SDGsの観点から注目される”羽毛を使わない”ダウンジャケット。

そもそもダウンやコートを買う時、どういった基準で選んでいますか?消費者である私達の多くは、価格やブランド名で選択することが多く、素材に用いられる羽毛の採取方法まで考える機会はそう多くありません。

本記事をきっかけに、ファッションという身近な消費行動からSDGsを考えていきましょう。

ダウン1着=約30羽分の羽毛が必要

防寒性と保温性を兼ねた、秋冬に欠かせないダウンジャケット。ダウン=商品名というイメージが強いですが、水鳥の体表に生えるボール状の胸毛を意味します。
主に水鳥はグースとあひるの2種に大別され、体が大きいグースの方が吸放湿性や保温性、軽量性に優れた上質な羽毛を採取できると言われます。

またダウンは、鶏などの陸鳥には存在しない特殊な羽毛です。緯度の高い地域では、水鳥が厳しい冬の寒さを防ぐ役割を果たします。このダウンは、水鳥1羽からわずか約5〜10gしかとれない希少素材。1着分のダウンを作るために、30羽相当の羽毛が必要とされます。

現在、羽毛価格は高止まり状態

世界初のダウンジャケットが誕生して約100年。2008年のリーマン・ショック以降、価格の暴落と高騰を繰り返しながら、生産量は減少、逆にコートや布団など羽毛製品の需要は伸びる一方です。

価格高騰の問題に加えて、従来のダウンジャケット生産は2つの深刻な問題をはらんでいます。1つ目は「多数の水鳥を犠牲にする羽毛の収穫方法」、2つ目は「不要になった羽毛製品の焼却問題」です。

羽毛の収穫方法

まずは1点目の羽毛の収穫方法についてです。羽毛の収穫方法には数通り存在します。

  1. 屠殺(とさつ)した水鳥の羽をむしるハンドピック
  2. 屠殺した水鳥を機械にかけるマシーンピック
  3. 自然に生え変わる羽毛を収穫したハーベスティング

上記で主流なのが、②の機械を使った収穫方法です。

動物福祉に関する欧州協定(PDF)により、生きている動物からのライブピッキングは原則禁止されています。しかし、より上質な羽毛を採取するためにライブピッキングという、いわゆる生きたまま羽毛をむしる非人道的な採取方法も悲しいことに実存します。

こうした課題に直面し、RDS(レスポンシブル・ダウン・スタンダード)認証に代表される国際基準を満たす、倫理的な原料調達でつくられた羽毛製品も登場しています。

一方で、世界のトレンドはビーガンジャケットゼロアニマルを謳うサスティナブルなアウターに向かっています。化粧品や食品など他業界と同じく、ファッション業界にもおいても非動物由来のエコな代替ダウンへのニーズへの高まりが予測されます。

羽毛製品の焼却問題

2点目が、不要となった羽毛製品のゴミ化問題。焼却時にCO2を排出することから、環境負担の要因となっています。

ご存知の通り、二酸化炭素は地球温暖化に与える影響が大きな温室効果ガスの一つ。環境省によると、日本人1人が捨てる洋服は年間平均12枚。そのうち資源回収される割合は7%に留まり、約68%はゴミとして廃棄され焼却時にCO2排出に加担しています。

役目を全うした羽毛のリサイクルやリユースを促進し、ゴミや新たな羽毛の需要を減らす環境負荷を発生させない仕組みづくりが今後ますます大切です。

日本生まれの”脱羽毛”ダウンジャケットとは?

こうした環境保全やエシカルファッションに対する消費者ニーズが高まる中、環境にも人にも優しい日本発の”アニマルフリー”ダウンとして誕生したのが『kapok-knot(カポックノット)』。


画像引用元:https://kapok-knot.com/

本ブランドはファッション業界の大量生産・大量廃棄という慣習に疑問を感じた、老舗アパレル企業の4代目・深井喜翔氏が立ち上げたサスティナブルブランド。
「Farm to Fashion(農園からファッションを)」をコンセプトに、原料調達から消費者の手元に届くまで独自のサプライチェーンを実現。環境や生産者など製品に関わるすべての人に寄り添うものづくりを目指しています。

まだまだ日本で聞き慣れないカポック。「カポックっていったい何?」という方も多いでしょう。

カポックは「木に実るダウン」と呼ばれる、主に東南アジアで収穫されるコットンのこと。別名シェフレラやインドワタノキで流通している熱帯〜亜熱帯原産の植物です。日本でも比較的育てやすい観葉植物として、近年人気があります。

このカポックを代替素材に用いたカポックコートは、「薄い、軽い、温かい」と三拍子揃う吸湿発熱に優れた特徴を持ちます。
コットンの約1/8と軽量性も卓越しており、従来型ダウンジャケットの「着膨れして重い」といった弱点も克服。欧米人より華奢で小柄な日本人のライフスタイルに合うアウターとして、環境意識の高い人から支持を得ています。

※エシカルという言葉の意味については、以下の関連記事をご参照ください。

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アニマルフリーダウンとSDGsの関連性

脱羽毛を掲げるカポックノットの取り組みを、SDGsの観点でとらえると目標8、目標12、目標13、目標17との関連性が見えてきます。

【目標12】つくる責任 つかう責任

カポックの木1本から収穫できるダウン量は年間30着分相当。カポックコート1着が購入されると、約30羽の水鳥の命が救われます。責任ある持続可能な生産や、消費行動を意識することが身近なSDGsの第1歩です。

【目標13】気候変動に具体的な対策を

カポックコート1着分で、1年間に排出されるCO2約400g分(=2Lペットボトル約1500本分)の削減が実現できます。原料調達から製造段階に至るまで、環境負荷に配慮したサスティナブルな商品を選ぶ人が増える分だけ、クリーンな環境を次世代に託しやすくなります。

【目標8】働きがいも経済成長も、【目標17】パートナーシップで目標を達成しよう


画像引用元:https://kapok-knot.com/pages/story

自社のサプライチェーンに携わるインドネシア農園や開発、中国の縫製工場などパートナーが豊かな生活を得られるよう、公平な立場で自立支援を行っています。

売上利益の一部は寄付されるため、地球環境の再生にも貢献。優れたビジネス力とアイデアで、グローバルパートナシップを活性化しています。

ダウン1枚で地球の未来はかわる

ダウンジャケットいう身近なアイテムを通して、SDGsとのつながりや社会・環境への影響を紹介しました。気候変動や持続可能な成長と言われてもピンとこない方も、少しだけSDGsが身近に感じられたのではないでしょうか。

私たち一人ひとりの行動の積み重ねで、地球の未来は変わります。価格やブランドという選択軸だけでなく、環境負荷やサスティナブルなどの評価軸を持つことが、本当に豊かな未来を創るきっかけになるかもしれません。

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