ファストファッションとSDGs H&Mが取り組むSDGsとは

「ファストファッションが環境に悪い」と一度聞いたことある方も多いのではないでしょうか。

たしかにこれまでの大量生産や低価格実現が原因で、多くの生物や労働者、環境が犠牲になりました。

しかし最近では、持続可能な社会の実現に向けて循環性や持続可能性を重視した生産に努めるファッションブランドが増えています。

今回は世界的に有名なブランドの一つH&Mが取り組むSDGsについて解説します。安くておしゃれなイメージが強いですが、実はエコな一面も持っているのです。最後まで読めば、イメージがガラリと変わるかもしれません。

ファストファッションは環境に悪い?

これまでのファストファッションは、環境負荷が大きいと懸念されていました。流行りのファッションをお手頃価格で提供できるメリットがある一方で、大量生産・大量生産・大量廃棄をすることで環境への負担が大きいというデメリットもあるからです。

そもそもファストファッションとは、はやくて安いファッションブランドのことを意味します。服のファストフード店ともいえるでしょう。トレンドのデザインを取り入れた衣料品をすばやく大量生産し、短期間に売り切るのが特徴です。

ファストファッションが普及した背景には「流行の服を安く手に入れたい」という消費者のニーズが大きく関わっています。国内においても衣服一枚あたりの値段は年々下がっている一方で、供給数は1990年と比べるとほぼ2倍に増加。

国民一人あたりで考えると、

  • 捨てる枚数よりも購入枚数の方が多い
  • 1年間一度も着られていない服が25着もある

といわれています。

さらに、ごみに出される衣料品の年間総量は508,000t。そのうちの48万tは焼却後に埋め立てられているのです。これらの数値を大型トラックで例えると、一日130台分を焼却し埋め立てられています。衣料品の使用期間の短期化によって、大量廃棄が問題になっているのです。

一枚の服を作るのにも相当な環境負荷がかかっています。

  • 二酸化炭素の排出量:約25.5kg
  • 水の消費量:約2,300ℓ
  • 端材などの排出量:約45,000t(約1.8億着分)

このように、服の製造には原料の栽培から出荷まで大量の資源が消費され、多くの二酸化炭素や廃棄物が排出されているのです。これを世界で考えると、相当な環境負荷があることは容易に想像できるのではないでしょうか。

これからはファッションの生産や消費、廃棄を見直すことが欠かせません。つまり、これまでのファストファッションとしてのあり方を大きく変えていくことがSDGsへの貢献につながるといえるでしょう。

H&MのSDGs

実は、スウェーデン発祥のファストファッション「H&M」は積極的にSDGsへの貢献に取り組んでいます。その実績は世界的にも高く評価されているのです。
以下に未来を考えた生産を行う事例をまとめました。

H&MのSDGs①「古着回収」

2013年から古着回収サービスを世界中で導入。2020年には、18 ,800tの不要な衣類や布地を回収しました。これはTシャツ94,000,000枚分に相当するそうです。

世界最大のプログラムとして各国の店舗に回収ボックスを設置。ブランドや状態を問わず不要な衣料品や布地を集めています。

回収されたものは状態に応じて再利用されます。

  • 着用できる衣類は古着として販売
  • 着用できないものはリメイクや清掃用品などに再利用
  • その他すべては、織物繊維に細かく切られて、断熱材などに使用

さらに、消費者にとってうれしいのが特別クーポン。回収に協力した場合、次回の買い物で使用できるデジタルクーポンがもらえるのです。

このプログラムはごみの排出を減らすとともに、資源の節約に大きく貢献しています。

H&MのSDGs②「オーガニックコットン」

H&Mは、コットンの調達にもこだわっています。実は世界最大のオーガニックコットンユーザーなのです。

コットンといえば、天然素材のため環境にやさしいイメージをお持ちの方が多いのではないでしょうか。しかし、現状はちがっています。栽培において大量の水や農薬などを使用し、畑だけではなく生産者にまで悪影響を及ぼしているのです。

コットンが抱える問題を少しでも改善するために、オーガニックコットンの調達に努めています。オーガニックコットンとは、農薬や化学肥料を使わずに栽培されたもの。一般的なコットンよりもエネルギーや水の使用量が少ないといわれています。

できるだけ自然の力で栽培することで、

  • 土壌が改善
  • 生物多様性の向上
  • 二酸化炭素の排出量の減少
  • 生産者の健康の向上

などが期待できます。

このようにオーガニックコットンの調達を通して、環境や労働者の命を守っているのです。

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H&MのSDGs③「最新のエコ素材」

H&Mは最新技術から生まれたエコな素材を使った商品を開発しています。これまでに

  • ブドウの皮や茎を原料としたヴィーガンレザー
  • ジュースの加工で生じる皮を原料としたオレンジファイバー
  • 漁業用の網や布からできたリサイクルナイロン
  • 食用ごみからできた繊維

など、当たり前のように捨てられていたごみを衣料品の素材へ生まれ変わらせました。

実際に、

  • フェイクファーコート
  • トレンチコート
  • ワンピース
  • パンツ
  • ビスチェ

など、価値ある商品として販売されています。

このような革新的な取組みは、ごみの削減だけではなく、新たな市場拡大にも貢献しています。常識を破るアイディアが今のアパレル業界に求められているのではないでしょうか。

H&MのSDGs④「プラスチック削減」

H&Mは、包装やパッケージの見直しも実施。20025年までに「自社内で発生する包装・パッケージ廃棄物を100%リユースもしくはリサイクルする」という目標を掲げています。

包装の素材を、リユースやリサイクルが可能なものにしたり、土へ還るものへ切り替えたりしながら目標達成に努めているのです。具体的な取組みとしては

  • 2018年にはショッピングバッグの紙製化と有料化を開始
  • 2021年からはオンラインストアの包装やパッケージをプラスチック製から紙製へと順次切り替え

その結果、2020年度は使用量が59%削減に成功しました。

プラスチック削減は海洋プラスチックを減らすことにつながるため、海の豊かさを守ることに貢献できるのです。

おわりに

これまでのファストファッションは大量生産、大量消費、大量廃棄が当たり前。生産から廃棄の過程において環境へ大きな負荷を与え続けていました。

H&Mは、このような現実を素直に受け止め、循環型ファッションへ生まれ変わろうとしています。

  • 不要品を捨てない仕組みを構築する
  • 環境や労働者を守る原料を調達する
  • 環境負荷の少ない生産へ改善する
  • 革新的な素材を使った商品を開発する
  • プラスチック削減に努める

このように自社でできるプログラムを考え、世界中の店舗で取り組んでいます。より良い未来を作るためには過去の過ちを認め、新たなアイディアで問題を解決する努力が必要なのではないでしょうか。

そして、私たち消費者も、衣料品の買い方や管理、処分方法を見直すことが、SDGsへの貢献につながるのです。

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