーダーに応じて提供することで、在庫を減らすことに成功しました。
エシカ
ethica(エシカ)は、誰もが手軽に地球にやさしい生活ができる「エシカルフラワー事業」を展開しています。
- 生産時に規格外になった花
- 輸送時に傷や痛みが発生した花
- 店舗で傷や痛みが発生した花
- イベントや式典などで役目を終えた花
このような理由からフラワーロスの対象になったものを原材料にして商品生産をしているそうです。その結果、生産から消費までに発生するフラワーロスの削減に成功しました。
売れない花を買い取ることで、花に関する事業者の労働環境の改善にも努めています。これはSDGs目標「8働きがいも経済成長も」に貢献しているといえるでしょう。
参照:https://www.ethicalflower.co.jp/business/
ジャパンフラワーコーポレーション
ジャパンフラワーコーポレーションは2020年から「スマイルフラワープロジェクト」を発足。廃棄予定の花を買取り、ECサイトで販売しています。
2021年3月現在で、累計100万本の花をレスキューすることに成功しました。
参照:https://www.hanamatsu.co.jp/
CAVIN
CAVINは、生産者と花屋が直接取引できるプラットフォームです。花業界を変える事業であると話題をよび、さまざまなメディアでも取り上げられました。
- スマホで花の仕入れが自由できる
- 双方のやり取りによって生産者はニーズに合った花を生産できる
- 小売店は欲しい花を欲しい数量仕入れられる
市場を介さずにダイレクトに取引することで、ムダを生まない生産や仕入れをサポートしているのです。最新技術を取り入れたことで、花業界の働きやすさ向上にも貢献しているといえるでしょう。
AUCENT
生産者と花屋の未来を広げることを目指して、インターネット花市場「banet」を展開しています。インターネットを通じてセリに参加することで、完全リモートでの仕入れを可能にしました。
独自の情報流通システムを活用することで、生産者にとっては市場が日本全国に拡大され、安定した販売ができるようになったのです。
また販売者は仕入れの手間や労力がカットでき、希望の花を希望数だけ仕入れられるようになりました。
参照:https://www.aucnet.co.jp/flower/
LlFULL
LIFULLは、花のサブスクリプション「LIFULL FLOWER」を提供しています。花農家と消費者をつなぐ独自の物流体制をつくることで、構流通ロスや規格外廃棄の削減に成功しました。
パッケージにもこだわっています。そのまま飾れる状態で届くため、花瓶がなくても楽しめます。さらに栄養豊富なエコゼリー入りで、水替えが不要。消費者も手軽に花のある豊かな生活を送れるのです。
花業界に携わる人と消費者両方の心を豊かにする事業といえるでしょう。
参照:https://lifull.com/news/11163/
ground
フラワーサロン「GROUND」は、フラワーギフトや空間デザインなどの事業を展開しています。
フラワーロスが30〜40%といわれる現在。開業から10年以上経つにもかかわらず、フラワーロスは0というのは驚くべき数字といえるでしょう。「お花も自分の家族のように大切にしたい」という思いが実を結んだといえます。
おわりに
今回、花業界に携わる企業も現状を受け止め、最新技術やデザイン力を駆使することで、花の廃棄量に取り組んでいることがわかりました。
フラワーロスの解決には、仕入れの工夫やアップサイクルなど、ムダにしない努力が欠かせません。その企業努力の先に、循環型経済の実現が待っているのではないでしょうか。
日常を彩ってくれたり、特別な日を華やかにしてくれたりする花。人の心を豊かにしてくれる存在だからこそ、花の命をムダにしないことが大切です。