2024年にインドで総選挙が行われ、ナレンドラ・モディ首相(73)の就任式が、首都のニューデリーで6月9日に行われました。
連続3期目となる長期政権のスタートです。

モディ氏は壮大な式典の中で「憲法と法に従い、あらゆる人に対し、ひいきも悪意もなく、正しい行いをする」と誓いました。

貧しい幼少期を過ごし、自身も紅茶を売って家計を助けていたモディ首相。
彼が首相にまで上り詰め、三期にわたる長期政権を実現させたことには、首相就任以前からの氏の功績があったためです。

ここでは、インドの経済発展に大きな影響を与えたモディ首相の功績について解説していきます。

州首相時代

紅茶を売り家計を助けていた若き日のモディ氏。
彼は若くしてヒンドゥー至上主義団体である「RSS(民族奉仕団)」に入りました。

20代前半でRSSの活動に専従するようになったモディ氏は、1980年代に本格的に政治の道に足を踏み入れ、今の政権与党であるインド人民党に入党したのです。

モディ氏は戦略家として知られると同時に、卓越したコミュニケーション能力を持つ人物として党内でも光彩を放っていました。
その能力を活かし、2001年には出身地であるグジャラート州の州首相に就任します。

再任期間中には、電力改善や港湾・道路などのインフラ整備を進めた以外にも、週主催の大規模な投資イベントを開くなどして国内外の企業の誘致を積極的に行いました。

グジャラーと州は、当時「インドで唯一 停電のない州」と呼ばれるまでの高い経済成長を達成しました。

これはSDGsの目標11「住み続けられる街づくりを」を達成したといえるでしょう。

首相時代

首相時代のモディ氏は、その政策に印象的なスローガン掲げ、次々と実現してきました。
ここでは、その政策について解説していきます。

メイク・イン・インディア

メイク・イン・インディアは、モディ首相が就任した直後である2014年に掲げた、製造業振興のスローガンです。

投資環境を整備することで、直接投資の誘致を促進し、GDPに占める製造業の割合を15%から25%にまで引き上げることが目標です。

これが実現されれば、新たな雇用が生まれるとともに貿易赤字の縮小と輸出の拡大が見込めます。
この方針のもと、インド政府は国内製造業保護と高付加価値の部品の国産化を推進します。

また、この「メイク・イン・インディア」には、日本も深いつながりがあります。

新幹線方式による高速鉄道府プロジェクトがそれにあたります。
ムンバイからアーメダバード間を走る高速鉄道車両は、東北新幹線の「E15系」をベースにし、高温対策など現地仕様を施したものです。

この計画は故・安部晋三首相とモディ首相が会談し、実現しました。

このような政策により、SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」を実現することができるでしょう。

クリーン・インディア

クリーン・インディアは、人類史上最大規模のトイレ設置作戦です。

この政策は、200億ドル規模の資金を投入し、5年で1億1100万か所にトイレを設置することが目標です。

この政策により数億人の国民の健康と安全を守り尊厳を高めるだけではなく、コンクリート建材やバスルーム・衛生陶器売り上げ向上にも役立ちました。

この政策でSDGsの目標6「安全な水とトイレを世界中に」に加えて、メイク・イン・インディアと同様に、

SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」の実現も可能になるものと予想されます。

スキル・インディア

インドは非常に人口が多く、その数はおよそ14.2億人となっています。

このようなインドに住む人たちが職業能力(スキル)を身に付けることで、労働力増加率が人口増加率より高くなり、経済成長が見込めます。

それだけではなく、スキルを身に付けることで仕事に就けたり、より賃金の高い仕事に就いたりすることができるようになります。

これは、SDGsの目標1「貧困をなくそう」、目標4「質の高い教育をみんなに」、目標8「働きがいも経済成長も」の3つの目標達成に役立ちます。

モディ首相3期目のエネルギー政策とは

2024年の選挙で勝利し、長期政権を維持することになったモディ氏。
彼は、経済成長とエネルギーの自給率向上に大きな力を注いでいます。

インドでは、もともと再生可能エネルギーの導入が積極的に推進されていました。
日照条件や風況の関係から、インドは再生可能エネルギー供給の潜在力に非常に恵まれていると言えます。

そのため、供給される再生可能エネルギーの商業的競争力が非常に高くなっています。
この再生可能エネルギーを活用することで、石油や石炭など今までインドが輸入していた量を削減し、貿易赤字の削減やエネルギー自給率を向上させることができます。

このような政策を推進することで、インドに高い利益をもたらすと同時に二酸化炭素排出量の削減が期待でき、地球温暖化防止に大きな効果をもたらすでしょう。

これは、インドの経済成長と環境保全を両立するために非常に大きな役割を果たすと考えられます。
この政策が実現されると、SDGsの目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」の実現に大きく貢献することができます。

今度のインドの課題とは

経済成長を続けているインドですが、まだまだ課題は山積みであると言えます。

その課題を一言でいうと、「格差」となります。

貧困率は低下したとは言え、農村部と都市部では大きな開きがあり、農村部では非常に高い状態が続いています。

経済的な格差以外にも、保険医療、ジェンダー、世代、情報、民族、環境などさまざまな要因から格差が生まれる構造がいまだに残っています。

このようなさまざまな格差を是正し、すべてのインド国民が平和で安定した生活ができるようになって初めて、モディ氏の政策が成功したということができるでしょう。

モディ政権のこれから

モディ政権が三期目に入り、長期政権となったことでインド国内がさらに改革され、特に産業と再生可能エネルギーの分野で大きく成長することが予想されます。
それによって、達成が近付くSDGsの目標も多くあるでしょう。

しかし、SDGsの目標には「だれひとり置き去りにしない」という前提があります。
インドは格差が大きい国なので、いまだに経済発展から取り残された人々も少なくないでしょう。

モディ政権の政策の恩恵を受け、すべてのインド国民が安定した安全な生活を享受できるようになることを願って止みません。

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